アシュトン・カッチャー、アイヴァン・ライトマン監督、ナタリー・ポートマン、ケヴィン・クライン
ジャン=リュック・ゴダール

安楽死を選んだジャン・リュック・ゴダールほか多くの映画人が永遠の眠りに

2020年から世界を覆ったコロナ禍がようやく収束し始めた2022年。明るい兆しが見え始めるなか、映画史に残る傑作や心に残る名作を手がけた監督やスタッフが惜しまれながらこの世を去った。その偉大な功績を紹介しつつ、今年亡くなった映画人たちを偲ぶ。

追悼/海外編 2022年に亡くなった映画俳優を偲ぶ

ピーター・ボグダノヴィッチ
1月6日/享年82歳
オスカー受賞作の『ラスト・ショー』(71)と『ペーパー・ムーン』(73)などで知られるピーター・ボグダノヴィッチは映画評論から監督に転身し、オードリー・ヘプバーン主演の『ニューヨークの恋人たち』(81)やリヴァー・フェニックス主演の『愛と呼ばれるもの』(93)などを手がけた。劇映画『マイ・ファニー・レディ』(14)の後、バスター・キートンを題材にしたドキュメンタリー映画が遺作。

ジャン=ジャック・ベネックス
1月13日/享年75歳
長編デビュー作『ディーバ』(81)でセザール賞新人監督賞ほか4部門を受賞し、代表作『ベティ・ブルー』(86)がアカデミー外国語映画賞にノミネートされた。
1992年にはイヴ・モンタンの遺作となった『IP5/愛を探す旅人たち』を監督した後は、ドキュメンタリーに力を入れるようになり、日本のオタク文化に迫る『おたく Otaku』(93)や病で全身麻痺になった編集者の手記『潜水服は蝶の夢を見る』の制作過程を追った『潜水服と蝶』(97)などを手がけた。2020年には初めて小説を発表するなど活動の幅を広げていたが、白血病のため1月13日にパリの自宅で亡くなった。

[動画]ジャン=ジャック・ベネックス監督追悼上映 予告編

ダグラス・トランブル
2月7日/享年79歳
『オズの魔法使』(39)の特撮スタッフを父に持つトランブルは、自身も特撮スタッフとして『2001年宇宙の旅』(69)や『未知との遭遇』(77)、『スタートレック』(79)などに参加、『ブレードランナー』(82で特撮監督を務めた。近年は『ツリー・オブ・ライフ』(11)で視覚効果コンサルタントを務めた。監督として『サイレント・ランニング』(71)、『ブレイン・ストーム』(81)を手掛けた。

アイヴァン・ライトマン
2月12日/享年75歳
『ゴーストバスターズ』シリーズで知られる、コメディ映画の名匠。ビル・マーレイ主演の『ミートボール』(79)で監督デビューし、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『ツインズ』(88)や『キンダガートン・コップ』(90)などをてがけ、プロデューサーとして『アニマルハウス』(78)や『ベートーベン』シリーズなどを製作。息子のジェイソン・ライトマンも監督として活躍中で、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(21)を手がけている。

[動画]ゴーストバスターズ監督父から息子へ継承!映画『ゴーストバスターズ』特別映像

ヴァンゲリス
5月17日/享年79歳
記憶に残る映画音楽を量産したギリシャの作曲家。1982年に『炎のランナー』で第54回アカデミー賞作曲賞を受賞。『ブレードランナー』(82)や日本映画『南極物語』(83)などで知られ、2000年シドニーオリンピック閉会式や2004年アテネオリンピックのサウンドロゴなどを手がけている。

『ブレードランナー ファイナル・カット』IMAX予告編

ピーター・ブルック
7月2日/享年97歳
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーを基盤に演出家として活動し、ローレンス・オリヴィエのプロデュースで『三文オペラ』(53)で映画監督デビュー。マルグリット・デュラス原作・脚色の『雨のしのび逢い』(60)を監督し、1989年には『マハーバーラタ』の舞台を映像作品化した。

