『心配無用ノ介 天下御免』田村ツトム×沙倉ゆうのインタビュー

『侍タイムスリッパー』ファンに贈る、まさかのドラマ化!田村ツトム×沙倉ゆうのが語る『心配無用ノ介』撮影秘話

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心配無用ノ介

山口馬木也さんからの温かい言葉、今でもウルッと…/田村ツトム

たった1館の上映からスタートし、気づけば全国300館超で上映される社会現象に——。超低予算のインディーズ映画でありながら興行収入10億円を突破し、第48回日本アカデミー賞では最優秀作品賞まで受賞した、あの『侍タイムスリッパー』。その劇中劇としてほんの一瞬だけ登場した時代劇『心配無用ノ介 天下御免』が、まさかのドラマ化を果たし、現在BS-TBSで放映中だ。貧困にあえぐ江戸の庶民を苦しめる悪党たちを、正義の侍・心配無用ノ介が痛快に懲らしめる、王道にして新感覚の勧善懲悪物語である。

[動画インタビュー/全編]田村ツトム × 沙倉ゆうの、1000人に見守られながらの公開撮影!
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心配無用ノ介 天下御免

『心配無用ノ介 天下御免』

メガホンを取ったのは、もちろん『侍タイムスリッパー』を奇跡の大ヒットへと導いた安田淳一監督。主人公・心配無用ノ介を演じるのは、映画と変わらず田村ツトム。そして彼に忠義を尽くす御庭番(将軍直属の隠密)おゆうを演じるのは、映画でヒロイン・優子を演じた沙倉ゆうのだ。

監督はもちろん、映画ファンも待ち望んでいたという奇跡のドラマ化——その裏側には、一体どんな物語があったのか。主演の田村ツトムと沙倉ゆうのに、たっぷり話を聞いた。

『侍タイムスリッパー』安田淳一監督&沙倉ゆうのインタビュー

──『心配無用ノ介 天下御免』がドラマ化されたことへの感慨は?

沙倉ゆうの:会議にも時々参加させてもらいながら、ファンの方々には「ドラマ化がもうすぐできそうです」と伝え続けて1年弱。やっと決まって、応援してくださっている方々にようやく嬉しい報告ができたのが、私の中では一番大きかったです。日本アカデミー賞をいただいてから1年弱、なかなか大きな報告ができずにいたので。

田村ツトム:本当にドラマ化できるのかなと思った時もありました。

田村ツトム×沙倉ゆうの

沙倉ゆうの:ありました(笑)。最悪、YouTubeで配信すればいいやというくらいの気持ちで。もともと太秦映画村と未来映画社で小さく配信しようというところから始まった企画だったので、まさかBS-TBSさんでドラマ化されて、テレビで放送されるところまで大きくなるとは、最初は思っていませんでした。

田村ツトム:『侍タイムスリッパー』の撮影時は、無用ノ介がその映画から飛び出して1つの作品になるとは、全く想像していませんでした。それが、日本アカデミー賞の授賞式の会場で、BS-TBSさんのプロデューサーから「ドラマ化するなら、ぜひうちでやらせてください」と声をかけていただいて。テレビ局の方から直々にそう言っていただいた時、「ここから始まるんだ」と実感しました。
そこから監督を中心に制作委員会で会議が重ねられていたんですが、正式に決まるまで約1年。1ヵ月ごとに監督から「今日も会議がありまして」と連絡があって、「ドラマ化、決まったんですか」「いや、まだです」というやり取りが8ヵ月ほど続き、正直、難しいと思った時期もありました。それでも舞台挨拶のたびにファンの方々から「ドラマ化はいつ?」と聞かれて、「今会議をしているので、夢を持って待っていてください」とお伝えし続けて。
そして約1年後、本格的に決定。最初にお話をくださったBS-TBSさんで全6話の放送が決まり、監督から電話で知らされました。「やった!」と思った瞬間、次に浮かんだのは『侍タイムスリッパー』を応援してくれたファンの方々の顔。やっといい報告ができる、と。

