ああ無観客! 8万人収容するための国立競技場建設で立ち退きを迫られた住民たちの悲哀

#ドキュメンタリー#五輪ファースト#大友良英#東京オリンピック#東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパート#無観客#緊急事態宣言#青山真也

(C)Shinya Aoyama
(C)Shinya Aoyama
(C)Shinya Aoyama

“五輪ファースト”が落とす影

東京オリンピック2020開催に伴う国立競技場建設のため取り壊された都営霞ヶ丘アパートの住民たちを追ったドキュメンタリー『東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート』が8月13日に公開される。このたび、予告編と著名人たちのコメントが公開された。

・半世紀以上にわたりオリンピックに翻弄された人々の叫び

1964年の東京オリンピック開発の一環として建てられた都営霞ヶ丘アパート。

予告動画は、「オリンピック(2020)やるのにこんな汚い都営住宅がいっぱいあったんではみっともないということで立て替えの話が出て」という元住民の説明からスタートする。

平均年齢65歳以上の住民の元に、2012年、一方的な移転の通達が届き、立ち退きを迫る。

パートナーに先立たれて単身で暮らす人や、障がいを持つ人など様々な住民たちの生活や、小さな商店街などささやかな日常を映し出す。

「ほんとうはここに残りたい」とこぼす90歳になる女性。「引っ越しも泣きたくなるよ」と嘆く人の様子には胸が詰まる(https://youtu.be/4NTouKIDYgM)。

その他の場面写真はコチラ!

 

徐々に消えていこうとする存在と、声

また、この度公開されたコメントは、以下の通り。

●ライターの武田砂鉄
“上が悪いのよ”住民の言葉が耳に残る。大切な場所を潰した“上”は、これを見て何を思うのだろう。やっぱり、見ようともしないのだろうか。

●住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人・稲葉剛
ずっと、そうだったのだ。コロナ禍が到来する何年も前から、五輪は、東京は、いのちを軽んじ、犠牲を強いてきたのだ。壊された団地は戻ってこないが、かき消された声に耳を傾けることは今からでもできる、ということをこの映画は教えてくれる。

●文筆家・俳優の睡蓮みどり
“感動”や“絆”が何かの犠牲の上にしか成り立たないのなら、そんなものは成立させなくていいと、私は思う。霞ヶ丘アパートは人間らしく生きるための場所だ。家だけでなく人間の尊厳を奪った罪はあまりに重い。

●ドラァグクイーン/美術家のヴィヴィアン佐藤
ストイックなカメラは決して国家の社会事業を糾弾しているだけではない。徐々に消えていこうとする存在の「不確かさ」を捉えていた。

大友良英「なんなんだこいつら! 腹立たしい」

本作品は、平均年齢65歳以上の住民たちが支え合いながら暮らしていた都営霞ヶ丘アパートが、国立競技場建設のため移転を強いられた14年から17年を記録したドキュメンタリー映画。

“絆”や“平和”を盾に、ささやかな人々の命や暮らしを犠牲にすることへの問題意識を訴えるのは、監督・撮影・編集の青山真也

音楽は、大友良英。ジャンルにこだわらない創作で、町ぐるみの音楽祭「音まち千住の縁」で千住フライングオーケストラを主宰したり、東日本大震災を受けてプロジェクトFUKUSHIMA!を立ち上げて注目を浴びる。NHKの『あまちゃん』や『いだてん』の音楽も担当した。

大友は7月8日の20時、自身のTwitterに「なんなんだこいつら!腹立たしい」と投稿している。

『東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート』は、8月13日に公開される。