『劇場版ポルノグラファー~プレイバック~』丸木戸マキ インタビュー

BLコミックを実写化衝撃作、原作者を直撃!

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丸木戸マキ

撮影現場を見て、やり過ぎじゃないかな、と心配に…

BLコミック原作として初の連続ドラマ化された「ポルノグラファー」シリーズ。フジテレビが運営する動画配信サービスFODで最速100万回再生を突破し、2018年8月から地上波放送もされて大きな話題となった。今でこそBL作品の映像化は一般化され、昨年は『チェリまほ』の略称で親しまれる『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』が社会現象となったが、18年当時は『ポルノグラファー』が地上波でドラマシリーズとして放送されるというニュースに、BL好きの間ではどよめきが起こった。

しかし、同シリーズは一般視聴者にも受け入れられて大ヒット。過去編となる「インディゴの気分」も2019年2月から実写ドラマ化された。そして、後日談である続編の「續・ポルノグラファー プレイバック」が『劇場版ポルノグラファー~プレイバック~』 として映画化され、2021年2月26日より公開される。

官能小説の「口述代筆」という奇妙な出逢いを経て恋人になった、官能小説家の木島理生と大学生・久住春彦。木島が田舎へ里帰りしてからも、文通で遠距離恋愛を続けていた二人だったが、木島は就職したての久住とすれ違ってしまう。そんな折、再び腕を負傷した木島はかつてを思い出すように、怪我の原因となった女性の息子・静雄にペンを握らせる。そこへやってきた久住は2人を目撃してショックを受け……。こじらせ作家の人生と愛をめぐる物語が展開する。

メインキャストである官能小説家の木島理生役を、話題のドラマ『年の差婚』の竹財輝之助、大学生の久住春彦役を『娼年』の猪塚健太、木島の編集担当の城戸士郎役を吉田宗洋が引き続き演じる。監督は、映画『植物図鑑 運命の恋拾いました』や映画『弱虫ペダル』などヒット作を手掛ける三木康一郎がドラマ版に続いて担当。映画から新たに登場する追加キャストとして、松本若菜、奥野壮、小林涼子、前野朋哉が出演する。

今回ムビコレでは、この話題作の原作者・丸木戸マキに話を聞いた。古典的な絵柄や落ち着いた作風から落ち着いた年頃の人物像を想像していると、現れたご本人はゴールドのマスクがオシャレなきれかわいい女子! そのギャップに驚かされたが、お話は冷静な自己分析を加えた鋭い切れ味。作品誕生の経緯からエロシーン執筆の苦労までたっぷりと語ってくれた。

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──まずは原作コミック「ポルノグラファー」を描かれた経緯から教えてください。

丸木戸:J. GARDENというイベントがありまして……。

──オリジナルBLの同人誌即売会ですね、一般客として何度か行ってます。

丸木戸:そうなんですね! 短編の読み切りを同人誌にしてJ. GARDENで頒布したんです。そうしたら今の編集部さんに「続きを読んでみたい」と声をかけてもらって、連載することになりました。商業誌デビューはタイミング的に別の短編なんですが。

──「水曜の朝、午前3時30分」ですか? 切ないけど、印象的な作品ですよね。

丸木戸:そうです! ありがとうございます。「ポルノグラファー」は準備に時間がかかったので、その後から連載が始まりました。

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──J. GARDENにはもともとよく参加してたんですか?

丸木戸:J. GARDENで同人誌を出したのはそのときが初めてです。別のイベントで二次創作の同人誌を出したことはあったんですが、そのジャンルの熱がいったん落ち着いて、オリジナルを描いてみたいと思うようになったんです。

──どんなふうに「ポルノグラファー」を作っていったんでしょうか。キャラクターからですか?