モンティ・ノーマン
7月11日/享年94歳
あの『007/ジェームズ・ボンド』シリーズのテーマ曲の作者。歌手としてキャリアをスタートさせた後、作曲家に転向し、ミュージカルを手がけていた。『007』のプロデューサーだったアルバート・R・ブロッコリがノーマン作曲のミュージカル「Belle or the Ballad of Dr Crippen(原題)」を気に入ったのが、『007』シリーズへの起用のきっかけとなった。

ボブ・ラフェルソン
7月23日/享年89歳
ジャック・ニコルソンとのコラボレーションで、アメリカン・ニューシネマの時代の『ファイブ・イージー・ピーセス』(70)から『郵便配達は2度ベルを鳴らす』(81)、『ブラッド&ワイン』(96)などを手がけた。日本でも人気の高かった60年代アイドル・バンド「ザ・モンキーズ」の企画にも携わった。

ウォルフガング・ペーターゼン
8月12日/享年81歳
ドイツ出身で『U・ボート』(81)のヒットを受けて、ハリウッドに進出。『ネバーエンディング・ストーリー』(84)、『ザ・シークレット・サービス』(93)『アウトブレイク』(95)『トロイ』(04)など多くのヒット作を手がけた。

ウィリアム・クライン
9月10日/享年96歳
写真家としてファッション誌「VOGUE」などで活躍し、ストリートの表情を印象的に捉える写真集「ニューヨーク」「ローマ」「モスクワ」「東京」を制作。ファッションの世界を風刺的に描いた映画『ポリー・マグーお前は誰だ?』(66)やアラン・レネ、ジャン・リュック・ゴダールやアニエス・ヴァルダらも参加したドキュメンタリーのオムニバス『ベトナムから遠く離れて』(67)などを監督。

アラン・タネール
9月11日/享年92歳
スイスに生まれ、英国映画協会に勤めた後に映画監督として活躍。長編映画第1作『どうなってもシャルル』(69)でロカルノ国際映画祭金豹賞を受賞。『ジョナスは2000年に25才になる』(76)、『光年のかなた』(81)、『白い町で』(83)などを監督した。

ジャン=リュック・ゴダール
9月13日/享年91歳
『勝手にしやがれ』(60)、『軽蔑』(63)、『気狂いピエロ』(65)などでフランスのヌーヴェルヴァーグを象徴する監督の1人。2010年にアカデミー名誉賞を受賞し、2014年に『さらば、愛の言葉よ』がカンヌ国際映画祭審査員賞、2018年には『イメージの本』が同映画祭スペシャル・パルムドールを受賞した。スイスの自宅で同国で合法とされている安楽死を選択し、息を引き取った。

ジャン=リュック・ゴダール

ジャン=マリー・ストローブ
11月20日/享年89歳
ダニエル・ユイレ(2006年没)と共に、ストローブ=ユイレというユニット名で共同作業で映画を製作。高等映画学院(IDHEC)進学するためにパリに移り、ユイレと知り合い、ゴダールやエリック・ロメールをはじめとするヌーヴェルヴァーグの映画人たちと知り合う。1958年にアルジェリア戦争への徴兵を忌避してユイレと共にドイツに亡命し、軍事法廷で有罪となって10年以上フランスを離れることになった。その後、ドイツで構想した『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』(68)などを監督。

アルバート・ピュン
11月26日/享年69歳
ハワイ出身で、1980年代からアクション作品を監督。ジャン・クロード・ヴァン・ダム主演の『サイボーグ』(89)やスティーヴン・セガール主演の『沈黙のテロリスト』(01)などを監督。

アンジェロ・バダラメンティ
12月11日/享年85歳
作曲家として、『ブルーベルベット』(86)をはじめTVシリーズの『ツイン・ピークス』(90〜91)や『ワイルド・アット・ハート』(90)をはじめ、デヴィッド・リンチ監督の作品の音楽を担当。2017年のドラマ『ツイン・ピークス The Return』も手がけた。

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