【映画興収レポート/8月】「ヤンキーものはローカルで強い」を実証した能年玲奈主演作

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「ヤンキーものはローカルで強い」を実証した、8月公開作・第4位の『ホットロード』
(C) 2014『ホットロード』製作委員会 (C) 紡木たく/集英社
「ヤンキーものはローカルで強い」を実証した、8月公開作・第4位の『ホットロード』
(C) 2014『ホットロード』製作委員会 (C) 紡木たく/集英社
「ヤンキーものはローカルで強い」を実証した、8月公開作・第4位の『ホットロード』
(C) 2014『ホットロード』製作委員会 (C) 紡木たく/集英社
『STAND BY ME ドラえもん』
(C) 2014「STAND BY ME ドラえもん」製作委員会

8月公開作の1位は『STAND BY ME ドラえもん』の46億円。『ドラえもん』は毎年春に公開されているが、今回は初の夏公開作品。しかも初めて3DCGで立体的に作られた。春作品の客層が子ども中心なのに対し、今回は大人が中心。宣伝でも、「いっしょに、ドラ泣きしません?」「すべての子ども経験者のみなさんへ」とコピーでうたい、大人をターゲットにしていた。人気の秘密は、厳選した7つの名作エピソードに新たな要素を加えて再構築した「泣ける」ストーリー。知っているようで知らないエピソードが大人世代の共感を呼んでいるようだ。

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ドラえもんはトヨタのCMに使用されたり、新名所「虎ノ門ヒルズ」のキャラクターとしてドラえもんに似た「トラのもん」が採用されている。大人が改めてドラえもんに注目する話題性もヒットを後押ししているようだ。

2位は『るろうに剣心/京都大火編』の38億円。前作の最終興収30.1億円を既に上回っており、9月13日公開の後編『伝説の最期編』へ弾みがつくだろう。主演の佐藤健を中心にバラエティ番組や情報番組に出演してPRにつとめたり、公開日の8月1日には日本テレビ系「金曜ロードSHOW」で前作が放映されたことで観客の注目度が高まった。またヒットを記念して9日の博多を皮切りに、広島、大阪、京都、名古屋、北海道、仙台、盛岡、埼玉、東京と、10都市を股にかけた計12回の舞台あいさつツアーを敢行したことで、公開後も順調に動員が伸びたようだ。

3位は『トランスフォーマー/ロストエイジ』の23億円。シリーズ4作目ということで米国では興収2億4400万ドルと前作の70%にまで下げているが、日本では公開後3週間の興収が88%で推移している。3D比率が高いのが特徴で、オープニング時は興収全体の71%を記録。IMAX 3Dも好評で、オープニング興収は『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』を上回り新記録となった。主人公の娘の恋人役を演じる新星ジャック・レイナーが公開10日前に来日して東京・日本橋で“打ち水”イベントを実施。その後、ものまねメイクで人気のざわちんと南明奈を起用したイベントや、公開直後にはダチョウ倶楽部を起用したイベントを実施するなど、話題性を途切らせなかったことが動員を後押ししているようだ。

4位は『ホットロード』の11億円。能年玲奈が『あまちゃん』以来、初めて出演する映画ということで注目を集め、メディアが数多く取り上げたことで話題性が高まったようだ。配給元の松竹によると、地方や郊外のローカルの興収比率が79%と高い。映画界では「ヤンキーものはローカルで強い」と言われており、改めて実証した形だ。

なお、7月公開作を含めた夏映画のランキングは以下の通り。
1位:『STAND BY ME ドラえもん』(8月24日時点の興収は『マレフィセント』を下回っているが、勢いがあるので最終的に上回るのは間違いない)
2位:『マレフィセント』
3位:『るろうに剣心/京都大火編』
4位:『ポケモン・ザ・ムービーXY』『思い出のマーニー』『GODZILLA』『トランスフォーマー』。接戦となっており、どの作品が4位になるかは現時点では判断できない

映画関係者の間ではスタジオジブリの新作『思い出のマーニー』や、生誕60周年記念となる『GODZILLA』の期待が高かった。だが、蓋を開けてみれば大人に受けた『ドラえもん』や女性に受けた『マレフィセント』が夏興行を制する形となった。(文:相良智弘/フリーライター)

[8月公開作ランキング ]
1位『STAND BY ME ドラえもん』46億
2位『るろうに剣心/京都大火編』38億
3位『トランスフォーマー/ロストエイジ』23億
4位『ホットロード』11億
5位『宇宙兄弟#0』3億
8月24日時点。ムビコレ調べ

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