丸木戸:いえ、シチュエーションからですね。以前、深夜番組でセクシー女優さんが官能小説を読んでいるのを見て、それがすごいナゾな感じで(笑)。かなり棒読みなんですよ。これを男性が見てどう思うんだろう?って不思議に思って、BLにしたら面白いかな、と。キャラは後から出来上がっていった感じですね。木島はもっと違う雰囲気のキャラクターだったんです。ちょっと小汚いというか、リアルな汚いダメ人間。今の木島は綺麗なダメ人間ですが(笑)。自分の好みに忠実に従ったんです、結局自分の好きなタイプを描くのがラクに描けますから。黒髪でメガネで神経質そうな美人キャラという(笑)。自分の周りにもいる気難しそうな人も何人か参考にしました。同人誌と商業誌での連載の第1話はほぼ変えてないです。

丸木戸マキ

撮影中のオフショット

──同人誌から始まった作品がフジテレビでドラマシリーズとして実写化されたわけですが、初めて話を聞いたときはどう思われましたか?

丸木戸:BLの実写化はそれまでもありましたけど、ドラマシリーズ化は初めて聞いたのでびっくりしました。お話を聞いたのは『おっさんずラブ』よりも前だったし。映画館に行くよりも気軽に見てもらえるかもしれないと思って単純に嬉しかったです。ただ、濡れ場はもちろん、どんな風になるか不安でもありました。地上波テレビで同性愛者のキャラクターって少なかったし、真っ当な使い方がされていないイメージもあったので。よしながふみ先生原作の『アンティーク〜西洋骨董洋菓子店〜』でゲイのキャラクターがゲイの要素を伏せて描かれたのを見ていましたし、不安がありました。でも、BLというエンタメをドラマにしようとしてくれてると感じた時は嬉しかったです。

──それを感じたのはどのタイミングですか?

丸木戸:脚本を読んだ時ですね。原作と何も変わっていなかったので。構成もセリフもそのままで。逆にこれをドラマにして大丈夫?と思ったぐらいです。その後、出来上がった映像を見たときもちゃんとBLだ!って思いました。

──私も、テレビでここまでやるんだ!?って思いました。

丸木戸:撮影も少しだけ見学させてもらったんですが、それを見ただけでも、大丈夫かな? やり過ぎじゃないかな?ってびっくりしました。でも、三木監督はすごく綺麗に撮るのがお上手で、キスシーンも綺麗で嬉しかったです。

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──丸木戸先生の作品はしっとりとした湿度を感じますが、ドラマ化を見たときにも湿度が同じだなと感じました。

丸木戸:湿度のことはよく言われますね。ただ、「ポルノグラファー」はコメディだと思って描いたシーンもちょいちょいあるんですが、ドラマではシリアスな印象を受けました。それは三木監督の解釈で監督のカラーなんだと思います。

──確かに、丸木戸先生の作品のコミカルな要素も好きなところです。でも、実写でやると滑稽になるのかもしれないですね。

丸木戸:そうですね、スベっちゃうのかもしれないなぁ。実写としては良い塩梅になっていると思います。

エロシーンは得意じゃない

──キャスティングはいかがですか、理生役の竹財さんと春彦役の猪塚さんは?

丸木戸:竹財さんは黒髪とメガネと白いシャツがなんて似合う人なんだと思いました。身長高くて肩幅もあるんですけど、線の細い感じが理生らしくて、もう他の人はイメージできないぐらいです。猪塚さんは年下ワンコな感じがイメージぴったりです。目がキラキラしてる感じ。

──私は年下ワンコ攻めが好きですが、先生もお好きですか?

丸木戸:嫌いじゃないですねぇ(笑)。

──そして、今回ついに映画化ですね。

丸木戸:「インディゴの気分」のドラマ撮影が始まった頃に、続編を描いたら映像化できるかもしれないという話がありました。なので、「〜プレイバック」は映像化前提で描きました。実は続編は描く気があまりなかったんです。描くべきことはもう描いたと思ってたので。でも、続編を見たいと多くの方に期待されることもなかなかないことなので、描いてみようかと。これまで自分の頭の中でのイメージはあるんですが、2人がくっついた後の日常を描くことってあまりなかったんです。描き終わってから、読者の方にも喜んでもらえて、あ、読者はこういうのが見たかったのかとようやく気づきました。「〜プレイバック」はとくにポジティブな話にしようと思って描きました。

──丸木戸先生はくっついた後の2人の日常よりも、2人がどうくっつくかという過程の方が興味を持たれるのでしょうか?

