後編/圧倒的な存在感! デヴィッド・ボウイ絶頂期の妖しい魅力が炸裂

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『地球に落ちて来た男』
(C)1976 Studiocanal Films Ltd. All rights reserved
『地球に落ちて来た男』
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(…前編「ボウイの本格的映画デビュー作〜」より続く」

【映画を聴く】『地球に落ちてきた男』後編

映画の“パーツ”に徹した姿勢が
作品への貢献度を高めた

俳優としてのデヴィッド・ボウイのキャリアは、その音楽活動に比べるともちろんコンパクトなのだが、それでも優に20作を超える作品に出演している。『地球に落ちてきた男』以外で代表的なところでは、1983年の『ハンガー』『戦場のメリークリスマス』、85年の『眠れぬ夜のために』、86年の『ビギナーズ』『ラビリンス/魔王の迷宮』、88年の『最後の誘惑』、92年の『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』、96年の『バスキア』といった作品が挙げられる。

中でも大島渚監督『戦場のメリークリスマス』は、日本人にとって忘れられない作品に仕上がっている。後にそれぞれ監督、映画音楽家として世界に知られる存在となるビートたけしと坂本龍一が役者としてボウイと共演し、とりわけ坂本演じるヨノイ大尉の頬に彼がキスをするシーンは両者のファンに衝撃を与えた。ほかにも『ラビリンス』での魔王ジャレス役や『最後の誘惑』でイエス・キリストに十字架刑を言い渡すピラト総督役、『バスキア』のアンディ・ウォーホル役あたりは彼ならではの個性が効いており、作品への貢献度が高い。

出演作に主題歌や劇中歌を提供することはあるものの、腰を据えてサウンドトラックを担当したことはほとんどなく、役者としてのボウイは基本的に演技に集中することが特徴だ。

『地球に落ちてきた男』では当初、音楽も担当するつもりでいたらしいが、ニコラス・ローグ監督は役者としてのボウイにこだわり、音楽はママス&パパスのジョン・フィリップスに依頼しているし、『戦メリ』では直談判により坂本龍一が担当している。

ボウイと同じく今年急逝して世界中を悲しませたプリンスも一時期映画界に進出し、『パープル・レイン』『アンダー・ザ・チェリー・ムーン』『グラフィティ・ブリッジ』という3作で主演と音楽を担当。後の2作では監督も兼任したが、その評価が惨憺たるものだったことは知る人も多いだろう。あらゆる楽器を自在に弾きこなし、完全に自分ひとりのコントロール下で作品を完結させることができるプリンスが、音楽制作と同じ感覚で監督業に臨んだことは想像に難くない。

対してボウイは音楽制作においてトニー・ヴィスコンティやブライアン・イーノなど、つねに刺激的なコラボレーターと組むことで傑作をモノにしてきた人。映画では監督というコラボレーターを得て、一緒に作品と役柄を膨らませるとともに、自身はあくまで映画の“パーツ”であることに徹しているように思える。息子のダンカン・ジョーンズがミュージシャンではなく映画監督の道を選んだのは、そんな父とのコラボレーションを夢見ていたからだろうか。

アルバム『★(Blackstar)』がリリースされた1月8日、つまりボウイが亡くなる2日前、日本ではTHE YELLOW MONKEYの再結成が発表された。日本屈指のデヴィッド・ボウイ・フォロワーとして知られる彼らがボウイの亡くなる直前に再集結したことの意味はとても大きいし、ミュージシャンが映画に出ることが普通になった今だからこそ、その元祖であるデヴィッド・ボウイの圧倒的な存在感がクローズアップされるのも必然と言える。ボウイの影響力は、これからも新しい世代を巻き込みながら波及していくに違いない。(文:伊藤隆剛/ライター)

『地球に落ちて来た男』は全国順次公開中。

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。

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