役者&ミュージシャンの最高峰!? 福山雅治の音楽について考える/前編

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福山雅治
福山雅治

先月、当コーナーに「話題作が続々公開! 音楽と映画を自由に行き来する新しい世代のミュージシャンたち」という記事を書かせてもらった。これはタイトルの通り、星野源(SAKE ROCK)や野田洋次郎(RADWIMPS)、シシド・カフカ、金子ノブアキ(RIZE)など、最近映画やドラマに出演した比較的若い世代のミュージシャンを紹介したものだったが、今回は彼らのもう一世代上にあたり、“役者&ミュージシャンと言えば……”くらいのビッグ・ネーム、福山雅治について触れたいと思う。

【映画を聴く】話題作が続々公開! 音楽と映画を自由に行き来する新世代のミュージシャンたち

たとえば同じくらいの世代の織田裕二や江口洋介、吉岡秀隆、少し下の世代の反町隆史や藤木直人、いしだ壱成、山本耕史など、役者とミュージシャンを両立している(していた)人はけっこういて、この人たちはちょっとした揶揄とやっかみを込めて“役者ロック”なんて呼ばれることがある。福山雅治がこういった“役者ロック”勢と一線を画しているのは、役者である前にミュージシャンであるという点にある。Wikipediaなどでプロフィールを見てみると、さきほど挙げた全員の職業欄が“俳優、歌手(もしくはミュージシャン)”となっているのに対して、福山は“シンガー・ソングライター、俳優”となっており、ミュージシャンとしての活動に主軸があることは明らかだ。

ただ、そんな彼の立ち位置はファンにとってはどうでもいいことだろうし、実際に世に出るきっかけも役者としての活動が先だった。ミュージシャンを志して長崎から18歳で上京するも、あの端正な顔立ちを映画/ドラマ界が放っておくわけはなく、上京後間もなく映画のオーディションに合格。1988年に富田靖子主演の映画『ほんの5g』で役者デビューを果たしている。

ミュージシャンとしてのデビュー曲「追憶の雨の中」のリリースが1990年と後手に回ってしまったことや、93年のドラマ『ひとつ屋根の下』の大ヒットなどが相まって、90年代前半の福山は“役者もやっているミュージシャン”というよりは“音楽もやっている役者”として認知されがちだったが、本人はあくまでもミュージシャン、それも自作自演を基本としたシンガー・ソングライターとしての意識が強かったようだ。『ほんの5g』の後も映画/ドラマのオファーはあったが、音楽活動を優先させるためにそれを断っていたという。

そういう意味で彼の活動は、デビュー曲の「モニカ」と前後して映画『すかんぴんウォーク』でアイドル的な人気を得た吉川晃司や、ドラマ『相棒』への抜擢で一躍お茶の間でも知られるようになった及川光博らに通じるところがあるが、音楽と役者それぞれのフィールドでの成功の規模を考えると、やはり彼のマルチぶりは圧倒的。近年は写真家としての活動もさらに活発化している。(後編へ続く…)(文:伊藤隆剛/ライター)

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。

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