綾瀬はるか「世界の是枝さんだったんだな」 是枝裕和監督『箱の中の羊』カンヌ上映後に囲み取材

#カンヌ国際映画祭#大悟#是枝裕和#桒木里夢#第79回カンヌ国際映画祭#箱の中の羊#綾瀬はるか

(C)Kazuko WAKAYAMA
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大悟と桒木里夢も登壇、現地で感じた熱狂と9分間の喝采を振り返る

映画『箱の中の羊』がフランス時間5月16日に第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門での公式上映を終え、日本用囲み取材が開催。是枝裕和監督をはじめ、主演の綾瀬はるか&大悟(千鳥)、桒木里夢(くわき・りむ)が出席した。

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——最初に、本日公式上映を終わられていかがだったか、感想を大悟さんからお願いします。

大悟:当然初めてだったので、すごくびっくりしたのと、嬉しいというか、こんな経験させていただいて。(上映した)映画館もすごいし、ポップコーン入れるところもない映画館。いい経験させていただきました。(桒木くんに同意を求めて)な?

——ありがとうございます。里夢くんどうですか?

桒木:映画は初めてなのですごくいい体験になりましたし、やっぱり今日僕の誕生日なので…(会場から拍手)。

——何歳になったんですか?

桒木:10歳です。すごく「持ってる」と思います(会場笑い)。

——綾瀬さんいかがでしょうか?

綾瀬:上映中「ここで笑いが起こるんだ」とか、反応が日本の方とは違って、それがすごく新鮮でした。それも含めて一緒に体感できたのがとても面白かったです。

——最後に監督も、お願いします。

監督:周りの人がどういう感じで見ているのかなと思って見ていましたが、かなり最後まで集中して見てくれているのが伝わってきたので、ほっとしたなという。ここにまた本当にみんなで来られたことを喜びたいなと思っています。

・【動画】千鳥・大悟、綾瀬はるかをレッドカーペットでエスコート!/カンヌ国際映画祭『箱の中の羊』レッドカーペット

——大悟さん(の演技)が自然なので、本物の俳優さんのようでした。

大悟:本物の俳優でした。(会場笑い)

——すみません、そうでした。

大悟:今回だけです(笑)。

——綾瀬さんは子どもとの関係はどのように?

綾瀬:そうですね、今回は人間ではなくヒューマノイドの子どもということだったんですけど、最初はその温度感とか、その知能がどこまで理解しているのかというところを探りながらなので、不思議な感じはありましたが、撮影しながら、やっぱりヒューマノイドなのだけれど、一人の人というか個性を持った存在としてお芝居していく感じがあって。そこは役の音々さんに通じるところがあるのかなと。私自身も一緒に変化していく部分があったりしました。

——割と順撮りだったんですか?

綾瀬:割とそうですね。はい。

——日本映画の盛り上がりの年ということもありますが、いつも慣れているカンヌですけれども今回は?

監督:正直言うと、ここは慣れるような場所ではないので、いつも1回目みたいな感じです。

——25年前(第54回)に日本映画が3本コンペに入っていた時も、監督は『DISTANCE』(01年)で(カンヌに)いらっしゃっていたんですよね?

監督:その時、今村昌平監督のポジションだと言われたんです。さすがにそれはちょっと重たいなと思っていて(笑)。でも、今回こうして若い世代が沢山入ってきて、ある視点部門に岨手監督や、監督週間に安藤サクラさん出演の作品が入っていたり、という広がりの方が心躍る感じがしますね。刺激や勉強になります。一時、こういう循環が止まっていた時期が長かったから、この10年ぐらいで若い世代が出てきて、とてもバランスが良くなったんです。以前、韓国で各世代の監督たちが参加している時期がありましたけれども、今日本も同じような状況にあります。これが10年先に繋がって、また次の世代が来られるような環境が作れると良いと思いますので、応援してください。

・【動画】綾瀬はるか、千鳥・大悟、カンヌで9分間のスタンディングオベーションに感激!/カンヌ国際映画祭『箱の中の羊』公式上映

——9分のスタンディングオベーションがありましたけど、手応えはありましたか?

監督:スタンディングオベーションはもちろんありがたいですけれども、途中から僕はもう樹木希林さんの顔が浮かんじゃって…早くああいう時に「とにかく物欲しげに手を振っているのがみっともないから、早く帰りましょう、早く帰りましょう」とずっと言われていたものですから(笑)。

——上映を終えて手応えみたいなものはありましたか?

監督:そうですね、お客さんの背中をずっと見ていましたけれども、2時間集中を切らさずに見てくれたなと。笑ってくれましたし、その辺は良かったな、届いたなという感じはありました。

綾瀬:是枝監督とは『海街ダイアリー』(15年)の時以来2度目なんですけど、こんな感じだったかなと思い返していました。皆さんがどういう風に見て感想を持たれているんだろうというのも、表情を読み取りながらいろんな人を見ていました。

大悟:10分近くなんて拍手をしたこともないし、されたこともないし、本当にスタンディングオベーションを「もうそろそろ…」と止めている人も初めて見ましたし、そんな監督にビックリしました(笑)。もらえるなら、もろうとけばいいのにと(笑)

——手応えみたいなものはどうでした?

大悟:わしのことを何者だと思っているのか分からないですけれども、嬉しそうな顔でこっちを見てくれていたので、良かったなという感じですね。

——レッドカーペットを歩いての感想は? (大悟さんの)歩き方、階段はちょっとぎこちない感じもしました。

大悟:こうやって手を出して歩くのも初めてやし。慣れた感じもどうかなと思いながら、やったつもりでした。ぎこちなかったんならそうかもしれません。

桒木:歩いてみて笑顔しかなかったです。来れてよかったです。

大悟:嬉しいわな。誕生日やし。

——あそこにいた人みんなお誕生日って知っていたんだよ。フランスのアナウンサーの人が「誕生日です。お誕生日おめでとう」って言ってた。

桒木:すごく嬉しかった。

大悟:フランス語で分かった? 嬉しいよね。あんなところ歩けるもんな。

綾瀬:天気も良くて気持ちよかったです。あんまり緊張というよりも、何か私は気持ちがいいなと思っていました。

——大悟さんから手をとられてどうでしたか?

