前田敦子、6歳で性被害に遭った女性演じ「難しかったです…」目を潤ませながら当時の心境を打ち明ける

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『一月の声に歓びを刻め』
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三島有紀子監督自身が6歳の時に性被害に遭った実際の現場で撮影

『繕い裁つ人』(15年)『幼な子われらに生まれ』(17年)『Red』(20年)などを手掛け、国内外で高い評価を受ける三島有紀子監督の長編10作目となる最新作『一月の声に歓びを刻め』が公開中だ。本作より、主演・前田敦子×三島監督のインタビュー映像と、前田演じる“れいこ”のレンタル彼氏を演じた坂東龍汰のインタビュー映像を紹介する。

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本作は、三島監督自身が47年間向き合い続けた「ある事件」をモチーフに自主映画からスタートしたオリジナル企画。八丈島の雄大な海と大地、大阪・堂島のエネルギッシュな街と人々、北海道・洞爺湖の幻想的な雪の世界を背景に、3つの罪と方舟をテーマに、人間たちの“生”を圧倒的な映像美で描いていく。

キャストは、船でやってきた者に前田敦子、船を待つ者に哀川翔、船で向かう者にカルーセル麻紀。さらに坂東龍汰や片岡礼子、宇野祥平、原田龍二、とよた真帆らが脇を固める。

今回紹介するのは、主演を務めた前田と三島監督のインタビュー映像。前田は「まっすぐに一緒にやりませんかと言ってくださいました。でもすぐに『はい』と言える役じゃないなと思って。噛み砕く作業を自分の中でやりつつ、(一方で)監督は『待ってます』と変わらずにいてくださったので、飛びついたら監督がスッと連れていってくれるかなという期待も込めて、やっとお受けできました」と恐縮しつつ苦笑する。

「脚本の中に監督の伝えたい気持ちがすごく詰まっていたので、でもセリフで語らないシーンが全体的に多くて。撮影現場に行った時に感じられる余白がたくさんあるだろうな」と脚本を読んでいる時から思っていたという前田だが、現場では「監督がすごい隣りに、目の前にいてくれたので、今回の役は(俳優の)みんなそれぞれすごい助かったと思います。寄り添ってくれる存在がなかったら辛かった」と感謝の気持ちを語る。

それに対し三島監督は、「(今までも俳優たちに)『近い! 近い!』といつも(嫌がるように)言われる。それくらい(撮影の時は)近くで見ているので(笑)」と告白して笑いを誘った。

三島監督自身が6歳の時に性被害に遭った実際の現場での撮影について前田は、「お芝居だけど、お芝居のようにセリフを言いたくないなという難しい駆け引きがあったかもしれないです。監督だけを意識していました。一緒に(監督と)しゃべっているみたいになれたらいいなと思って。他は見ないようにしていました」と語ると、その撮影現場を思い出したかのように深いため息まじりに「難しかったです…」と目を潤ませながら当時の心境を打ち明けた。

凍てつく北海道・洞爺湖や、雄大な海と大地に吹き荒ぶ強風の八丈島、エネルギッシュな大阪・堂島で撮り上げた本作。完成した本編を見た前田は「冒頭からふわっと広い世界に入っていく感じが気持ちいいなと思って。(主人公たちが)罪の意識を抱えていても、どんどん積み重なって重たくなっていくわけではなくて、みんなが少しずつ何かを解放していくのを(自分も)一緒に見ながら、『最後に自分がこういう風に思えるということはこうなんだ』と自分自身を整理できる、“人生の映画”だなと思いました」と語る。

三島監督は「ふつうは遠く離れた声は聞こえない。だけどどこかの誰かにこの声が届いているのかもしれないと信じて3箇所で撮影した思いがありました」と創作の原点のひとつを紹介。それを受けて「何かを植えつけてくるわけでもなくて、こうであるべきだでもなくて、余白をいっぱい作ってくれる心地いい、気持ちいい映画です」と前田が締めくくると、全員が納得の笑顔でインタビューを終えた。

また、前田演じる“れいこ”のレンタル彼氏を演じた坂東龍汰のインタビュー映像では、三島監督からのオファーに「僕自身、(三島監督の)好きな作品がたくさんあったので素直に嬉しかったですし、即決でした」と当時を振り返る。

坂東は北海道出身。三島監督が監督・脚本を務め、初の長編映画となった『しあわせのパン』(11年)も洞爺湖が舞台だったが、その当時から三島監督が強く印象に残っていたようだ。

「北海道の洞爺湖が地元なので、『地元で映画撮ってる!』って。(撮影も)知り合いのパン屋さんで。地元で生活して見えている洞爺湖の景色と、監督が撮られた映画の中で見えている洞爺湖の姿が全然違って、『こういう風に見えている人もいるんだ』と新しい発見があったり、すごい素敵な場所だなって改めて思えたきっかけでもあったり。今回まさかまた洞爺湖が登場するとは思っていなくて、脚本を読んだ時に『あ!』となりました。『洞爺湖だ!』って(笑)」。

ところが、本作で坂東が出演するのは大阪・堂島を舞台にしたシーン。洞爺湖のシーンでは出演しておらず、地元での撮影は叶わなかった。だが、「いつか一緒に洞爺湖で映画を撮りたいです!」と、三島監督と次回作でのタッグに夢を繋いだ。

今回演じた役の“トト・モレッティ”については、「人に興味があって、人のことを知りたい探求心がある部分でいうと、僕も結構そういうタイプですし、関わらないよりは関わっていきたいタイプなので」と自身と重なる部分がある様子の坂東だが、撮影現場では三島監督を「お母ちゃん!」と呼んでいたと吐露。

「前田(敦子)さんと3人で 撮影中に話す時も、本当にお母ちゃん感がすごくて、ズバズバものを言ってくださいますし、安心感もありますし。なぜかわからないですけど、お母ちゃんって呼んでました(笑)」と時折見せる屈託のない笑顔は、三島監督のみならず、主演の前田も“妖精”と呼ぶほどに現場のムードメーカーだったことがうかがえる。

共演した前田については、「前田さんのお芝居をしている時の声のトーンとか、感情の乗り方みたいな、声の乗り方みたいなものが、心に届いてきます」と絶賛。「映画を見た後に僕はいろいろ考えましたけど、決してマイナスな気持ちで終わる映画ではないので。前田さんの歌声の力強さみたいなところにすごく希望を感じるというか、温かいものを感じる映画。素晴らしいラストが待っています!」と自信たっぷりに語った。

『一月の声に歓びを刻め』は全国公開中。

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