【今日は何の日】マフィアの日に聴きたい『ゴッドファーザー』“愛のテーマ”と“メイン・テーマ”

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『ゴッドファーザー トリロジー 50th アニバーサリー 4K Ultra HD+ブルーレイセット コレクターズ・エディション』
『ゴッドファーザー トリロジー 50th アニバーサリー 4K Ultra HD+ブルーレイセット コレクターズ・エディション』 35,200円(税抜32,000円) 2022年4月27日リリース(発売・販売元/NBCユニバーサル・エンターテイメント)

【映画を聴く&今日は何の日】
3月30日は「マフィアの日」。日本ではあまり聞かない記念日だが、1282年3月30日にフランス統治下のシチリア島で起こった「シチリアの晩祷」という事件をきっかけに、イタリア系島民が暴徒化。その際のスローガンが “Morte alla Francia Italia anera(フランス人に死を、これはイタリアの叫び)” で、これを略したものがMafia=マフィアの語源という説があることから制定されたのだとか。

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マフィア映画といえば『ゴッドファーザー』、50周年で4Kリマスター版も!

で、マフィアといえば、あるいはシチリアといえば、ムビコレ的に触れないわけにいかないのが『ゴッドファーザー』である。今年は1972年の初作公開から50周年ということで、3部作の4Kリマスターが実現。2月のリバイバル上映に続いて、3月25日に『ゴッドファーザー トリロジー 50thアニバーサリー 4K Ultra HD+ブルーレイセット』(※)が発売されたばかりだ。最初の2作が名作過ぎるがゆえに分が悪かったと言わざるを得ない3作目の『ゴッドファーザー PART III』については、フランシス・フォード・コッポラ監督によって入念な再編集が施され、『ゴッドファーザー<最終章>:マイケル・コルレオーネの最期』というタイトルで圧倒的に見やすい形に生まれ変わっている。

おなじみ「ゴッドファーザー 愛のテーマ」にまつわるあれこれ

『ゴッドファーザー』の映画そのものを見たことがない、もしくは何度かトライしたけど長すぎて挫折した、という人でも「ゴッドファーザー 愛のテーマ(Love Theme from “The Godfather”)」という曲には聴き覚えがあるんじゃないだろうか? “ミラドシラドラシラファソミ~” というメロディは、いまや作品そのものから独立して、マフィアやギャングのテーマ曲、サウンド・ロゴのように扱われているからだ。日本でも『PART I』公開直後に尾崎紀世彦が歌詞を付けてヒットさせているし、暴走族の6連ホーンの定番曲として「警察24時」的なテレビ番組で耳にすることもあった。映画音楽の大家、ニーノ・ロータのペンによるこの楽曲は、もともと彼が『Fortunella』という1958年のコメディ映画のために書いたもので、それが「流用」と見なされて『PART I』公開時のアカデミー作曲賞ノミネートを取り消されている(1974年の『PART II』で受賞)。

ただし、「ゴッドファーザー 愛のテーマ」は『ゴッドファーザー』のメイン・テーマではなく、劇中でもピンポイントでしか流れない。『PART I』ではアル・パチーノ演じるマイケル・コルレオーネが身を隠すために自身のルーツであるシチリア島に赴いた際に、『PART II』ではロバート・デ・ニーロ演じる若き日のヴィトー・コルレオーネが同じくシチリア島に復讐のために“里帰り”した際に流れるのみ。そして『最終章』(『PART III』)では、オペラ歌手になった長男アンソニーがシチリア島で初舞台を踏むことになり、その観覧のためにやって来たマイケルに捧げてこの曲を歌詞付きで弾き語る。歌う前にアンソニーは「この村で生まれた本物のシチリア音楽だ」と説明。見る者は最終作にしてようやくこの「愛のテーマ」がコルレオーネ・ファミリーにとってどんな意味を持つ曲かを知ることになるわけだ。

本当のメイン・テーマ曲こそニーノ・ロータらしい作風

ちなみに『ゴッドファーザー』の正式なメイン・テーマは、3作すべてで随所に使われる「Main Title(The Godfather Waltz)」。「愛のテーマ」に比べるといささか地味に感じるかもしれないが、作風としてはこちらの方がよりニーノ・ロータらしく、サウンドトラックを通して聴けばむしろ「愛のテーマ」こそがロータにとって異色曲であることがよく分かる。フェデリコ・フェリー二監督の『道』(1954年)や『8 1/2』(1963年)、あるいはルネ・クレマン監督の『太陽がいっぱい』(1960年)などで聴ける洒脱なセンスとはかけ離れた、いわばベタなメロディを聴かせる「愛のテーマ」が自身の最も有名な曲になるなんて、当時のロータは想像できただろうか。

とにもかくにも、マフィア映画における音楽の方向性を決定づけた感のある『ゴッドファーザー』と「愛のテーマ」。セルジオ・レオーネ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年)やブライアン・デ・パルマ監督の『アンタッチャブル』(1987年)におけるエンニオ・モリコーネのダイナミズムに溢れた音楽は、その路線のひとつの完成形と言える。せっかくの「マフィアの日」なので(?)、サウンドトラックに耳を傾けながらマフィア映画にどっぷり浸かってみるのも悪くないと思う。(文:伊藤隆剛/音楽&映画ライター)

(※)『ゴッドファーザー トリロジー 50th アニバーサリー 4K Ultra HD+ブルーレイセット』 24,200円(税抜22,000円) 発売中。(発売・販売元/NBCユニバーサル・エンターテイメント)

The Godfather: TM &c 1972 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
The Godfather Part II: Copyright (C) 1974 by Paramount Pictures
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The Godfather Coda: The Death of Michael Corleone: TM &
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