岡本多緒が語るヴィルジニー・エフィラとの日々 『急に具合が悪くなる』舞台挨拶
#岡本多緒#急に具合が悪くなる#濱口竜介#長塚京三#黒崎煌代
言語の壁を越えた共演秘話と深い信頼関係を明かす
映画『急に具合が悪くなる』の公開記念舞台挨拶が6月20日に開催され、岡本多緒、長塚京三、黒崎煌代、濱口竜介監督が登壇した。第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、ヴィルジニー・エフィラと岡本がそろって最優秀女優賞を受賞する快挙を成し遂げた本作。会場では満員の観客による温かいスタンディングオベーションに迎えられ、キャストと監督が撮影の舞台裏やエフィラへの思いなどをたっぷりと語り合った。
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盛大な拍手と歓声に迎えられ、森崎真理役の岡本は「早い時間からお越しいただき本当にありがとうございます」と感謝を述べ、「見たあとの余韻があるとおっしゃる方がいらっしゃるので、なるべくそれを邪魔しないかたちで少しお話しさせていただければ」と挨拶した。
清宮吾朗役の長塚も「観客の顔を見て安心した」とほほ笑み、「今まで見たこともないような感覚の映画だなと思って感動しました。皆さんもそうであったらいいなと思います」と作品への自信をのぞかせた。

また、窪寺智樹役の黒崎は、日本でスタンディングオベーションを受けるのは初めての経験だったと明かし、「カンヌのときの思い出がグッとよみがえってきて嬉しかったです。あと10分ぐらいやってくれても(笑)」とジョークを交えて会場を和ませた。
濱口監督も、朝9時半からの上映にもかかわらず集まった観客に感謝しつつ、「作った人間が言うのもなんですが、本当に余韻がある映画なんではないかと思っておりますので、それを壊さぬように。一方で『意外と楽しかったんですよ』ということも含めてお伝えしていけたら」と語った。
公開初日を迎え、周囲からどのような反響が届いているかという話題になると、それぞれが思いを明かした。
岡本は、高校時代の恩師から「見てきました」と連絡があったことを紹介し、「お母様が認知症を患っていらっしゃるということで、『もう少し歩かせた方が良かったかなぁ』など、ご自身のすごく身近な話とリンクさせて観ていただいたみたいで、私も胸熱になりました」と語った。
長塚は「ご近所の方たちが、今までとは違った目で見てくれています(笑)。とってもヒットしているということなんでしょうし、大きな期待があると思いますね」と笑顔を見せた。

一方、黒崎は寄せられた感想について、「『境界線って一体何なんだろうね』という、まだ考え中みたいな感想がよく寄せられていて。それはとてもこの映画的で、素敵なことなんじゃないかなと嬉しい思いで見ています」と真摯に語った。
濱口監督は「母が『緊張感が続いてよかった』と一言感想をくれて、ありがたいことだなと(笑)」と明かし、会場の笑いを誘った。
多言語が飛び交う本作ならではの苦労や、フランスでの撮影を振り返るトークでは、時間をかけた役作りや共演者との絆が浮かび上がった。
岡本は、濱口監督から撮影終盤に体重を絞るようリクエストされたことを告白。「『人間って少し食べないだけでエネルギーが湧かないんだな』と体感できてありがたかったんですけど、『絞って』と言った監督が横で美味しそうなものを食べてたりして(笑)」と裏話を披露した。
さらに、ヴィルジニー・エフィラとともに言語の壁を乗り越えた日々を振り返り、「NGを出してしまったりすると、私の腕に噛みついてきたりするヴィルジニーがメイキング映像に映っていて。彼女だから一緒に乗り越えられたなと思いますし、今日いないのがすごく不思議で、寂しいです」と、苦楽をともにした共演者への思いを語った。

長塚は、そんな岡本とヴィルジニーの努力を間近で見ていたという。「ものすごく大変だったと思うんです。それを決して表に出さずに頑張ってこられて。最優秀女優賞の授賞式を見てるとき、多緒さんがちょっと涙をこぼされたのを見て、不覚にも僕も一緒に『あぁ、大変だったな、よかったな』と泣いてしまいました」と、カンヌでの受賞発表時の感動を振り返った。
また、フランスの録音スタッフから監督を通じてメッセージを受け取ったことも明かし、「『多緒さん、僕、黒崎くんを含めた日本の俳優のパフォーマンスに大変感動した』と。国籍や言葉の違いに関係なく、僕たちのお芝居が相手に届いたんだなと、とても嬉しく思いました」と喜びを語った。
一方、言葉を発しない難役を演じた黒崎は、「苦労はしてないです、ずっと楽しかったです」と笑顔を見せつつも、トラムと並走するシーンには苦労したと振り返った。「あのシーンが初日だったんですけど、回数も限られていた中でやらないといけなくて必死でした。ゆっくり走ってくれる運転手さんもいれば、そうでもない人もいて。見知らぬ、喋ったこともない運転手さんと息を合わせるというのは大変でしたね(笑)」と、現場ならではのエピソードを明かした。

舞台挨拶の最後には、登壇者たちが観客へ向けてメッセージを送った。
黒崎は「何度見ても面白い作品だと思うので、ぜひもう一度見てください」とアピール。長塚は「皆のために最善を尽くすという非常にいい空気の中で仕事ができました。ヴィルジニーが今ここにいないんですけれども、僕たちのこと、どうか忘れないでください。何かにつけて思い出してください」と呼びかけた。
岡本は「私にとって本当に人生を変える1本になっていて、自分が出ていることを一旦置いておいて『こんなに素晴らしい映画があるのか』と思っております」と作品への深い愛情を語り、デザイン性の高いパンフレットや原作本もぜひ手に取ってほしいとPRした。
最後に濱口監督は、「ヴィルジニーがいないのは本当に残念ですが、今日のことを報告したいと思っています」と語り、「もし今日、まだ『言葉にならない』っていう人がいたら、ぜひそれを大事に抱えて帰っていただけますか」と観客にメッセージを送った。
そして、「俳優、スタッフ、宣伝スタッフの皆さんに至るまで、こんなに幸福に仕事ができたことがあっただろうかというぐらい、とても幸せな気持ちで過ごさせていただきました」と感謝の言葉で締めくくり、舞台挨拶は大きな拍手に包まれながら幕を閉じた。
『急に具合が悪くなる』は現在公開中。
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