丸木戸:そこが醍醐味じゃないですか? その方が話作りとして刺激的にしやすくて、ゴールテープを切った後、どうドラマとして山場を作ればいいのかわからなくて。どうくっつくかの方が話として描きやすいですね。

──刺激的という意味では、丸木戸先生の作品の心や過去に傷を持っているキャラクターが登場します。そんな彼らが一筋の希望を見出す姿にとても感動を覚えるのですが、人物としてもそういったキャラクターの方が描きやすいのでしょうか?

丸木戸:そうですね、描きやすいです。マイナスをプラスにして行くのは物語として王道ですよね。マイナスの部分を持っている人間の方が話を作りやすいし、共感してもらえるのかなと思います。

──先生の作品の「アケミちゃん」も心に傷を持つ者同士のお話で、とても好きです。「〜プレイバック〜」に静雄と春子が登場した時は嬉しかったです。

丸木戸:ありがとうございます。「プレイバック〜」はお話を作るのが大変で、とくに1話目が本当に大変で、うんうんうなっているときに新しい登場人物を出すのはどうだろうと思って、そのときに過去作をリサイクルすることを思いついたんです。「ポルノグラファー」シリーズのこの世界観と「アケミちゃん」は食い合わせがいいかな、と。実際描いてみるとうまくハマって良かったです。

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──こちらのキャスティングはいかがですか?静雄は私のイメージとはちょっと違ったのですが。

丸木戸:実写版ではちょっとヤンキーっぽさがありましたね。でもちょっと儚い雰囲気があって、子鹿のようなところが静雄っぽいと思いました。押しに弱そうなところも静雄っぽいです。春子さんは、もう最高でしたね。私のイメージよりもお若くて綺麗ですが、木島との絡みというか、誘うシーンがすごい良かったです。

──エロシーンについてもお聞きしたいですが、エロシーンを描く上で意識してられることはありますか?

丸木戸:うーん、エロシーンははっきり言って得意じゃないです。

──え!? あんなにお上手で色っぽいのに……?

丸木戸:エロシーンは難しくて特殊技術なんですよ。アクションシーンというか。なるべくなら描きたくないです(笑)。エロを描きたくてBLを描く方もいらっしゃると思うので驚かれるかもしれませんが。読者で楽しみにしていらっしゃる方もいると思うのでがんばって描いてます。

──ファンサービスみたいな感じですか?

丸木戸:ファンサービスっていうと、自分の中から出てきた純粋な気持ちじゃないのかって言われそうですけど。人からの要求に自分がやりたいことと擦り合わせて作品作りをすることにチャレンジしてます。そういう意味では、人から求められているものも描きたいという純粋な欲求があります。要求されたものをプロとしてアウトプットできるようになりたいんです。私も漫画家として5年目ぐらいなのでそろそろそういうプロの漫画家になりたいな、と。

──なるほどプロ意識ですね。では、先生が漫画を描く原動力というか、萌えはどういうことに感じますか?

丸木戸:萌え…? うーん…どういうことに? うーん…
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──質問を変えましょう。創作していて何をしているときが一番楽しいですか?

丸木戸:楽しいのはストーリーを考えているときが一番楽しいです! 物語がトントンと進んで、うまいことピタッとハマる瞬間が楽しいです。すべてを最初から考えているわけじゃなく、ちょっとずつ作品の断片をちりばめていって、それがうまいことピタッとハマってまとまると爽快な気分になります。あまりキャラに萌えるとかはないかもしれないです。もちろん好みはあるので、自分の好みのキャラクターを配置していくことは、物語を作るモチベーションを保つためにやりますけどね。

(text:牧島史佳)

丸木戸マキ
丸木戸マキ
まるきど・まき

2015年「水曜の朝、午前3時30分」で商業デビューを果たす。「ポルノグラファー」は初コミックスにして「BLアワード2017」において「つぎにくるBL作品」部門の2位に輝く。著書に「アケミちゃん」、「目を閉じても光は見えるよ」、「オメガ・メガエラ」、「僕らのミクロな終末」などを連載中。