地球が壊れる前に
不都合な真実2
デイ・アフター・トゥモロー

ここ数年、日本の都市部の夏は真夏日・猛暑日が続いている。気象庁のホームページでも「大都市では、気温が長期的に上昇しているとみられ、特に日最低気温の上昇率が大きい。これは地球温暖化に加えて、都市化の影響が現れているものと考えられる」と指摘されている。また、近年は大雨による被害も増えており、「1日に降る雨量が100ミリ以上というような大雨の日数は、長期的に増える傾向にあり、地球温暖化が影響している可能性」(気象庁ホームページより)とも記されている。

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地球温暖化対策は地球規模の課題であり、2015年には、世界の温室効果ガスの排出量を2050年までに実質的にゼロにする目標を設定した「パリ協定」が採択された。しかし、一貫して地球温暖化に懐疑的立場をとり続けたアメリカのトランプ大統領は、オバマ前大統領が採決したパリ協定からの離脱を表明しており、そのリミットは今年の11月4日。アメリカの大統領選挙が行われるのは11月3日なので、トランプ大統領の再選がアメリカの地球温暖化の行方に大きな影響をもたらすと見られている。

そんなトランプに大統領に批判的なのが『タイタニック』などで知られるレオナルド・ディカプリオだ。彼は、ハリウッドスターの中でも熱心な環境保護主義者として知られる。2014年に国連平和大使に任命されたディカプリオが2年間にわたって世界各国を旅し、気候変動が絶滅にひんした生物や生態系などにどんな影響を及ぼすかを肌で感じ、そして識者に話を聞いてまわる姿を描いたドキュメンタリーが『地球が壊れる前に』だ。製作総指揮はマーティン・スコセッシ。映画冒頭、心ないニュース番組のキャスターが「ハリウッドスターに環境問題の何が分かるのか」とやゆする場面があるが、そんな外野の声を振り払うかのように活動に取り組んでいくディカプリオ。さらにアメリカでは「冬には寒い日があるわけだから、温暖化などあるわけない」という論調も根強いようだ。そんな状況の中、ディカプリオは、ハリウッドスターとしてではなく、ひとりのアメリカ人男性として、世界中の人たちの言葉に謙虚に耳を傾けている。そんな彼がクライマックスで繰り広げるスピーチは胸を打つものがある。

ディカプリオの環境保護主義に大きな影響を与えたのが、アメリカ元副大統領で、環境問題活動家のアル・ゴアだ。彼は長年にわたって地球温暖化問題に熱心に取り組んでおり、2006年にはデイビス・グッゲンハイム監督のドキュメンタリー映画『不都合な真実』に出演。同作はアカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞を獲得し、この功績が認められ、アル・ゴアはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)とともにノーベル平和賞にも選ばれた。その『不都合な真実』の続編となるのが『不都合な真実2:放置された地球』である。前作発表時よりも地球温暖化はさらに深刻化。ゴアも変わらず世界各国で講演活動を行っていた。温暖化問題は経済問題に直結しており、経済を優先させれば自然は破壊され、自然を優先させれば経済発展は伸び悩む。アメリカ国内では、地球温暖化に対する懐疑的な声も多い。さらに国外ではこれまで環境を破壊しながら経済発展を果たした先進国に対して、自分たちも経済発展のためには環境破壊もやむなしとして、インドをはじめとした新興国の反発も大きい。そんな状況の中でゴアたちがいかにして活動を推し進めたのか。その姿が描かれる。

地球温暖化現象をパニック映画として描いたのがローランド・エメリッヒ監督の『デイ・アフター・トゥモロー』だ。地球温暖化により、各地で異常気象が発生。それが大気と海流に変動をもたらし、北半球が氷河期に突入する、という物語だ。ハリウッド映画ということで、ここで描かれた異常気象はかなり誇張されたパニック表現となっているが、本作公開時、科学者の中には「科学的にあながちありえない話ではない」と語った者もいたという。地球温暖化が行きつく先の仮説として、観ておくのも悪くない。(文:壬生智裕/映画ライター)

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