木村祐一

多芸多才のキム兄が映画監督に初挑戦! 拝金主義を笑い飛ばす!!

 

『ニセ札』 木村祐一監督 インタビュー

映画『ニセ札』木村祐一 インタビュー

 

常に最悪の事態を想定し、準備している

  • お笑い芸人にして構成作家。俳優としてもひっぱりだこで、料理の腕は玄人はだし。多芸多才の木村祐一が、今度は映画監督に挑戦した! 作ったのは、ニセ札作りに奔走する人々の姿を描いた、風刺の効いた痛快娯楽作『ニセ札』。出演者に「指示が明確で決断も早い」に言わしめた“名監督”に、映画作りについて、そして、危機的時代の乗り切り方について話を聞いた。
     
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  • ──初監督に挑戦した感想は?
  • 木村祐一(以下、木村):俳優は監督の指示に従えばいいので、ある意味、気楽な部分があります。でも、俳優の目から監督を見た場合、抱えているものの量が違いますよね。迫られる決断の数も膨大。撮る前にもものすごく準備しているし、撮ってからも時間がかかる。時間がものすごく必要ですよね。とにかく仕事量を見て、圧倒されることばかりでした。だから今回、「やってみないか」と声をかけてもらった時は、そんなことが自分にできるのかな、と。 やってみて思ったのは、自分で決断していかないと前に進まないということ。でも、ある程度時間をかければできるもんだということが日に日に分かっていったので、思っていたよりはしんどくなかったですね。まあ、(スタッフやキャストなど)環境が良かったというのは大きいでしょうけど(笑)。
     
