原作の本質を映画へ“翻訳”した大山千賀子監督の挑戦とは
下重暁子のベストセラーエッセイ「家族という病」が、大山千賀子監督の手で映画化される。作品の公開に向けて、藤本隆宏、友近、小出恵介、渡辺えりら実力派キャスト陣から、本作への思いや撮影を振り返るコメントが到着した。
・下重暁子のベストセラーを映画化した『家族という病』場面写真
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下重暁子のベストセラーエッセイ「家族という病」を原作に、大山千賀子監督がクロスオーバー群像劇として映画化。日本社会に根強く残る「家族神話」を真正面からえぐり、毒親や機能不全家族という言葉が一般的ではなかった時代に家族の幻想を打ち砕いた原作のエッセンスを、監督独自の視点で映像化した。
5つの独立したエピソードが少しずつ重なり合いながらつながり、最終的に「家族という病」の全体像を浮かび上がらせる構成となっている。誰もが抱える「〇〇しなければいけない」という呪縛から自由になることの痛快さと恐ろしさを、ブラックユーモアと大胆なデフォルメを交えて描き出す。

売れっ子ミステリー作家・田原純一郎(藤本隆宏)は、強烈な妻・麻里子(友近)に人生を支配され、本来の才能を眠らせたままだ。定年後も母の期待を裏切れず、偽の重役を演じ続ける元エリートサラリーマン・松原雄二(寺泉憲)。彼は引きこもりになった息子を抱えながら、虚飾の人生を続けている。そして、有名女子高に通う黒木まりあ(廣井若葉)は、母・玲子(椿原愛)がAV女優だという噂が学校中に広がり、追い詰められていく。
3つの家族が抱える虚飾と欺瞞の前に現れたのは、裸体をテーマに文学賞を受賞した新鋭作家・藤田森(小出恵介)だった。公園で自由に暮らすホームレスの女性(渡辺えり)は、彼らとはまったく別の存在として静かに姿を現す。
安定という名の不自由か、孤独という名の自由か——。ある台風の夜、彼らの運命が激しく交錯していく。

大山監督は、本作を安易なハッピーエンドや、闇を暴いてカタルシスを得るだけの作品にはせず、淡々とした日常の中へ、ふと過激なデフォルメを差し込むことで、下重暁子のエッセイが持つ独特のリズムを映像として表現した。感情を過度に煽ることなく、まるで気温を伝えるかのように事実を静かに積み重ねながら、その奥に熱量と確かな決意を込めている。
また、「泣けた」「スカッとした」といった単純な感情の着地点を観客に与えるのではなく、「どう感じればいいのかわからない」という戸惑いそのものを突きつけることを目指したという。その戸惑いこそが、本作に対する正しい反応だと考えている。
さらに、原作が持つ冷徹さや決して和解へと向かわない姿勢、「〇〇すべき」という価値観に縛られない強さ、そして家族という存在が生み出す残酷な束縛を損なうことなく、小説という文学を映画という異なる言語へと“翻訳”。原作を忠実になぞるのではなく、その本質を未来へと生き延びさせるため、複数のエピソードを重ね合わせながら、観客が少しずつ気づきを得られる構成を採用した。

■下重暁子監督
【Director’s statement】“この映画は、沈黙を破るための5発の銃弾です。公開されたら大炎上するかもしれませんが、それでいい。今、この時代に必要なのは、そんな作品だと信じています。「家族という病」が、あなたの当たり前にどんな一撃をくれるか──ぜひ、体感してください。”
一番近いはずの家族のことをあなたは良く知っているだろうか? 本当のことを知らないのではないか。家族という病、映画と原作は別物だからこそ新しい発見がある。
■藤本隆宏
天才と奇人の狭間で佇み、その感性のみで自らこの映画の企画、そして撮影をし続けた大山千賀子氏。スタッフとの意見の相違、俳優陣との激しい議論は数知れず…。しかしこの先鋭的で狂気すれすれの感性は誰もが持っているものではなく、その才能はこの『家族という病』には必要不可欠であった。
何よりも彼女には底知れない愛があり、作品にかける激しい思いと信念があった。誰をも凌駕するその情熱は恐ろしく、近寄りがたくもあったが、そんな憎めない愛しい監督と作品を一緒に造り上げてこれた事、今は自分の大きな財産となっている。
こだわりの画や色彩、情念、憤懣、抑圧、解放などの感情の表出をこだわって納得いくまで制約の許す限り追い求め、じっと天候と光、そして俳優の気持ちを待ち、撮影してくれた。ほぼ一発撮りの大木と私の裸体のシーンは特に印象に残っている。
天から授かった計り知れない才能をいかんなく発揮し創られた本作品。見た方はきっと大山監督の不思議な世界観の虜になり、「家族」というものを考えさせられる一石になると思う。
■小夏いっこ
家族だからこその苦しさなどあるし、共感できる部分もあり、自分の家族との関係を考えさせられる作品です。適切な距離感が大切なのだと思いました。
■椿原愛
玲子を演じさせていただきました。子どもは親の生き写しなのかもしれません。大切にしたいと思っていても、そしてそれを行動に移しているつもりでも相手に伝わらないことがほとんどです。ただ、玲子の中にある真実は、単純に子どもに対する愛だったと思っています。
■豊島心桜
「家族」というものは時に支えであり、時に病のようにまとわりつく存在だと感じています。曖昧で、厄介で、それでも確かにそこにあるものだと思っています。そのありのままの温度感を触れに映画『家族という病』ぜひ劇場に見にきてください。
■Kazuo”Deka”Nishino(アシスタントプロデューサー)
映画評論の専門家ではないので、映画そのものの中身については他の方にお任せして、僕は製作の舞台裏について触れたいと思います。
数年前、お世話になっているスタイリストの方から「友人が映画を撮るから手伝ってくれない?」とお話をいただき、お会いしたのが大山監督でした。初対面での印象は、とにかく“ブッ飛んだ監督さん”。ですが、それ以上に「いい映像を創ろう」という熱意が凄まじく、そのパワーに引き込まれてお手伝いさせていただくことになりました。
撮影が行われたのは、確か数年前の例の世界的な疾病の影響が強かった頃。監督と何度も議論したり、製作費の問題でやりたいことがやれなかったり作品を創ると言うことが大変な作業であることを痛感しました。
今回、この映画が完成して、こうして劇場公開されたのは監督の持つパワーだと思います。少しだけ内容に触れると、万人受けする作品ではありません。解釈は見る人それぞれで変わるとも思います。原作を知っている方は、原作との比較も楽しいかもしれません。自分個人的には、今まで色々な物の製作に関わってきましたが、映画製作は初めてだったので貴重な経験をさせて頂けた事に感謝です。
■友近
下重さんの著書「家族という病」が好きで、この作品が映画になると聞いてしかも自分がキャスティングされたことに驚きました。どこの家庭でも抱えている家族の問題、細かいリアリズムが共感でき一気に読み終えたのを覚えてます。ぜひ映像化された作品もご覧ください。
『家族という病』は現在公開中。
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