『R100』寺島しのぶインタビュー

演技派女優が初のタッグとなった松本人志監督の印象を語る

#寺島しのぶ

出産後、最初の仕事としてとても刺激的でいいなと思った

都内有名家具店に勤める片山貴文(大森南朋)は、ちょっとした気の迷いにより、謎の秘密クラブ「ボンデージ」に入会してしまう。片山の日常生活のなかに突如現れ、これまで味わったことのない世界へ誘う個性的な美女たち。日常生活のなかでいつ現れるか分からない緊張感は、いつしか片山の心に恍惚とした高揚感を感じさせ始めていた。クラブとの契約は1年間。決して途中で退会することは許されないが、美女たちのプレイは次第にエスカレートしていくように……。

「極めて独創的な映画作家」と呼ばれ、世界的にも注目を集めている松本人志の監督第4作『R100』がいよいよ完成した。かねてより松本が哲学的なこだわりを見せてきた「SとM」をモチーフに、予測不可能な物語がジェットコースターのように展開される。

本作では、大地真央、寺島しのぶ、片桐はいり、冨永愛、佐藤江梨子、渡辺直美といった豪華女優陣によるセクシーで謎めいた女王様が次々と登場するのが特色だ。そこで今回は、寺島しのぶに、初のタッグとなった松本演出の印象、そして産後初仕事となった本作について話を聞いた。

──この映画のオファーが来たときはどう思いましたか?

寺島:最初に松本さんからわたしの名前が出たと聞いたときには、本当かなと驚いたんですよ。松本さんとは何の接点もなかったですから。タイミング的には出産後4ヵ月目くらいだったんですが、出産後、最初の仕事としてはとても刺激的でいいなと思って、お引き受けすることにしました。

──台本を読んでみての感想は?

寺島:もちろん台本は読んだんですが、これ自体は完成形じゃないんだろうなと思っていました。撮影現場では、そこに書かれている以上の要素が付け加えられるんだろうなと思いましたし、これはぜひとも撮影現場に行きたいなと思いました。

産後4ヵ月でものすごい巨乳、ボンデージを着るなら今しかないと思った
寺島しのぶ

──寺島さんの仕事の選び方は非常にユニークだと思います。もしかしたら、ほかの女優さんなら選ばないかもしれないような仕事でも果敢にチャレンジしていって、そしてそれをものにしていったというようなイメージがあります。

寺島:それはうれしいですね。私自身もそういう気持ちがあります。なるべく人がやらないことにチャレンジしたいんです。

──そういう意味で、今回の『R100』も、非常にチャレンジングな企画だと思うのですが。

寺島:わたしの動機は毎回不純なところがあって(笑)。今回なら、松本さんに会ってみて、演出を受けてみたいといったことが大きかったんですよ。それからコンディション的なこともありました。当時、産後4ヵ月だったんですが、わたしはものすごい巨乳だったんですよ。ボンデージを着るなら今しかないだろうと思ったんです。いい思い出になりますし、ものすごくいいタイミングだと思いました。

──確かに寺島さんのボンテージ姿はセクシーで、かつ迫力がありました。

寺島:やはり女王様なんで、迫力がないと困りますからね。

寺島しのぶ

──寺島さんが演じた女王様は、大森さんを暴力的に追い込む役なので、そちらを演じるのは難しかったのではないかと思うのですが。

寺島:そうですね。松本さんからは「もっとキレてください」「もっとイッちゃってください」というようなことをずっと言われ続けていました。でもわたしは「もっとイッちゃう」の度合いが分からなくて。動きが止まってしまったんですけど、そのときには、松本さん自らが動きをやってくださったんですよ。でも、それは怖いというよりも、ものすごく面白かった。「僕がやると(間)寛平兄さんみたいになるんですけど、寺島さんはホラーでやってください」と言われましたけどね。

──寺島さんが出演する個所は、ある種、大森さんを責めるバトルのようなシーンでしたが。松本さんから受けた演出はどのようなものだったのでしょうか?