──役柄についてですが、沙倉さんは今回、御庭番を演じています。『侍タイムスリッパー』の優子ちゃんとはまったく違うキャラクターですね。監督から演出プランなどは聞かされましたか?
心配無用ノ介

沙倉ゆうの:監督から特別な注文はなかったんですが、御庭番という役どころ上、笑顔を封印しないといけないのが難しかったです。立ち回りのシーンもそうですし、日々、無用ノ介に(隠密として)情報を伝える役どころなので、ニコニコしながらは演じられません(笑)。今までにない役で、自然と表情が固くなりましたし、できるだけ低い声で話すよう気を張っていました。

──御庭番という役柄を聞いたとき、驚きましたか?

沙倉ゆうの:御庭番という設定自体は、企画の段階ですでに決まっていました。女性が立ち回りをする機会は普通の時代劇ではなかなかないので、殺陣を習っていた私にとっては、いつかやってみたかった役柄です。今回は片手で立ち回りをする難しさもありましたが、そこが撮影で一番楽しく、やりがいがありました。

──田村さんの役は前作と同じですが、前作の撮影中に心配無用ノ介の物語がここまで大きくなることを想像していましたか?

田村ツトム:『侍タイムスリッパー』の時は、劇中劇で本編の一部、出番も全編通して7分ぐらいでした。その役がここまでファンの方に支持されてドラマ化されるとは、夢にも思っていませんでした。台本がそのシーンでしか書かれていなかったので、当時は「ここで盛り上げて、それを新左衛門(山口馬木也)が見て泣く」というワンポイントの役作りでしかなかったんです。
ドラマ化が決まってからは、1話1話が全て繋がった作品にするために1本芯の通った人物像が必要になるので、監督と何度も相談しました。「人に愛される部分」をもっと掘り下げようと、電話で意見のやり取りを重ねました。

──監督が肉付けしていった部分で、「心配無用ノ介ってこういう人だったんだ」と驚いた点はありますか。
田村ツトム

田村ツトム:今回まず言われたのが「甘いものが好き」ということでした。甘党で、お酒も甘酒。“あて”も饅頭やお団子ばかり頼む、今で言うスイーツ男子ですね(笑)。本人は真剣にやっているのに、見ている観客からするとツッコミどころがある。そこに愛嬌があって愛されるキャラクターを演じてほしい、というのが監督からの注文でした。

──京都の太秦映画村で公開撮影されたと聞きましたが、全て公開だったのですか?

沙倉ゆうの:ほとんどそうです。ただ、オープンセットで撮影するところは全部公開でしたが、屋内シーンなどは違いました。

田村ツトム:お客さんが入れない室内や建物の中などは、見学の方に見ていただけるカメラを1台用意して、皆さんにはモニターで見ていただく形をとっていました。

──公開撮影の感想は?

沙倉ゆうの:私は舞台の経験がなかったので、撮影前は、お客さんが近くにいる前で演じるのがすごく不安でした。いざ撮影が始まると意外と気にならなくて、普段通りにできましたね。今回は空き時間も多かったので、お客さんとコミュニケーションを取れるのも楽しかったです。
ただ、第5話で1人で3人を相手にする立ち回りのシーンだけは、自分の芝居でいっぱいいっぱいで。皆さんのところに行く余裕もなかったんですが、それでも皆さんが心の中で「頑張れ、ゆうのちゃん」と応援してくださっているのをすごく感じました。それがとても心強かったです。

──田村さんはいかがでしょう?

