『かぞくのくに』のヤン・ヨンヒ監督「家族に会うことと引き換えにこの映画を作った」

「家族に会うことと引き換えにこの映画を作ることを選びました」と目を潤ませるヤン・ヨンヒ監督
「家族に会うことと引き換えにこの映画を作ることを選びました」と目を潤ませるヤン・ヨンヒ監督
「家族に会うことと引き換えにこの映画を作ることを選びました」と目を潤ませるヤン・ヨンヒ監督
左から井浦新、安藤サクラ、ヤン・ヨンヒ監督
井浦新(左)と安藤サクラ(右)
安藤サクラ
井浦新

『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』で自身の家族や親族を題材にドキュメンタリーを撮り続けてきた在日コリアン二世のヤン・ヨンヒ監督が、初めてフィクションに挑戦した『かぞくのくに』。この映画が8月4日に公開となり、テアトル新宿で行われた初日舞台挨拶に安藤サクラ、井浦新、ヤン監督が登壇した。

『かぞくのくに』初日舞台挨拶、その他の写真

同作は、病気治療のために25年ぶりに北朝鮮から一時帰国した兄ソンホと、彼を迎える妹リエら家族の姿を通し、価値観の違いと変わらぬ家族の絆を綴っていく人間ドラマ。日本と北朝鮮。2つの国に分かれて生きる家族のやり場のない感情が生々しく描かれている。

監督の分身的な役柄である妹のリエを演じた安藤は「ちょうど去年の今ぐらいの時期に撮影をしていましたが、暑いし、現場の熱量もすごかった。そして何より、監督の思いが熱かったので、私はショートしていた。この作品は監督の強い思いからできているので、公開できて嬉しいです。『自分の思いは世界に向けている』という監督の言葉通り、いろいろな人に届いてほしいと思っています」と感慨深げ。

監督の3人の兄を集約したような兄ソンホ役を演じた井浦は「みなさんに見ていただいた今日この日が、作品が完成し、独り歩きしていく記念すべき日。みなさんの心に何かが残って、何かが生まれれば幸いです」と語った。

脚本から原作本も手がけたヤン監督は「今日この日を迎えるまで緊張の毎日でした。この作品は素晴らしいスタッフとキャストのみなさんに支えられて完成した作品。撮影時に出演者の大森立嗣監督に『地べたを這いずりまわって映画作ってますね』と言われたくらい、みんながドロドロになっていました(笑)」と話すと、「今日という日を迎えられて本当に嬉しい。私は家族に会うこと、兄に会うことと引き換えにこの映画を作ることを選びました」と目を潤ませながら、作品に対する並々ならぬ思いを口にした。

本作はベルリン国際映画祭のフォーラム部門に出品されC.I.C.A.E.(国際アートシアター連盟)賞を受賞したのを皮切りに、シドニー映画祭やスペインのグラナダ映画祭など、海外の10の映画祭に出品されることがすでに決定。また、ヤン監督の念願だった韓国での公開も決まるなど、世界各国で大反響を呼んでいる。ヤン監督は「映画の背景にある問題を理解していただけたら、それに越したことはありませんが、あくまでも映画なので、怒りや悔しさ、共感などを感じてほしいです。哀しい話ではありますが、小さな家族の物語として見てほしい」と観客に向かって映画をアピールしていた。

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『かぞくのくに』作品紹介

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