『男女残酷物語/サソリ決戦』
『男女残酷物語/サソリ決戦』
『男女残酷物語/サソリ決戦』
『男女残酷物語/サソリ決戦』

誰も知らない、誰も見たことがない、55年前の新作イタリア映画

誰も知らない、誰も観たことがない、1969年のイタリア製ウルトラ・ポップ・アヴァンギャルド・セックス・スリラー映画『男女残酷物語/サソリ決戦』。本作より残酷予告編と場面写真を紹介する。

・快楽の沼へと落ちていく女子大生、エロティックな愛に世の女性たちが騒然!

・[動画]こんなの、はじめて。裏の顔を持つ男と想像を超えた女の鮮烈対決!『男女残酷物語/サソリ決戦』予告編

精巧な拷問技術の達人という裏の顔を持つ慈善財団大幹部セイヤーは、ジャーナリストのメアリーを拉致監禁、ハイテク装備満載の秘密のアジトで、想像を絶する肉体的、精神的凌辱の限りを尽くす。だが、言葉にできない恥辱を受けても微笑むメアリーはセイヤーの想像を遥かに超えていた。弱音を吐き始めるセイヤー。いま、洗練と野蛮が表裏一体の、性の対決がはじまる。

本作は、終わりなき男女の対決を描き、『華麗なる殺人』(65年)『バーバレラ』(67年)『女性上位時代』(68年)といった時代を象徴する作品に匹敵する内容ながらも50年以上もの間埋もれ、海外でようやく近年その存在と価値を発見された作品だ。日本ではほとんど誰にも知られることなく、知られていないがゆえ誰にも待たれることもなく、存在自体が確認されていなかった。この上映で初めて、我々はこの傑作を発見することとなる。

音楽は『ベニスの愛』(70年)『夜行性情欲魔』(71年)『血みどろの入江』(71年)等を手掛けるイタリア映画音楽の巨匠ステルヴィオ・チプリアーニが担当。フランスの芸術家ニキ・ド・サンファルによる作品「ホン」のレプリカが劇中に登場することから、その邦題のインパクトのみならず芸術点の高さからも各方面をざわつかせている。

今回紹介するのは残酷予告だ。不気味な笑顔を湛えた銅像から始まり、ジャーナリストのメアリーと、慈善財団大幹部のセイヤーの出会いが描かれる。裏の顔を持っていたセイヤーは、メアリーを秘密のアジトで監禁。ハイテク設備を用いられながら肉体的、精神的凌辱を受けるメアリーだったが、彼女の行動や提案は想像を超えており、2人の関係性は思わぬ展開へ。謎に満ちながら高い芸術性を持ったシーンの連続に目を奪われていると、セイヤーは巨大女性像に向かっていき…。

世紀の男女対決は、いったいどのような結果を辿るのか。映画のテーマである男女間の対決は、古から世界中で平行線のまま続いてきた残酷な図式であり、ヴィヴィッドかつシュールに具現化された本編を凝縮した予告編は、まさしく残酷の極みでありながら、恍惚感に満ちている。

この2人を演じるのは、『黄金の七人』(65年)『女性上位時代』(68年)『愛の嵐』(73年)の名優フィリップ・ルロワと、マリオ・バーヴァやルチオ・フルチ作品にも出演したドイツの女優ダグマー・ラッサンダー。めくるめく2人の表情と共に聞こえてくるのは、ステルヴィオ・チプリアーニによる華麗なるサウンドトラック。幻想的な美しさの「MARY’S THEME」から始まり、西部劇での決闘をまざまざと想起させるモリコーネの如き重厚な「FIGHT OF LOVE」、そして歌手オリンピアによる凛々しいヴォーカルがメアリーおよび映画全体の意思を表明するかのような一体感を持つグルーヴィーな「FEMINA RIDENS – CANTATA」が使用されており、これらを含めたゴージャスな楽曲は映画本編で存分に堪能できる。

あわせて紹介する場面写真は、2人の出会いを切り取ったシーンや、セイヤーが男性優位を誇りげに誇示する様子から、メアリーに似た女性がスペーシーな空間で瞑想する場面、想像を超えた女メアリーのミステリアスな表情の4点。どこに転ぶかまったく予測不可能な男女の攻防戦と、本作でしか味わえないはじめての衝撃を伺い知れる瞬間の数々だ。

また、鮮烈なインパクトを持ちながらも、謎に包まれていた本作の邦題の一部である「サソリ決戦」のサソリの秘密もはじめて解禁された。サソリは、鋭い鋏のような触肢と、最後尾に毒針を持ち背後から刺す節足動物。交尾の際、絶頂に達する瞬間にメスがオスを食べる。また、『男女残酷物語/サソリ決戦』を象徴する巨大像「ホン」の作者である芸術家ニキ・ド・サンファル自身はサソリ座であり、家父長制社会によるシステムの欠陥を見抜き暴くというその性質を生涯誇りとした。

物語の普遍性もさることながら、美術面、音楽面のどれを取っても全編を通して隙がない本作。観ているうちに、こんなにも途方のない傑作が昨日までまったく存在を知られていなかったことに、そして華麗なる結末に連続で衝撃を受け、打ちのめされるであろう。

『男女残酷物語/サソリ決戦』は6月7日より全国順次公開。

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