安田章大、のんとの芝居は「何もないんです」 『平行と垂直』舞台挨拶で明かした自然体の関係性と信頼
企画段階から参加した安田が作品への熱い思いと、のんとの芝居を語る
安田章大が製作を熱望し、企画から参加した映画『平行と垂直』の東京プレミアが、7月19日に都内劇場で開催。W主演の安田とのん、小林聖太郎監督が上映前の舞台挨拶に登壇した。この日の上映は、視覚・聴覚に障がいのある人を含め、誰もが作品を楽しめるよう、音声ガイドや日本語字幕に対応したバリアフリー上映として実施された。
・のん「お願いやから私の人生邪魔せんといて!」 結婚を控えた妹とASDの兄の葛藤と絆を描く感動作
温かい拍手に迎えられ、安田、のん、小林監督が登場した。安田は開口一番、「知ってる方、知らない方もいるかもしれませんが、私が安田章大です」と挨拶し、笑いを誘った。
先日、映画のロケが行われた大阪府堺市でジャパンプレミアが開催されたが、その際の反響について、安田は「SNSの使い方があんまりわからなくてですね、直接自分で見れないんですけど(苦笑)、周りからは『良い反応だよ』と言われています。マスコミ向けの試写会に、僕がお声がけさせていただいて、ドランクドラゴンの塚地(武雅)さんや大先輩である小林幸子さん、俳優の勝矢くんが来てくださったんですが、見た後に『心に響く、そして優しく、つらいだけではない、和やかなところもあり、寄り添ってくれる』という言葉をいただいたりして、『あぁ、届けられて幸せだな』と思いました」とうれしそうに明かした。
安田は企画の立ち上げ時から本作に参加しているが、ここまでの日々を振り返り、「届けていかなきゃいけないことは、“皆が手を取り合うこと”というのが、すごく明確に見えてきて、手を取るためには相手のことを知らなきゃいけないし、自分が一歩踏み出すことだったり、せめて半歩でも寄り添うことが大事なんだということ――『知る』ということですね。きっかけが必要なんだなということは改めて感じています」としみじみと語った。
企画者として「どのようにこの映画を観客に届けるか?」ということを考える立場にもあるが、安田は「作り上げたものを皆さまがどう受け取ってくださるか? というのは人それぞれだとは思うので、全部委ねたいという一心です。そんなに簡単に世界は変わらないし、人と人も変わらないので、心の奥底でしっかりと自分がブレないようにあろうというふうには改めて思っています」と思いを口にし、「味方であるということが、とにかく大事なんだと思っています」と言葉に力を込めた。

そんな安田の覚悟や思いを受け止め、W主演として本作に出演することを決めたのんは、「お話をいただいた時に、安田さんが山野(海/原案・脚本)さんと一緒に企画を立ち上げて、大事に育ててきた作品だというのをお聞きしたので『お受けするならば生半可な気持ちではいけないぞ…』っていう気持ちで、勇気を出して『やるぞ!』と気持ちを決めました」と振り返った。
のん自身、俳優という立場だけにとどまらず、さまざまな立場で作品づくりに関わってきた経験もある。この企画に触れ、「この作品が持っているテーマや物語が、とても繊細で、かつ温かいものが流れているので、本当に安田さんたちが大切に、大切に企画を膨らませてきたんだなっていうのを感じました」と語り、「ひとつの作品を作るために、いろんな人と関わりながら、作品が良くなっていくように、いろんな話し合いを重ねたり、取材することもたくさんあったと思うんですが、安田さんの“受け止め力”みたいなものが大きいから、こういう作品になったんじゃないかなと私は思います」と安田の感性を称賛した。
小林監督は本作への参加について、「最初は本当に引き受けられるのか? 当事者ではないかもしれない…という、恐れや躊躇はあったんですけれども、この脚本はまだ改善は必要だと思いながらも、その先にちゃんと小さくて温かくて、いまの世の中に欠けているものが少しでも維持できるんじゃないかと思って、(参加に)踏み切りました」と明かした。
苦労の末に完成した映画を初めて目にした時の思いについて、安田は「『きっと届く…』と思いました」と述懐。「映画というのはファンタジーですし、見る側にとっては、いろんな受け取り方があるはずです。だけど、現実はこういうことが起きていたり、きっとこれからも考えたり、悩んだり、立ち止まったり、うまくいったり…ということが起きていくんだなと。それらが全て、ちゃんとつながりながら、嘘がないような描かれ方をしていると思えたので、自分で見て素直に涙が流れるところもあったり、笑ったり、第三者のような自分がいましたね」と満足そうに語った。