寺島:あのときは、ずっと便器を叩いてくれと言われたんです。人を叩くのは当たり前だけど、なぜか便器を連打しているのが面白いんじゃないかというのが松本さんの考えで。
 とにかく「もっとイッちゃってください」と言われていました。でも、そんなことを松本さんの前でなかなかできないですよ。特に松本さんとは衣装合わせのときに1回会ったくらいで、ほぼはじめましてに近い感じでしたから。それであのテンションにならなきゃいけなかったんで、お互いにちょっともぞもぞしてしまったんですよ。そんな状態のなかで、とにかく本番に行きましょうか、ということになりました。

松本監督は結構、笑う方。ずっとクスクス笑ってました
『R100』
(C) 吉本興業株式会社

──リハーサルや練習は?

寺島:やったんですが、結局、リハーサルだけでは決まらなかったですね。どこまでやったらいいのか私自身も松本さんも定かなものがなくて、お互いに手探りで。そのまま本番に突入したという感じでした。でも本番と言われれば、やるしかないですから。幸い、わたしの演技を松本さんは気に入ってくれたようなので良かったですけどね。

──確かに映画に出ていた演技はとても迫力でした。あれなら松本さんも気に入るだろうなと思いました。女王さまのビジュアルはどうでしたか?

寺島:女王様の役は初めてでしたが、楽しかったですよ。衣装合わせの時はものすごく恥ずかしかったんですけど、現場に入って衣装を着ると気分も上がりますし、ムチを持つとものすごく楽しくて。映画に出てくる武器も全部松本さんが決めていたんですよ。

──まるで棚に飾られたフィギュアのように女王様が現われる冒頭のメリーゴーランドのシーンは非常に印象的でした。あれはああいうセットが作られたのでしょうか?
寺島しのぶ

寺島:そうなんです。冒頭に出てくるメリーゴーランドはフランスから船で輸送したらしいですよ。お金がかかっていてものすごいんです。私の撮影初日があのシーンだったんで、セットを見たときはビックリしました。気分があがりましたね。あのメリーゴーランドはすごかったです。あれが全部、松本さんの頭のなかにあるわけですからね。本当にすごい人だと思います。

──現場では、松本さんというのはどのような監督なのでしょうか?

寺島:演技指導をするというよりは、これはアリか、ナシかということで判断をしている方だなと思いました。今回、現場をご一緒してみて、結構笑う方なんだなと思いました。現場に入る前は、ムスッとしていて、全く笑わない人だったらどうしようと思ったんですけど、松本さんはずっとクスクス笑っていました。松本さんにとっては、頭のなかにあるものを映像化しているわけじゃないですか。それってものすごい快感なことなんだろうなと思いました。

(text&photo=壬生智裕 ヘアメイク=Katsuhide Arai(e.a.t) スタイリスト=YURIKO E)

寺島しのぶ
寺島しのぶ
てらじま・しのぶ

1972年12月28日生まれ、京都市出身。舞台、映画、ドラマで活躍。『赤目四十八瀧心中未遂』(03年)、『ヴァイブレータ』(03年)で第27回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ国内外で多数の映画賞を受賞。『キャタピラー』(10年)で、日本人として35年ぶりにベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞。その他の映画主演作に『やわらかい生活』(06年)、『愛の流刑地』(07年)などがあり、『ぼくのおじさん』(16年)、『幼な子われらに生まれ』(17年)などでも活躍。2018年は「秘密の花園」、「ヘッダ・ガブラー」と舞台の主演が続き、映画は『のみとり侍』が5月18日より公開予定。

寺島しのぶ
R100
2013年10月5日より新宿バルト9ほかにて全国公開
監督・脚本]松本人志
[出演]大森南朋、大地真央、寺島しのぶ、片桐はいり、冨永愛、佐藤江梨子、渡辺直美、前田吟、YOU、西本晴紀、松本人志、松尾スズキ、渡部篤郎
[DATA]ワーナー・ブラザース

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