飛鳥凛と山口香緒里の激しい絡みを彩る極甘な響きは想像以上!

#飛鳥凛#映画を聴く

『ホワイトリリー』全国公開中
(C) 2016 日活
『ホワイトリリー』全国公開中
(C) 2016 日活

…前編「飛鳥凛の堂々たる脱ぎっぷりに釘付け〜」より続く

【映画を聴く】『ホワイトリリー』/後編
これぞロマンポルノというサウンドトラックにも注目

本作『ホワイトリリー』の音楽は、テーマに据えられたレズビアンの世界をメロウに演出する室内楽で固められている。劇伴を担当する坂本秀一は、山戸結希監督『溺れるナイフ』のほか、中田監督の前作である『鎌倉にて』や松本人志監督『しんぼる』、井筒和幸監督『ヒーローショー』なども手がけている作曲家/編曲家。先月取り上げた園子温監督『ANTIPORNO アンチポルノ』の秋月須清と同じ音楽制作チーム、ライトトラックスに所属している。

女の生々しさ描いた作品で新境地!『ホワイトリリー』飛鳥凛インタビュー

音楽が使われるシーンはそれほど多くないが、そのひとつひとつが見る者に鮮烈なインパクトを与える。特に女性コーラスを使ったエンディングテーマは、二人の女の出会いから別れまでをメロドラマ的に締めくくる、これぞロマンポルノという極甘な弦楽曲だ。

今回のリブート・プロジェクトの第1弾である行定勲監督の『ジムノペディに乱れる』は、そのタイトルからもわかるように、エリック・サティ作の有名なピアノ曲をドラマの中心に据えていた。リブートの5作品に限らず、もともと音楽に潤沢な予算を割くことができなかったロマンポルノの諸作では、時に既存の楽曲に新たな解釈を持たせる場として、無名のミュージシャンの飛躍の場として、あるいはベテランミュージシャンの実験の場としてサウンドトラックが絶妙に機能したケースが少なくない。

音楽に限らず、さまざまな制約の中でたくさんの監督がしのぎを削った日活ロマンポルノ。リブート・プロジェクトはひとまず本作で終わりだが、各作品の想像以上の充実ぶりに驚いた映画ファンは多いはず。また折に触れて復活してほしい好企画だ。(文:伊藤隆剛/ライター)

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。