ホームシアターの基本/センタースピーカーは必要か!?

#アンドレイ・ズビャギンツェフ#センタースピーカー#ホームシアター#ライフスタイル

センタースピーカー
英国モニターオーディオ Bronze 6Gシリーズ

ホームシアターでサラウンド音声という場合、よく5.1 チャンネルだとか、センタースピーカーとサブウーファーが必要だとか言われるが、果たしてそうなのか? その役割とは?? 今回はこのセンタースピーカーの意義について考える。

・大画面なら迫力のサウンドを。ホームシアターにオススメのスピーカーの選び方

オーディオの基本はステレオ

リビングのテレビやスクリーンで映画を楽しむホームシアターの醍醐味は、映像の迫力に負けない音の迫力にある。音は映像の添え物じゃない!と当サイト「ムビコレ」の「映画を聴く」でも強調してきた。

ところが、昨今の薄型テレビに内蔵された小さなスピーカーでは、劇場のような映画らしさを堪能できない。

そこで、きちんとしたスピーカーを別に用意すべきだが、いきなりサラウンドではなく、まずは2本のスピーカーでしっかり鳴らすことから考えるべきだ。なぜなら、現在多くのテレビ放送や動画の配信は、左右2本で鳴らす「ステレオ」放送が多いからだ。

サラウンド音声は映画のための仕様

一方、映画などでDVDやブルーレイディスクなどを再生すると、5.1チャンネルといったサラウンド音声が収録されているものが多い。その場合でも通常は2チャンネル音声も収録されている。にもかかわらず、なぜわざわざサラウンド音声を収録しているのか?

センタースピーカー

サラウンドの基本である5.1チャンネルとは、左右2本に加え、センタースピーカー1本、背後の左右に配置するリアスピーカー2本で作る水平方向のサラウンドに、「0.1チャンネル」で表記される重低音を担当する1本で構成する。最近ではこれに天井に2本追加するなどして「5.1.2」というように、ドルビーアトモスをはじめとする縦方向の立体音場を再生するものもある。

これらは、多くの観客に満遍なく音を届けなければならない映画館での再生を想定した音声仕様がベースになっている。この映画館での体験を家庭でも取り入れようと生まれたのがホームシアターだったので、この映画仕様に準拠しているというわけだ。

映画を見ないなら必要ない?

では、映画を見ないのなら、センターは不要なのだろうか?

確かに、映画作品を本来収録された仕様通りのチャンネル数で再生するためにセンタースピーカーやサブウーファーが必要だとしても、大半がステレオであるテレビ放送を使う分には、必須とは言えないだろう。

それでもなお、センタースピーカーを設置する意味はある。

たとえば横長のソファで家族みんなで大画面を楽しむ場合。仮にステレオ再生の2本だけの場合は、左右どちらかに片寄って座る人は、近い方のスピーカーからの音が耳に早く届くため、そちらに音も寄って聞こえてしまう。

しかしセンタースピーカーがあれば、たとえ中心に座っていない人でも、画面の中心から発せられるべき音が画面から来ているように聞こえる。

なお、もともとの音声がステレオの番組であっても、AVアンプが内蔵する音像処理回路を活用することによって、自動的にセンタースピーカーにも音を自然に割り振ることができる。

つまりセンタースピーカーは、映画を劇場で見るときのように収録されたまま正確に再生したい場合のみならず、リビングなどで多人数が横並びに鑑賞してもみんなが違和感なく楽しめるようにする効果があるということだ。

どう選び、どう置くか?

では、センタースピーカーにはどんなものを選べば良いのだろうか?

前提として、ディスク等に収録された音声は、左右とセンターの3チャンネルを同じスピーカーで再生することを前提に収録されている。

したがって、センターにも左右と同じスピーカーを当てるのが理想だ。ところが、センタースピーカーに左右と同じものを揃えて配置すると、画面に被ってしまう。

実は映画館では、スクリーンに細かい多数の穴が開いた「サウンドスクリーン」を採用しており、その裏にフロントスピーカーを並べることで、画面の中心から台詞が聞こえるようにデザインされている。

しかし、これを家庭で実践するのはなかなか難しい。現在のテレビではほぼ不可能だ。

そこで、サラウンドでの使用も念頭に開発されたセンタースピーカーが登場する。これは、左右の縦置きと同じようなユニット構成でありながら、横長に置くタイプがラインナップされており、これをテレビの画面下に配置すればいい。

その場合、画面の映像と音の移動ができるだけ一致するよう、画面近くに配置するべきだ。本来、人間の耳は左右についているから、音の上下方向にはさほど敏感ではない筈。しかし、床近くに置いてしまうと、床からの反射で音質が変わるため、脳が下から聞こえる違う音だと記憶してしまう。その違和感に取り憑かれると、なかなか取り除くのが難しいからだ。

アノ人の生々しい声を聞きたいなら

このように、映画の台詞を中心に、もともと入っているセンターチャンネルの音をきちんと聞きたいというほかに、サービスエリアを広げるためにも活躍するセンタースピーカーという存在。

もっとも、センタースピーカーがあることで、ハッとする瞬間が他にもある。音楽ライブのDVDでも稀に、センターチャンネルにだけヴォーカルの音声が入っている場合だ。

そんなときは、画面にヴォーカリストがアップになることもあって、まるで目の前に立って歌っているかのような生々しさとなる。実際のコンサートではステージの遙か遠くにいて、声も会場の騒音にかき消されるが、ホームシアターならこの居場所が自分だけの特等席になる。

マライア・キャリー

ヴォーカルがセンターのみに割り当てられマライア・キャリーの声が生々しい作品

音楽ライブのホールでの開催が難しい昨今、仮に参加できても歓声すら上げられない。ならば、最近増えてきたリモート鑑賞に参加して、誰に気兼ねすることもなく好きな歌手の声を楽しむためにセンタースピーカー探しをするのもいいかもしれない。スピーカーブランドとそれぞれの傾向については、「大画面なら迫力のサウンドを。ホームシアターにオススメのスピーカーの選び方」を参考に、ぜひお店で聞いて吟味して欲しい。(文:fy7d)