『ボヘミアン・ラプソディ』のアカデミー賞ノミネート数5部門に止まった4つの理由

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『ボヘミアン・ラプソディ』
(C) 2018 Twentieth Century Fox
『ボヘミアン・ラプソディ』
(C) 2018 Twentieth Century Fox

日本で大ヒット中の『ボヘミアン・ラプソディ』はゴールデングローブ賞でコメディ・ミュージカル部門の作品賞、主演男優賞を受賞。アカデミー賞でも台風の目となるか期待されたが、作品賞、主演男優賞など5部門でのノミネートにとどまった。作品賞候補作8本の中で最も少ないノミネート数だったのには4つの理由が考えられる。

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1つめは監督不在であること。『ボヘミアン』のブライアン・シンガー監督は撮影を何度か休んだことで映画会社から解雇され、別の監督が残りの撮影と仕上げを行った。契約上、シンガーは監督にクレジットされてはいるが、アカデミー会員はシンガー監督の力量を認めておらず、当然監督部門のノミネートから外れた。

ちなみに、主演のラミ・マレックはゴールデングローブ賞を受賞した際のスピーチで「10年以上もこの物語を実現するように働き続けてくれたグレアム・キングとデニス・オサリヴァンに感謝を申し上げます。我々を信じてくれた20世紀フォックスとニュー・リージェンシー・プロダクションズにも感謝を申し上げます」と、プロデューサー陣と映画会社に謝意を述べたが、監督には触れていない。

2つめは俳優陣のバランスが悪いこと。『ボヘミアン』はフレディ・マーキュリーにスポットを当てた物語なので、主演男優のラミ・マレックだけがノミネートされた。一方、『女王陛下のお気に入り』『アリー/スター誕生』『バイス』はそれぞれ3人の俳優がノミネートされた。主役の他、脇役も存在感のある演技を見せたことで俳優陣のバランスが良くなり、演技部門で3つのノミネートを稼いだ。

3つめは映画オリジナルの楽曲が不在であること。主題歌賞の候補は全て映画オリジナル。クイーンの楽曲は対象にならず、ノミネートされなかった。

4つめはクイーンがイギリスのバンドであること。アメリカ人が中心のアカデミー会員はクイーンへの思い入れが弱く、ノミネートの結果に影響したのではないか。年配層が多いといわれるアカデミー会員は英国王室ものにはなじみがあり、しばしば作品賞候補になっている。『女王陛下〜』が10部門でノミネートされたのはその流れだろう。

なお、ゴールデングローブ賞はハリウッド外国人映画記者協会に所属する外国人記者90人が選ぶ。外国人の方がクイーンに思い入れが強かったと読み取れそうだ。(文:相良智弘/フリーライター)

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。