大麻について議論する前に見ておきたい米英ドキュメンタリー3本

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グラス・イズ・グリーナー
Netflixドキュメンタリー『グラス・イズ・グリーナー:大麻が見たアメリカ』配信中
グラス・イズ・グリーナー
Netflixドキュメンタリー『大麻が救う命の物語』配信中
Amazon Prime Video『大麻 悪魔のハーブ』(字幕版)配信中

俳優の伊勢谷友介容疑者が大麻取締法違反の疑いで9月8日に逮捕された。今回もそうだったが、大麻所持で著名人が逮捕されると、必ずといってよいほど「大麻は医療でも使える」「海外では大麻を合法化している国がある」「大麻よりもむしろタバコやアルコールの方が害悪だ」といったコメントがネットなどで飛び交う。もちろん国が禁止している薬物を推奨するつもりは毛頭ないが、それらのコメントはどういう意味を持つのか、知識として知っておきたいという人もいるかもしれない。大麻をめぐるいくつかのドキュメンタリー作品を見てみると、その裏側が垣間見えて勉強になる。

・俳優業や社会活動についても熱く語っていた伊勢谷友介

先鋭的なドキュメンタリー作品を数多く配信しているNetflixだけに、大麻関連のドキュメンタリー作品も数多い。その中でもヒップホップ音楽のパイオニア的存在であるファブ・5・フレディーの初監督作となる『グラス・イズ・グリーナー:大麻が見たアメリカ』は、大麻の歴史を、黒人音楽の歴史と絡めながらひもといている。本作ではその背景に、政治的な人種差別の歴史があったと訴えかけ、近年注目を集めるBLM(Black Lives Matter)運動に通じる、アメリカの根深い問題が浮かび上がる。

そしてNetflixからもう1本。『大麻が救う命の物語』は、医療用大麻の可能性について紹介するドキュメンタリー。嗜好品である麻薬として厳しく規制される一方で、小児ガンと闘う子どもたちの治療のために投与される医療用としての側面もある大麻。マリファナを吸ってハイになる、といった従来の大麻のイメージと違い、この作品に登場する人たちは、子どもの病気を治療するために奔走する“切実さ”を持った人ばかりだ。医療用大麻を投与し、「子どもの腫瘍が小さくなった!」と喜ぶ親の姿は、この問題が一筋縄ではいかないことを感じさせる。

最後は少し視点を変えて、大麻の問題点についても考えてみたい。英国BBC製作のドキュメンタリー『大麻 悪魔のハーブ』(HuluやAmazonプライムなどで配信中)では、中毒患者を専門にするジョン・マースデン博士とともに、大麻が人間にもたらす影響について科学的に探っていく。そこで垣間見えるのは、依存、被害妄想、記憶障害といった大麻の危険性、それは特に若年層に大きな悪影響を与えるものだという。だが、そうした危険性をはらみながらも、それと同時に、医薬品としては有用であるという、大麻が持つ矛盾した姿がここには映し出される。

日本では「大麻取締法」により大麻の所持は固く禁止されている。それゆえ、ごく普通に暮らしていれば、日常生活でそうした薬物と接することはもちろん、深く考える機会もなかなかないだろう。だが“正しく恐れる”ためにも、知識を得ておくことは悪いことではないと思われる。(文:壬生智裕/映画ライター)