  • ──キャストの方々が、指示が明確で早いと言っていました。なぜ、そんなに思い切りがいいのでしょうか?
  • 木村:昔から、長く考えているのがイヤなんです。方法が2つあった場合、長く悩んでいると時間がなくなる。でも、早く決断すれば2つとも試せるじゃないですか。自分が俳優をする場合、どんな監督がいいかと考えた時に、決断の早い人がいいと思ったんです。役者をノビノビと気持ちよく演じさせてあげたいし、スタッフも遊ばせてあげたい。「今日も早く終わったら、あれを喰いに行こう!」と思って撮影に来てくれたほうが、1発でOKになったりしますからね(笑)。 でも、闇雲に早ければいいわけではない。色々なことを想定して準備しておき、すんなりと答えが出るというところまで持っていった結果、早くなったんだと思います。
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  • ──悩んでいる時間がもったいないということですが、いつも、スパッと決断するタイプなのでしょうか?
  • 木村:辛いことは、早く終わらせたいでしょ? 悩みを1年引きずるとしたら、短縮して1時間。さらに5分に。そして1分に……という(笑)。もちろん、小さくは(悩みのカケラが)残りますよ。でも、実際に悩む時間は、短ければ短いほうがいいんじゃないかな。
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  • ──映画の中の登場人物たちは、最初は躊躇しながらも、次第にニセ札作りに夢中になっていきますね。
  • 木村:遊びでも何でも、危険スレスレのほうが面白いんですよね(笑)。恐いから、最初は不安を感じるんですけど、やってみたら大したことがないので、のめり込んでいく……。元々、やってみたら楽しいことは分かっているんです。不安しかないのに始めるってことは、多分ないと思う。僕自身も、畑に入ってスライディングの練習をしてみたり、夜中に学校のプールに忍び込んで泳いだりしたことがあります。怒られるかもしれないけど、すごく爽快で気持ちいいんですよ。ジェットコースターみたいなもんですよね。
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  • ──主人公は、小学校教頭の左田かげ子。女性を主人公にしたのはなぜですか?
  • 木村:男性は、家族の経済的な大黒柱ではあるけれど、しっかりした信念を持って皆のことを考え、本当に強いのは女性。男性よりも思いやりや愛情が強く、生活力がある。人々への愛情と希望を持ちつつも、犯罪に手を染めてしまうというあたりは、女性が主人公のほうが納得できるんですよね。男が主人公だと、トップが誰だとか、組織的な部分が強くなってしまうのでイヤだったんです。
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  • ──倍賞美津子さんの主演は、監督の熱烈なオファーで実現したそうですね。いかがでしたか?
  • 木村:現場のモニターなので画質は良くないんですけど、それで見ていてもかわいい方です。母のようでもあり、恋人のようでもあり、娘のようですらある。とても懐の深い方で、毎日のように感心させられました。最初にお会いした時に、「登場人物たちは、ワクワクしながら楽しくニセ札作りをやっていたと思う」って仰ったんです。僕も、暗い描き方はしたくないと思っていたので、目指すところは一緒だな、と。現場もとても楽しかったですね。「グッド・モーニング・エブリバディ! 今日もよろしくね♪」って言いながらつまづいてコケそうになったり(笑)。「ボンジュール!」という日もありましたね。そういう日は、何テイクか必ず(セリフを)お噛みになられてましたよ(笑)。
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  • ──今回は監督ですが、色々なことに挑戦し、いつも堂々として見えますが、不安などはないのでしょうか?
  • 木村:いつも不安だらけですよ(笑)。だから人に対しても仕事に対しても、常に最悪の事態を想定し、準備しているんです。危機管理なんでしょうね。最悪を考えていれば、後はプラスの方向にしか行かないから。よく「緊張しないでしょ」って言われるんですけど、当然、緊張はしますよ。でも、緊張しないように見えるんだったら、緊張するだけ損やな、と(笑)。つまり、緊張していない演技をすればいいのかな、と。
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  • ──その危機管理能力はどうやって身に付けたんですか?
  • 木村:ガキの頃からです。姉と弟がいて、自分だけが捨てられたらどうしようとか、そんなことを考えている子どもでしたから(笑)。
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  • ──映画の中で描かれているのは貧しく混乱した時代ですが、人々は希望を持って前向きに生きています。そのことをふまえ、100年に1度の危機と言われる今を生きる人々に、メッセージをお願いします。
  • 木村:(舞台となる)昭和25年頃というのは、中央では高度経済成長の礎(いしずえ)となるようなことが始まっていて、それが田舎にも届いていた。戦争も終わって光が見え、お金はないけれど夢と希望が溢れ、後は上昇していくしかなかった時代。今は、ある程度の財があるので、守りに入ってしまってますよね。でも、昔は守るものがなかったので、その分、希望に置き換えられたのかもしれません。今は、もうちょっと希望を持ってほしいですよね。選択肢がなくなってきているからこそ、逆に自由にできるんだ!と思っていただければという気がします。それは無理だと言われるかも知れませんが、派遣でクビを切られたら、「新しく起業できる! 雇われの身じゃなくなるんだ!」と思っていただければ……。まあ、実際はいろいろと大変だと思いますが、気持ちだけでもね。学生さんだったら、思い切って親にお金を出させてスネかじって、使い切ってみては? 中高年はお金を持ってるんですから(笑)。
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(09/04/09)

映画『ニセ札』木村祐一
 映画『ニセ札』木村祐一

きむら・ゆういち
1963年生まれ。京都府出身。ホテルマン、染色職人などを経て漫才コンビ「オールディーズ」としてデビュー。バラエティ番組『ダウンタウンのごっつええ感じ』『伊東家の食卓』などで構成作家も務める。『誰も知らない』(04)『ゆれる』(06)『252 生存者あり』(08)『少年メリケンサック』(08)などで映画俳優としても活躍。本作で映画監督デビュー。

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映画『ニセ札』木村祐一

 撮影中の様子。左から青木崇高、木村祐一、倍賞美津子

 

 

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 『ニセ札』
2009年4月11日よりテアトル新宿ほかにて全国順次公開

(C) 2009『ニセ札』製作委員会
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