田村ツトム:ドラマのロケでお客さんに見られる経験はありましたが、公開撮影自体は初めてです。ただ、子どもの頃は、映画村に遊びに行って公開撮影を見学したこともあります。「よーい、スタート」の掛け声とともに演じるお侍さんを遠くから見ていて、撮影の合間には「どこから来たの?」と声をかけてくれる、というイメージがありました。
それが今回、やる側になったので、お客さんにどう接したらいいか常に考えていました。お越しいただいたのはほとんどが『侍タイムスリッパー』のファンの方々で、映画村に旅行で来た方も見学に加わって、最初の1日は1000人近く。正直、最初の1、2日はどこからも見られている状態で気が抜けませんでした。
でも1ヵ月ほど撮影が空いた間に、気持ちの整理ができました。ただ手を振るだけでなく、撮影の空き時間に近くまで行って皆さんに話しかけたりしないと、公開撮影の意味がないなと。そこからは、お客さんに背中を押された気分で、心地よく撮影が進んでいきました。緊張よりも力をもらって、「これがドラマになりますよ、楽しみにしていてください」という気持ちで臨めたので、お客さんとの一体感がありました。先日シネマ・ロサでの上映会でお客さんの顔を見た時、その気持ちがちゃんと伝わっていたんだと実感しました。公開撮影はこれからもどんどんやるべきだと思います。

──冨家ノリマサさん、山口馬木也さんも出演されていますね。一緒に演じるのは久しぶりだったと思いますが、いかがでしたか?

沙倉ゆうの:冨家さんには助けてもらうシーンがあって、背中に背負ってもらいました。それ以外は、同じ日のシーンが立ち回り中心で集中されていることが多く、あまりお話しする機会はありませんでした。

田村ツトム:冨家さんとご一緒することが決まってLINEを交換させてもらったんですが、「よかったね、田村くん。やっと君の主演のドラマが決まったじゃないか。僕たちがバックアップするので、思い描いている無用ノ介を100%出し切ってください」と言っていただいて。撮影当日、「今日からご一緒します、よろしくお願いします」と送ったら、「もう新幹線で向かっているよ、待ってろよ」と返ってきました。
その後、LINEに「ここだけの話、僕のこと“のりちゃん”って呼んでくれよ」と。実はその前、舞台挨拶の時に「田村くん、このまま調子に乗って俺のこと“のりちゃん”って呼ぶんじゃないだろうな」「呼んだらぶっ飛ばすからな」と冗談を言っていたので、いざ「呼んでいいよ」と言われると、本当に呼んでいいものか迷ってしまって。結局お会いした時は失礼にあたると思い「冨家さん」とお呼びしたら、「なんだ、“のりちゃん”って呼んでくれないのか」と(笑)。それが久しぶりの再会のご挨拶でした。
物語の設定上、二人は兄弟の役。本当に冨家さんの胸を借りる形でお芝居させていただきました。気持ちをいただいて次のセリフがスムーズに出てくる感覚は、『侍タイムスリッパー』の頃からずっとご一緒してきた方だからこそだと思います。安心してそのシーンに臨めました。

[動画]山口馬木也インタビュー

──山口さんとの再共演はいかがでしたか?
山口馬木也、冨家ノリマサ

『心配無用ノ介 天下御免』撮影中の様子。左から冨家ノリマサ、山口馬木也、田村ツトム

田村ツトム:実は山口さんには、直前まで連絡を一切していなかったんです。当日、現場に入られるタイミングで初めてご挨拶しようと思っていたら、向こうから満面の笑みで「よかったね」と声をかけてくださって、自然とハグしていました。あの時は本当に嬉しくて涙が出ましたし、今でも思い出すとうるっとします。「やっとここまで来たね、ここからだよ、田村くん」という言葉に、背中を押されると同時に責任感も感じました。

思わず感涙 山口馬木也の言葉を思い出し…[動画インタビュー/後編]

こだわり過ぎる撮影を脱却したことで、安田監督の成長を実感(笑)/沙倉ゆうの

──安田淳一監督の現場も久しぶりだったと思いますが、いかがでしたか?

