『おとなの事情』パオロ・ジェノヴェーゼ監督インタビュー

スマホの中の秘密を暴いて大絶賛!の人気監督

#パオロ・ジェノヴェーゼ

携帯を見て分かれた知人のカップルからインスピレーションを得た

親しい人の携帯電話にどんな“秘密”が隠されているのか気になることはないだろうか。夫婦や恋人同士だったら、なおさら。そんな携帯を巡る悲喜劇を描いた、一癖も二癖もあるコメディ『おとなの事情』が、3月18日から公開される。

舞台となるのはイタリア、幼なじみ同士がパートナーと共に集まったディナーの席で、ひょんなことから携帯を使って「信頼度確認ゲーム」をすることに。「秘密なんてない」と強がる彼らだったが、浮気に豊胸手術、密かな性癖などが次々に明らかになり、友情と愛情に亀裂が入っていく……。

イタリアきってのヒットメーカー、パオロ・ジェノヴェーゼ監督に本作について語ってもらった。

──携帯電話に翻弄される人間の話を映画化しようと思ったきっかけは何ですか?

『おとなの事情』の撮影現場にて。中央がパオロ・ジェノヴェーゼ監督

監督:知り合いのカップルに起こったことがインスピレーションになっています。男性が事故にあって入院 して、女性が病院に向かったとき、彼の携帯を渡されたのですが、そこで色んなテキストメッセージを見たらしくて、彼が退院したらすぐに別れたんです。
 私がこの映画で何を語りたかったかというと、それぞれの人が持つ3つの生活(パブリック・プライベート・秘密)です。それを何かの媒体として描きたかったのです。今、スマートフォンという物が私たちの生活を変えてしまっている、一つのブラックボックスになっているわけですけれども、そういった物を通じて私たちの秘密の生活を語るというのが面白いのではないかと思ったんです。

──3組の夫婦と1人の男という設定とキャスティングはどのように決めていったのでしょうか?

監督:イタリア人同士の友情において、知り合った期間が重要だと考えられています。大人でもよく小学校の友人と一緒に時間を過ごしたりします。リッチになった人もいれば、貧乏に苦しんでいる人もいる。そんな風に色んな人物を登場させたかったので多様性を重視しました。ゲイもいれば、結婚して子どもがいるカップルもいる。色々触れたかっ たテーマに沿って、キャラクターを設定しました。
 本当はこれは3組のカップルと1人の男というよりは、4組のカップルの話なのですが、そのなかの1人が、理由があって不在という状況になっています。どうして4組かというのが、さまざまな多面性を描くために最低限必要なのは4組だと思ったからです。今回このキャスティングは私が監督として決めさせてもらいました。

最近の秘密は、携帯というブラックボックスの中に集約されている
パオロ・ジェノヴェーゼ監督

──様々な関係が揺れ動き、エンディングで観客は衝撃を受けます。この展開に監督が込めたメッセージは何ですか?

監督:最後、登場人物たちはそれぞれ自分の秘密を抱えながら友人の家から帰っていきます。お互いに自分のパートナーのことはよく知っているつもりで、そのまま人生が落ち着いていくのだけれども、実は相手のことをあまり分かっていない、相手にも実は秘密があるのだということを、エンディングで伝えています。

──会話の中に今のイタリア社会を反映しているようなセリフがでてきますが、これは監督自身のイタリア 社会批判ととってもいいのでしょうか?

監督:必ずしもそうではないし、イタリア社会を批判しようと思ったわけではありません。ただ、そういう内容を会話に織り込むことによってリアリズムを持たせたかったんです。友だちと会話するにあたって、どんなテーマが飛び出すかはわかりませんからね。

──人類がテクノロジーにいかに影響されているかというテーマについては?

監督:僕にとってテクノロジーはあくまで人間を描くための手段です。人間の表と裏という普遍的なテーマを描くために携帯電話を用いただけ。

『おとなの事情』
(C)Medusa Film 2015

 普通なら秘密は僕らの頭の中にあるのに、最近では携帯電話の中に集約されるようになりました。決してテクノロジーに危険を感じているのではありません。ただ、考えてみると、 我々がいま常に持ち歩いているものといえば携帯。携帯が与えてくる情報により解放されるときもあるし、同時に人間同士のつながり方を変える力を持つし、中毒性さえ引き起こす可能性もある。その点ではどの テクノロジーも同様です。

──日本の観客にメッセージをお願いします。

監督:この映画がイタリアで受け入れられたように、「日本でも現実にこういう話があるな」という風に受け入れてもらえれば嬉しく思います。この作品で、スマートフォンという物が私たちの生活を大きく変えている、とくにその中でも人間関係というものを大きく変えていってしまっている、そういった問題を日本の方々にもイタリアの方々と同じように近しく感じてもらい、自分たちのストーリーとして楽しんでいただければ幸いです。

パオロ・ジェノヴェーゼ
パオロ・ジェノヴェーゼ
Paolo Genovese

1966年ローマ生まれ。大学ではビジネスを専攻し、卒業後は広告の世界に入り、300以上のコマーシャルを監督、数々の賞を受賞した。その後、映画製作にも関わり、ルカ・ミニエロと共同監督した短編『Neapolitan Spell』(98年)がロカルノ映画祭で上映されて脚光を浴びる。以後、2人の共同監督作品として短編のリメイクである『Neapolitan Spell』(02年)で長編デビューを飾り、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞を受賞。『La banda dei Babbi Natale』(10年)で初めて単独で監督デビューし、イタリアで大ヒット。翌年の『Immaturi<未熟者たち>』(11年)もヒットを記録し、コメディのヒットメーカーとして高い評価を得る。本作の驚異的なヒットによりスペインでリメイクされることに。他にも多くの国からリメイクのオファーが寄せられている。