『43年後のアイ・ラヴ・ユー』ブルース・ダーン インタビュー

元カノの記憶と愛を取り戻すためおじいさんが奮闘! 極上映画について名優を直撃

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ブルース・ダーン

名優も驚いた、家族のように仲の良いスタッフと温かな撮影現場

『43年後のアイ・ラヴ・ユー』
2021年1月15日より全国公開
(C)2019 CREATE ENTERTAINMENT, LAZONA, KAMEL FILMS, TORNADO FILMS AIE, FCOMME FILM . All rights reserved.

70歳のクロードは妻を亡くし、LA郊外に1人で住む元演劇評論家。ある日、昔の恋人で舞台女優のリリィがアルツハイマーを患って施設に入ったと知る。もう一度リリィに会いたいと願ったクロードは、アルツハイマーのフリをして彼女と同じ施設に入居するという一世一代の嘘を思いつく。リリィと念願の再会を果たしたものの、彼女の記憶からクロードは完全に消し去られていた。

43年後のアイ・ラヴ・ユー』であの手この手で彼女の記憶を蘇らせようと奮闘する主人公をコミカルに、時にロマンチックに演じた名優ブルース・ダーンにインタビューを敢行した。

・『43年後のアイ・ラヴ・ユー』予告編

──本作のどのようなところに魅力を感じましたか?

ダーン:この物語の魔法のような要素に惹かれ、出演を決めました。本作は2つのラブストーリーからできていて、私が演じたクロードはその中間にいます。誰しも過去にうまくいったこと、いかなかったことがあるでしょう。そこに興味を持ちました。クロードがリリィを取り戻せると信じている情熱にも惹かれました。他の映画や本では見たことがない、素晴らしい、魔法のようなお話です。

──マーティン・ロセテ監督と仕事をしてみていかがでしたか?

ダーン:彼には好感を持ちました。私やジャック・ニコルソンのように長いキャリアを積んだ役者には共通点があります。我々のような俳優が演出指導を必要とするのは、時に予想だにしないような芝居をしてしまうことがあるから。だから、いつどこで何をするか、どこまでがやりすぎか、など監督の指導が必要なんです。大袈裟に演技しているわけではなく、ジャックも僕も端役から始めたので、スクリーンに映る時にキャラクターを目立たせる工夫が必要でした。例えばテーブルに座ってただ水を飲むシーンでも、どうしたらもっと面白くなるか? とかね。マーティンの好きなところは、私のこのような性格を理解した上で出演をオファーしてくれたこと。彼が素晴らしいのは、彼自身が何をしたいのか明確に分かっていることですね。

──シェーン役のブライアン・コックスとの共演はいかがでしたか?

ダーン:彼のことは以前から知ってました。TVドラマ『メディア王~華麗なる一族~』に出演していますよね。彼はイギリス人で俳優としてのスタイルも違うけど、とても良い役者だ。“良い”ってかなり幅広い表現だけど、とにかく良い役者だと思う。

43年後のアイ・ラヴ・ユー

──出身の異なるスタッフとの撮影は大変でしたか?

ダーン:映画撮影の好きなところは関係者が家族のようになることです。本作のスタッフもとても仲が良かった。誰と誰が以前一緒に仕事をしたことがあるのか、撮影スタッフ・音声スタッフなど所属の違いは知りませんが、彼らは非常に親切で、俳優陣、つまり私たちに細心の気配りをしてくれました。アメリカではこうはいきません。イギリスなんてもっと違います。
本作では皆が私を受け入れてくれました。毎日現場に入ると温かく迎え入れてくれるだけでなく、私の演技も見ていてくれて、これには驚きました。俳優はやるべきことをやるだけで、普段は彼らにそこまで関わりを期待していません。昨日はいくつか泣くシーンの撮影があったのですが、それも見てくれていました。そこまで立ち合うなんて、普通はあり得ないことです。そしてまるで僕が大スターであるかのように、セットで拍手を送ってくれたのです。

──本作について、何か一言付け加えるとしたら?

ダーン:本作では『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』と同様に、年をとった人が受ける待遇として典型的な例が登場します。彼らを高齢者施設に入れてしまうという、良くない判断です。彼ら自身は施設に入りたいと思っていない。彼らは今いるところにそのまま住み続けたい、なぜならそこは彼らがいるべき“家”だから。なのに彼らが少々足手まといで、世話をしたくないからと施設に入れようとするのです。

ブルース・ダーン

──若手の俳優に向けて、ぜひアドバイスをお願いします。

ダーン:私はあることを追求するため、俳優になりました。特にストレスを感じている時にどのように振る舞うか。私はそのことをキャリアを通して追求してきた。大切なのは振舞いです。私のキャリアはアメリカの巨匠、エリア・カザン監督との契約から始まりました。彼は5人の俳優と契約していた。リップ・トーン、パット・ヒングル、ジェラルディン・ペイジ、若い僕、そしてリー・レミック。駆け出しの時、そしてこれは女優である娘ローラ(・ダーン)にも伝えたんだが、「うまくなる極意は何なの?」と聞かれ、まずは「すべてを体験すること」と答えました。ローラは「お母さんは絶対に許してくれない」と言っていましたが、母親の言うことは忘れろとも伝えました。俳優にとって一番の障壁はカメラを前にした時のプレッシャー。それを感じないようにならなければいけない。あとはリスクをとることも大事です。

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ブルース・ダーン
ブルース・ダーン
Bruce Dern

1936年6月4日、アメリカ・イリノイ州生まれ。1960年に映画デビュー。『華麗なるギャツビー』(74年)でゴールデン・グローブ賞助演男優賞ノミネート、『帰郷』(78年)ではアカデミー賞助演男優賞とゴールデン・グローブ賞助演男優賞にノミネートされる。『栄光の季節』(82年)でベルリン国際映画祭の銀熊賞(最優秀男優賞)を受賞。そして主演を務めた『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(13年)ではカンヌ国際映画祭で主演男優賞を、最年長の77歳で受賞。さらに同作でアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、全米映画俳優組合賞などの主演男優賞にノミネートされ、その年の映画賞を席巻した。近年では『ヘイトフル・エイト』(15年)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19年)などクエンティン・タランティーノ監督作の常連である傍ら、若手監督の長編デビュー作『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』(19年)にも出演するなど今なお精力的に活動している。