沙倉ゆうの:今回は東映京都撮影所のスタッフの方々についていただいたので、撮影自体は割とスムーズでした。監督が一言言うと周りのスタッフの方々がすぐに動いてくれるので。ただ、監督ご自身がカメラマンを兼ねているのは相変わらずで、構図に納得がいくまで何テイクも重ねるところは変わりません。
特に(撮影がスタートした)3月の最初の2日間は映画の時と同じようにカット割りも多く、私の出番が来たのが夕方5時。1日ラストシーンだけで終わったこともあって、「これはいつもの安田監督だな」と思いました(笑)。

田村ツトム:ずっと待っていましたね(笑)。

安田淳一

撮影中の安田淳一監督(左)と冨家ノリマサ(右)

沙倉ゆうの:ただその後、撮った映像を見返して「時代劇らしく、あまり細かくカットを割らない方がいい」という判断があったようです。実際、最初の2日間に撮影した映像は使われていない画も多いみたいです。方針が固まってからはスケジュール通りに進むようになって、監督として成長された感じがありました(笑)。

田村ツトム:いろいろな作品でお付き合いがあるので、そのあたりの変化がよく分かるんですよね(笑)。

沙倉ゆうの:『ごはん』の撮影の時なんて、1日かけて3カットしか撮らないこともありました。天気や風、太陽の向きにこだわってベストなタイミングを待つんです。一度OKが出ても「今の方が光がいい」となれば撮り直すことも。『侍タイムスリッパー』の時は撮影日数が決まっていたのでそこまでではなかったんですが、今回の『心配無用ノ介』の撮影は本当にスムーズでした(笑)。

沙倉ゆうの

田村ツトム:僕が安田監督と久しぶりにご一緒して感じたのは、まさにそこです。「あぁ〜、これこれ」っていう(笑)。
『侍タイムスリッパー』の撮影でも、いつOKが出るんだろうと思っていました。監督の中に1つのシーンの理想の画があって、声のトーン、人の動き、天気、画角、全てが綺麗に収まらないとOKが出ないんです。「OKだけど、念のためもう1回だけ」ということもよくありました。
僕も山口さんも心の中で「またか」と思うことはあったんですが(笑)、それでも撮り続けられたのは、監督のまっすぐな思いが前面に出ていたからです。カメラを覗いている監督の表情を見ていると、「もういいでしょう」とは言えなくて。今回の無用ノ介の初日の撮影でも、それを改めて感じました。こだわりはやっぱり変わらないんだなと。
いろいろなスタッフに、今まで監督自身が担っていた仕事を任せているにもかかわらず、照明や道具など全てに気を配りながら「よーい、スタート」と言っている姿を見て、「これこれ、これがまた始まるんだ」と感じたのが初日でした。

──安田監督とは、うるっとした感動エピソードはなかったんですか?
田村ツトム×沙倉ゆうの

田村ツトム:なかったです(笑)。

沙倉ゆうの:さっさと(撮影しよう)みたいな感じでね(笑)。

──最後に、ドラマの見どころなどを教えていただけますか?

沙倉ゆうの:くすっと笑える時代劇として、昔ながらの時代劇の魅力と、その裏側を描いた、今までにない新しい時代劇として楽しめる作品になっていると思います。「心配無用ノ介 天下御免」、ぜひお楽しみください。

田村ツトム:古き良き時代劇の新作として、今回ドラマ化された「心配無用ノ介 天下御免」ですが、予想を裏切る新感覚時代劇になっています。若い方からお年寄りの方まで、時代劇ファンの方もそうでない方も十分に楽しめる内容になっていますので、全6話、見逃さずに楽しんでください。よろしくお願いいたします。

(text:編集部/photo:小川拓洋)

田村ツトム
田村ツトム
タムラ・ツトム

1973年12月20日生まれ、大阪府出身。映画『武士の家計簿』(10年)、『ある家族』(21年)、ドラマ『ラジオスター』(26年)等に出演。舞台でも活躍。映画『侍タイムスリッパー』(24年)で劇中劇の主人公・心配無用ノ介を演じ、そのスピンオフドラマである連続時代劇『心配無用ノ介 天下御免』(26年)で主演を務めた。

沙倉ゆうの
沙倉ゆうの
さくら・ゆうの

1979年10月10日生まれ。兵庫県西宮市出身。安田淳一監督の『拳銃と目玉焼』(14年)でヒロインを、『ごはん』(17年)で主人公を演じる。『侍タイムスリッパー』(24年)ではヒロイン役と助監督を兼務し話題に。『心配無用ノ介 天下御免』(26年)では御庭番・おゆう役を演じた。