綾瀬:大悟さんがちゃんと律儀にやってくださって、ちょっと面白いなと思いつつ、ありがたかったです。

——監督は、今までの作品というのは、家族というのをテーマにするものが多いと思いますが、その中でもご家族というのは血の繋がりではない。それよりも愛してくれる、大事にしてくれる、思いやってくれる、そういう関係が家族だというふうに(描いていると)感じています。今回も、それが相手が機械かもしれないけれどやはりそういうことなのかなと思いながら見ておりました。それで間違っていませんでしょうか?

監督:それでよろしいでしょうかと言われると、もうそれは受け取った方の解釈で大丈夫です。

——やはり大事にし合うのが家族だと。

監督:あまり自分で今回はファミリードラマだと思って作っていたわけではないので、実は。家族という箱としては使いましたけれども。自分としては人間とヒューマノイドが出てくる話ですが、むしろ人間性ってなんだろうか、最後に残る人間らしさというのは何なんだろう、ということに向かって物語が進んでいくというようなことは考えていました。

——監督はよく映画とAIの問題についてお話をする機会が多いと思いますが、今回ヒューマノイドということもこの物語の中に取り込んで、人間性と機械と、あと自然との共生のことに触れられていると思いましたが、何かそのことに関して一言いただきたいです。

監督:ヒューマノイドというのが人間が生んだ子どもだとして、それが人間を超えて親離れをしていく時に、どういう存在になるのかなと思った時に、多分こちらだと大体人間を支配するディストピアみたいな前提の映画とか物語が多いと思います。むしろもっと人間から遠くに存在して、そうなった時に、もしかするとその在り方としては生に近いのではないかという、森に近いのではないか、そことの親和性みたいなものへ向かっていった時に、そこには人間は入れないので、残された側の、要するに子どもが巣立った後の親が残りの人生をどういうふうに生きていくんだろうなというような、そんなことを重ねあわせながら描いてみました。

——それってやはりお子さんがどんどん大きくなっていくという自分の体験とも重なってくるんでしょうか。

監督:自分の体験というか、この家族を見ながらそういう想像をしました。

——是枝監督が世界の是枝と呼ばれ、このカンヌ映画祭に来られても、「コレ・エダ」という声援が飛び交う大監督ですが、出演なさったお三方にお尋ねしたいのが、お仕事なさってどのようなやり取りがあったのか、印象的な言葉があれば教えていただきたいです。

大悟:すごい監督なのは分かっているんですよ。当然分かっているんですけれども、何て言うのかね、その感じを全然出さないというか。現場でも本当にその感じを出さなくて、多分色々、ここがちょっと違う、撮りなおしたいみたいなことも沢山あったかと思ったんです。でも全然何も言われなかったのは、巻いて帰ろうとしているのか、そんなことはないですけれど。多分、監督が僕に何かちょっと言っちゃうと、僕が勝手に作っちゃうみたいなところまで多分想像して、だったら何も言わない方がまだいいと思ってくれたからじゃないかと。そういうすごい計算のされる本当にすごい人だったんです。

——どんなところで監督はすごいと感じたんですか?

大悟:レッドカーペットで、外国の方がみんなコレ・エダ、コレ・エダって。僕が昨日の街でロケしていましたけれども日本人というだけで「コレ・エダか?」と聞かれ、「おれはコレ・エダではない」と。是枝の映画には出たぞと言っても、何を言っているんだみたいなことは言われましたけど、それぐらい(すごい)。でも映画の撮影中には、何かその雰囲気を僕らには見せない方だなという感じでしたね。

桒木:監督が「セリフ通りじゃなくていいよ」と言ってくれました。

綾瀬:そうですね。現場での監督、本当にこの空気感が穏やかで、その空気感をすごく大事に撮っているのかなと思いました。監督自身もとてもシンプルに研ぎ澄まされていて。

——今回来られて改めて先ほど大悟さんからも話された是枝さんの人気ぶりを感じる場面はありましたか?

綾瀬:もちろん呼びかけとかも声援もそうですし、あとやっぱり上映で見ているお客さんが本当に監督の作品が好きで、すごく期待を込めて、みんなすごい真剣に見てらっしゃるなっていうのが伝わってきて。やっぱり世界の是枝さんだったんだなって思います。

——監督に質問です。今回広島弁や、岡山弁が多かったのですが、方言にするという設定にされた狙いや趣旨はございますか? また綾瀬さんは、地元の言葉で演技されることに感じたことがもしあれば教えてください。

監督:狙いとしては、前半ずっと1枚フィルターがかかったような、感情をあまり表に出さないようなお芝居なので、それがその膜を破って出てきたときに、少し言葉のニュアンスを変えたいなと思って、それで母親とのシーンと大悟さん演じる健介とぶつかるところは方言でいきましょう、というのは最初の脚本から決めていました。その2回を経てだんだん感情が戻ってくるみたいな、そんな狙いでした。

綾瀬:そうですね。監督が今おっしゃっていたように、標準語のときは割と「殻をかぶっている」じゃないけど、どこか過去で止まっているような人が、感情がないようなところから、感情が出たときに話せているのが自分もなじみのある方言なので、何か分かってここ(胸の内)を開けられた感じみたいな。そういう感じがありましたね。

『箱の中の羊』は2026年5月29日より全国公開。