劇中では、安田が演じる大貴とのんが演じる希の、嘘のないやり取りや関係性が見る者の心を打つ。事前に2人の間で打ち合わせなどは行ったのかという質問に、安田は苦笑いを浮かべ、「してたら良かったのに…と思うくらい、何もないんです」と明かし、のんも「(取材などで)すごく聞かれますよね(笑)」とうなずいた。
安田は「僕たち、空気感で存在し合った状態で(撮影が)進んでいったので、『この芝居はこうしよう』とか『こういうふうにセリフを言ってきたから、僕はこうする』みたいなものは、引き出しのどこを開いても入ってないんです」と、あくまで自然な空気感の中で2人の関係性が作り出されたと語った。
のんは「現場に行って、初日から安田さんとのシーンだったんですが、もう大貴がそこに存在していて、すごく腑に落ちました。『そういうことなんだ』という説得力があって、私はこの大貴に寄り添えばいいんだなというふうに、安田さんの演技によっていろいろ見えました」と感謝を口にした。
一方、安田も「のんちゃんが演じてくれている希がそういう感じだったから、僕自身『あぁ、じゃあ僕はこうなっていくんだな』というのが、インストールされた瞬間を明確に覚えていて、勝手に成立していったものなんだと思います」と、のんの佇まいによって大貴ができあがったと語り、互いへの信頼の深さをうかがわせた。
そんな2人について、小林監督は「言葉にすると、言った瞬間に違う気もしますし、“純”と言うと恥ずかしい!ってなるんですけど、そういう芯の部分を(2人で)共有しているものがあるのを感じました」と評した。
ちなみに、大貴が抱える「自閉スペクトラム症(ASD)」などを映画で扱うにあたり、監督は自身のみならず、周囲のスタッフや俳優のためにもさまざまな資料を用意し、撮影の準備を行ったという。のんも小林監督から資料を借りたそうだが、この舞台挨拶中に突然、「私、監督から『これがわかりやすいかも』という本を借りたんですけど、借りパクしてます(苦笑)!」と告白した。突然の“借りパク”発言に会場は笑いに包まれ、安田も「こんな場所で…」と笑みを浮かべていたが、のんは「お返しするつもりで…おうちにあります」と語り、安田から「“つもり”なんや(笑)?」とツッコミが飛んだ。

安田とのんはいずれも兵庫県出身だが、のんにとって関西弁で演技をするのは、意外にも今回が初めての経験だという。安田は、のんの関西弁のセリフの中でお気に入りの言葉を尋ねられると、「(希が口にする)『あかんあかん!』って好きですね。耳に残っています。見ていただくとわかると思いますが、愛らしさが出ていると思います」とにっこり。
のんは「関西弁ではないんですが、大阪ならではのセリフで『ラピート』(※大阪・なんばと関西国際空港を結ぶ空港特急)というのがあって、すごく好きです!」と語った。
舞台挨拶の最後に、のんは「この映画が持つテーマだったり、温かさだったり、希望が皆様のもとに届けばいいなと思っております。本当に素敵な映画です。何か感じ取っていただけたら。日々生活する中で、この映画で元気になるといいなと思います」と作品の魅力をアピール。
続いて安田は、「世の中、生きていれば良いことばかりではないですが、悪いことばかりでもないと思います。手と手を取るということがどれだけ大切なことなのか? 言葉にすることだけが話すということなのか? 時には黙ったり、時には会話したり、時には触れ合ったり――そうすることで相手とつながると思います。つながっていくことが大切だと感じている僕からすると、いまの世の中はやはり、手を取り合わなさ過ぎる世の中のようにも感じます。だからこの映画をきっかけに、いろんな人たち同士が手を取ること、そして、知り合うことを心から願ってつくりました。なので、一度触れてみてください。そして、自分たちも一人じゃない、誰かが味方でいてくれるということを思い出してください。いま一度、自分自身の心に、そして大切な誰かの心に手をあてて、これからも共に生きていってください。映画を楽しんでください。ありがとうございます」と呼びかけ、温かい拍手の中で舞台挨拶は幕を閉じた。
『平行と垂直』は2026年8月28日より全国公開。
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