【興行トレンド】続々と製作、アメコミヒーロー映画にみるハリウッドのシリーズ化戦略

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『X-MEN:フューチャー&パスト』
(C) 2014 Twentieth Century Fox
『X-MEN:フューチャー&パスト』
(C) 2014 Twentieth Century Fox

「リブート」「プリクエル」「クロスオーバー」って一体何のこと? 最近よく目にするこれらのキーワードをもとに、『X-MEN』や『アベンジャーズ』などハリウッドのシリーズ化戦略を解説する。

米国で5月23日、日本で30日から公開される『X-MEN:フューチャー&パスト』。特殊な能力を持つミュータントが悪と戦うアメコミヒーロー映画『X-MEN』の新作は、世界を救うためウルヴァリンが過去へとタイムトリップする。『X-MEN』はシリーズ化戦略がうまく行っている好例だ。

オリジナルシリーズは2000〜06年にかけて3作が作られ、完結。その後は人気キャラクターのウルヴァリンを主人公にした「スピンオフ」(シリーズの脇役を主人公にした作品)と、プロフェッサーXとマグニートーの若き日を描く「プリクエル」(シリーズの前日談を描く作品)が作られている。

新作『X-MEN:フューチャー&パスト』はプリクエル第2弾で、オリジナル版のキャストが集結する。16年にはプリクエル第3弾『アポカリプス』(原題)、17年にはウルヴァリンの新作を公開すると発表。また『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』に出演したガンビットを『アポカリプス』に再登場させ、その後彼を主役にすえたスピンオフも企画されている。オリジナルシリーズが終わっても、スピンオフとプリクエルで人気を維持している。

近年、ハリウッドのシリーズ化戦略で多く見られるのが「リブート」だ。シリーズ作品をキャストや監督を代えて仕切り直すことで、「リメイク」とは異なり、新しいシリーズ化を視野に入れて再始動する。クリストファー・ノーラン監督による新『バットマン』である『ダークナイト』シリーズ、現在公開中の『アメイジング・スパイダーマン』シリーズがリブートにあたる。

失敗例もあり、2000年公開の『スーパーマン リターンズ』が該当する。その後ザック・スナイダー監督による新『スーパーマン』である『マン・オブ・スティール』が成功し、16年に2作目『スーパーマンVSバットマン』(仮題)が公開予定だ。05年〜07年にかけて2作が公開された『ファンタスティック・フォー』も、15年にリブート版が公開される予定だ。

一方、「クロスオーバー」(異なる作品の主人公たちがお互いの作品に特別出演したり、1つの作品に勢揃いすること)を生み出したのがマーベルの『アベンジャーズ』だ。ヒーローが集合する『アベンジャーズ』の製作を前提に、アイアンマン、ハルク、ソー、キャプテン・アメリカと個別作品を作った。各作品の最後には『アベンジャーズ』につながる場面を挿入し、一体感を持たせた。
『アベンジャーズ』2作目である『アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン』(原題)を15年に公開する予定で、今年は『マイティ・ソー/ダークワールド』『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』が公開済み。そして『ガーディアン・オブ・ギャラクシー』(米国8月、日本9月公開)が控えている。

マーベルの『アベンジャーズ』成功に刺激を受けて、ライバル出版社のDCコミックもクロスオーバーを狙っている。『スーパーマンVSバットマン』にワンダーウーマンも登場させ、18年公開に向けてヒーローが集合する『ジャスティス・リーグ』を準備している。また『X-MEN:フューチャー&パスト』はプリクエルだが、オリジナル版のキャストが集結する意味では「クロスオーバー」ともいえる。

登場するキャラクターが多いアメコミヒーロー映画は、スピンオフ、プリクエル、クロスオーバーと様々な手法を用いて製作できる。ハリウッドのシリーズ化戦略の格好の“ショーケース”といえる。(文:相良智弘/フリーライター)

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