女性同士の「いけない関係」が醸し出すエロティシズムを堪能、谷崎潤一郎の名作小説を映画化
#エロい映画#卍#谷崎潤一郎#井土紀州#新藤まなみ#小原徳子#大西信満#黒住尚生
(C)2023「卍」製作委員会
男女4人が絡み合う愛欲の物語『卍』
つい最近、谷崎潤一郎の小説を原作とする映画『鍵』が公開された。世間が思う「普通」をはみ出して展開される谷崎作品の甘美なエロティシズムは、映画屋の創作意欲を刺激するのだろう。『鍵』の映画化はこれが初めてではない。『鍵』同様、過去に何度か映画化されてきた谷崎作品に『卍』がある。『卍』とは、4人の男女の愛憎や嫉妬が絡み合う様子を象徴して付けられたタイトルらしいが、その由来といい字面といい響きといい、なんとも淫靡な香りが漂ってくる。
・声とはこんなにエロいものなのか……ことに及ぶ声、大蛸が海女を吸う擬音、『春画先生』を鑑賞する
今回取り上げるのは、『溺れるナイフ』の脚本(共同執筆)を手掛けた井土紀州が監督を務めた『卍』(2023年)だ。原作では女性が関西弁の独白体で自身の性愛体験を告白していくが、それを現代風に再解釈&再構築した『卍』は一体どのくらいエロイのか。女性目線で紐解いてみようと思う。
「来た来た!」期待のシーンは意外と早く訪れる
「原作は読んでいないけれど女性の同性愛を描いた作品ということは知っている」という人も多いのではなかろうか。なので、「一体いつその場面が出てくるのか」と下世話な期待をしながら前のめりで鑑賞してしまうのは、私だけではあるまい。「きっとこいつとこいつがそうなるんだろうな。ほら…来た来た!」そんな観衆の姿を事前に監督が見透かしていたかどうかはさておき、「その場面」は意外とあっさり訪れる。
歯科医の夫を持つ園子(小原徳子)は、自身が経営するセレクトショップの広告モデルとして光子(新藤まなみ)を起用した。園子は広告写真の撮影も自身で手掛けており、光子の奔放で明るい雰囲気に魅せられながら夢中でシャッターを切っていく。

(C)2023「卍」製作委員会
二人は唇を重ね、互いを激しく求め合い……
最初に「そういう雰囲気」を醸し出したのは光子の方だ。同性への好意を伝えるにしては違和感のある言い回し、意味深な視線、不自然なスキンシップ…といった小さな出来事が積み重なり、園子の心をざわつかせていく。だが、「いけない関係」へと進展するきっかけを作ったのは園子である。浜辺で唇を重ねるや否や、2人の性的衝動に火が点いた。その燃え上がった炎を鎮火するには、行くところまで行かなければ収まりそうもない。園子と光子はホテルと思しき場所に移動してお互いを激しく求め合い、女性2人の絡みがかなりの長尺で展開される。

(C)2023「卍」製作委員会
女同志の淫らな関係を知った男たちは……
ここで思い出していただきたい。『卍』は単なる女性の同性愛を描いた作品ではなく、4人の男女の愛憎や嫉妬が絡み合った物語だ、ということを。園子には孝太郎(大西信満)という夫があり、光子にはエイジ(黒住尚生)という同棲中の彼氏がいる。園子と光子の秘密の関係は、ほどなくして2人の男たちの知る所となった。「一体いつその場面が出てくるのか」という下世話な好奇心が満たされたとなると、次に気になるのは「2人の男たちはどういう行動に出るのか」「園子と光子の関係はどうなっていくのか」である。なかには、「えっ? そう来る?」と意外な行動に出る曲者もおり、4人の関係が一体どこに着地するのか予測ができない(個人的には、物語の展開や場面運びにやや性急さや雑さを感じた部分も少なくないが)。
「同じ恋愛でも同性の愛と異性の愛とはまるきり性質違うよって」
「夫婦の愛は夫婦の愛、同性の愛は同性の愛やよ」
原作の『卍』の中にはこんなセリフがあるが、女性同士の絡みには男女の絡みにはない独特のエロティシズムがある。自らも乳房を持つ女性が別の女性の乳房を口に含むシーンなどは、特に卑猥な気がしてならない。谷崎の原作と比較するもよし、予備知識なしで単体の作品として見るもよし、興味のある方はぜひご視聴されたし。(文:春蘭/ライター)

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