【興行トレンド】ブラピ、クルーニーがハリウッドを活性化! 製作も手がけるスターたち

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プロデューサーとしても手腕を発揮するブラッド・ピット
プロデューサーとしても手腕を発揮するブラッド・ピット

昨年のアカデミー作品賞受賞作『アルゴ』をプロデュースしたジョージ・クルーニー、今年の作品賞受賞作『それでも夜は明ける』をプロデュースしたブラッド・ピット、自らが主演して『ウルフ・オブ・ウォールストリート』をプロデュースしたレオナルド・ディカプリオ。ハリウッドスターたちのプロデュース作が目立っている。

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3人を筆頭に、企画の立案から資金集めまでを担う製作会社を設立し、自らがプロデューサーを兼ねるハリウッドスターが増えている。自ら気に入った役を演じられ、作りたい映画を作れる利点があるからだ。失敗すれば役者業にも影響するリスクを背負いながらも、意欲的に製作に挑戦している。

スターのプロデュースといっても、作品のタイプは様々だ。

自分の主演作が大半なのがトム・クルーズ。「自分に合う役を自ら企画立案し、大ヒットさせて人気を維持すると共に、成功報酬を得たい」と考えたクルーズは、1993年に自分のエージェントだったポーラ・ワグナーと“クルーズ・ワグナー・プロダクション”を設立。初プロデュース作『ミッション・インポッシブル』(96年)が大ヒットする。彼はこの作品で、成功報酬として世界興収の数%を得る契約を結んでおり、7000万ドルを手にしたといわれる。クルーズ・ワグナー・プロダクションは軌道に乗り、以降、数多くのスターが彼の後に続いて自身の製作会社を設立するようになる。 

クルーズと同じく自分の主演作が大半なのが女優のドリュー・バリモアだ。95年にプロデューサーのナンシー・ジュボネンと“フラワー・フィルムズ”を設立する。男優に比べると女優は主演できる映画が少ないため、自身の主演作を作るために製作会社を設立した。

一方、自分の出演にこだわらないのが、前出のピットやクルーニー、ディカプリオの他、トム・ハンクスもだ。

例えばトム・ハンクスは、無名俳優が企画したラブコメディ『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』や大ヒット舞台ミュージカル『マンマ・ミーア!』の映画化など、出演とは関係ない企画をプロデュースしている。

俳優は一般的に新しい役柄や新しい企画に挑戦したがる。一方、大手映画会社は採算が見込めるかどうか分からない企画に尻込みする。そのため続編やリメイク、ファン層がはっきりしているアメコミの映画化に走りがちだ。だが、ハリウッドスターが主演したりプロデュースするとなれば、スターの信用力で大手映画会社が資金を出したり、配給を引き受けたりする。

ピットがプロデュースした『それでも夜は明ける』は、黒人奴隷制度を題材にしており大手映画会社は製作費を出しづらい。『それでも〜』を企画していたスティーヴ・マックィーン監督の力量を高く評価するピットが、プロデューサーを引き受けたことで製作に至ったのだ。アカデミー作品賞を受賞した際、マックィーン監督は「ピットなしでは映画化は実現しなかった」と感謝を述べた。

スターのプロデュース作の興行成績はまちまち。スターが主演を兼ねても不振の作品があれば、主演しなくても大ヒットする作品もある。だが、スターがプロデュースにあたることで企画が成立しやすくなる。彼らがハリウッドの活性化に一役買っているのだ。(文:相良智弘/フリーライター)

【ハリウッドスターの主なプロデュース作】
映画タイトル(製作年度)/出演の有無/米国での興収

●レオナルド・ディカプリオ
『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』(2004年)/×(出演せず)/100万ドル
『アビエイター』(2004年)/○(出演)/1億300万ドル
『エスター』(2009年)/×/4200万ドル
『シャッター アイランド』(2010年)/○/1億2800万ドル
『赤ずきん』(2011年)/×/3800万ドル
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年)/○/1億1700万ドル

●ブラッド・ピット
『トロイ』(2004年)/○/1億3300万ドル
『ディパーテッド』(2006年)/×/1億3200万ドル
『マイティ・ハート/愛と絆』(2007年)/×/900万ドル
『キック・アス』(2010年)/×/4800万ドル
『ツリー・オブ・ライフ』(2011年)/○/100万ドル
『それでも夜は明ける』(2013年)/○/5650万ドル

●トム・ハンクス
『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』(2002年)/×/2億4100万ドル
『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』(2007年)/○/6700万ドル
『マンマ・ミーア!』(2008年)/×/1億4400万ドル
『かいじゅうたちのいるところ』(2009年)/×/7700万ドル
『幸せの教室』(2011年)/○/3560万ドル

●トム・クルーズ
『ミッション・インポッシブル』シリーズ(1996年〜2011年)/○/7億3900万ドル
『マイノリティ・リポート』(2002年)/○/1億3200万ドル
『ラストサムライ』(2003年)/○/1億1100万ドル
『宇宙戦争』(2005年)/○/2億3400万ドル
『大いなる陰謀』(2007年)/○/1500万ドル
『アウトロー』(2012年)/○/8000万ドル

●ドリュー・バリモア
『25年目のキス』(1999年)/○/5500万
『チャーリーズ・エンジェル』シリーズ(2000年〜03年)/○/2億2600万ドル
『50回目のファースト・キス』(2004年)/○/1億2100万ドル
『2番目のキス』(2005年)/○/4200万ドル
『そんな彼なら捨てちゃえば?』(2009年)/○/9400万ドル

●ジョージ・クルーニー
『オーシャンズ』シリーズ(2001年〜07年)/○/4億2600万ドル
『シリアナ』(2005年)/○/5100万ドル
『フィクサー』(2007年)/○/4900万ドル
『かけひきは、恋のはじまり』(2008年)/○/3100万ドル
『ラスト・ターゲット』(2010年)/○/3600万ドル
『スーパーチューズデー 〜正義を売った日〜』(2011年)/○/4100万ドル
『アルゴ』(2012年)/×/1億3600万ドル
『8月の家族たち』(2013年)/×/3770万ドル

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