1945年終戦直後描く『戦争と女の顔』7/15公開決定

カンヌ国際映画祭で監督賞・国際批評家連盟賞をW受賞し、アカデミー賞国際長編映画賞ロシア代表となった『Beanpole』(原題)の邦題が『戦争と女の顔』に決定、7月15日より全国で順次公開される。このたび、ロシア出身カンテミール・バラーゴフ監督とウクライナ出身のプロデューサー、アレクサンドル・ロドニャンスキーが反戦メッセージを寄せた。

「戦争より悪は存在しない」

巨匠アレクサンドル・ソクーロフの下に学んだロシアのカバルダ・バルカル共和国出身のバラーゴフ監督は、ロシアによるウクライナ侵攻によって国外へ脱出。下記のようなメッセージを寄せた。

「戦争と、それを招いたロシア政府の政治的決断に強く反対している。だから私はロシアを去らなければならないと感じた。この戦争は、ただ普通に人生を送りたい何百万という人々にとっての悲劇だ。彼らの多くにとっては、この戦争を乗り越えること、これからの人生を送ることが難しくなるかもしれない。ましてや、不可能になるかもしれない。これは『Beanpole』で描かれていることと一緒だ。戦争より悪は存在しない」

「この恥は子どもや孫の代にも残る」

また、ウクライナ出身のプロデューサーで息子がゼレンスキー大統領の経済顧問をしているロドニャンスキーは、ロシア政府から名指しで彼の作品のロシア国内放映禁止となり、SNSで反戦のコメントを連日投稿している。

「私は今までロシア大統領選で投票をしたことがないが(ウクライナのパスポートを持っているので)、耐え難いほど恥じている。そして、とてつもなく深い悲しみにいる。戦争に言い訳などはない。どんな主張があったとしても。私はよく覚えている。ソ連が私たちにアフガニスタン戦争の絶対的な必要性を説明した時のことを。それが悲劇的な間違いだったと認めるまで10年の月日を費やし、15,000人のソ連兵士と100万人近くのアフガニスタン人の命を犠牲にしたことも。今日、ベトナム、イラク、アフガニスタン戦争など自国の戦争について言い訳できるアメリカ人はほとんどいない。そして、またしてもこの戦争は痛ましい過ちだ。国家の経済が崩壊し、私たちの国が世界的な孤立の中停滞し、かつてないテクノロジーの格差が深まるから、という理由ではなく、この過ちにおける恥は消え去ることがないからだ。これは私たちの子どもや孫の代にも残る。私たちは黙ってはいられない。戦争に『NO』を」

終戦後もPTSD抱えた女性2人の戦い描く

本作品は、日本でも話題となったノーベル文学賞受賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの証言集「戦争は女の顔をしていない」を原案に、戦後PTSDを抱えた元女性兵士の生と死の戦いを描く。

1945年、終戦直後のレニングラード(現サンクトペテルブルグ)。荒廃した街の病院で、PTSDを抱えながら働く看護師のイーヤ(ヴィクトリア・ミロシニチェンコ)は、ある日後遺症の発作のせいで、面倒をみていた子どもを死なせてしまう。そこに子どもの本当の母で戦友のマーシャ(ヴァシリサ・ペレリギナ)が戦地から帰還する。彼女もまた後遺症を抱え、心身ともにボロボロの2人の元女性兵士は、なんとか自分たちの生活を再建するための闘いに意味と希望を見いだすが……。

主演の2人は、新人のヴィクトリア・ミロシニチェンコとヴァシリサ・ペレリギナが見事に複雑な心理状態を演じきった。

終戦から77年。これは戦争を知らない世代のスタッフ、キャストらが今も起こっている戦争の恐ろしさを伝える作品である。

『戦争と女の顔』は、7月15日より全国で順次公開される。