『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』前原滉インタビュー

対岸のよく知らない町と今日も戦争。ユーモアと風刺に満ちた兵隊たちの毎日

#きまじめ楽隊のぼんやり戦争#前原滉

前原滉

2年経った今でも、露木を演じながら感じた景色をハッキリと覚えています

『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』
2021年3月26日よりテアトル新宿ほか全国順次公開
(C)2020「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」フィルムプロジェクト

津平町は一本の川を隔てた太原町と、朝9時から夕方5時まで規則正しく戦争をしている。住民に川の向こう側をよく知る人はいない。マジメな兵隊・露木はある日、音楽隊に異動を命じられる。偶然出会った向こう岸から聞こえてくる音楽に、なぜだか心惹かれていく露木。そんな中、町では「新部隊と新兵器がやってくる」との噂が広まり……。

池田暁監督が描く、オフビートな笑いと独特の世界観に引き込まれる『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』。本作で映画初主演を飾ったのは、TVドラマ『あなたの番です』や映画『あゝ、荒野』など数々の話題作への出演が続く前原滉。ドライにさえ見えるマジメな兵隊・露木の心の機微を丁寧に表現し、からくり人形のようなキャラクターを見事に演じ切った。前原に初主演作に寄せる思いを聞いた。

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──俳優を目指したきっかけは何だったのでしょうか?

前原:小さい頃の夢はサッカー選手でした。小学生の時、近所の友だちに誘われてサッカーを始めて、中学ではサッカー部の部長を務めました。小学生の時のサッカー仲間と別の中学に通っていたので、その子とサッカーをしようと、高校はサッカー強豪校に入りましたが、坊主にしなきゃいけない規則があり、それが嫌でサッカーはやめてしまいました。ただ、その友だちが高校3年生の時に全国大会に出場していたのを見た時は、後悔しましたね。
その頃、母に連れられて舞台を見に行き、俳優の仕事に興味を持ちはじめました。佐藤隆太さんや忍成修吾さんなどが出演されていたのですが、とにかくキャストのみなさんが楽しそうだったんです。その姿に憧れて、俳優に挑戦しようと思ったんですが、ちょうど震災があり、1年間仙台から東京の養成所に通うことにしました。その後、2012年に上京して、4年間養成所にいましたね。

池田暁

『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』撮影中の様子

──俳優として転機となった作品は?

前原:『何者』(16年)や『あゝ、荒野』(17年)、連続テレビ小説『まんぷく』(18年)、『あなたの番です』(19年)……どれか1つが転機になった訳ではなく、積み重ねが今に繋がっていると思います。朝ドラに出演したことで、地元の反応は変わりましたね。『あゝ、荒野』は、ヒロインのオーディションの相手役として呼ばれて、結果的に川崎役をいただくことになりました。『あゝ、荒野』は業界内で知ってもらえるきっかけにもなりましたし、自分にとっても大きなチャンスだったと思います。

──本作で初主演ということで、どのようなことを感じましたか?

前原:主演という言葉がまず嬉しかったです。ただ、周りが素晴らしい俳優さんばかりなので、主演らしいことは何もしてないです。お芝居で引っ張るんじゃなく、ただ中心にいるだけで成立したので。キャスト・スタッフの皆さんの素晴らしい個性と技術と経験があったからこそ、主演としてクレジットの最初に載せていただいたという感覚ですね。
これからどんな作品を演じようと僕の初主演作はずっと『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』。ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思っています。

前原滉

──本作のメガホンをとった池田暁監督の印象は?

前原:キャスティングの方にお声掛けいただいて、先に台本をもらって、演じ方を組み立てていましたが、池田監督の過去作を拝見し、お芝居の種類がこれまで自分が経験してきたものとあまりに違うので、180度印象が変わりました。でも、自分にとって新しいチャレンジになると思いました。普段は表現することを考えていましたが、それを抜く作業をしたという感じ。リハーサルを何度も重ねて「ニュアンスをもう少し抑えて」など監督から指示をもらえたので、本番ではほとんど修正はなく、共通認識を持って演じることができました。

 

──心に残っているシーンを教えてください。

前原:最後のトランペットのシーンです。撮影から2年ほど経ちますが、今でもハッキリと、露木として演じながら感じたその景色を覚えています。

きまじめ楽隊のぼんやり戦争

──今後の目標や展望はありますか?

前原:今よりもっと忙しくなったら嬉しいです(笑)。すでに色々なことを経験させていただいている自負はありますが、もっと幅広く挑戦したいという思いはありますね。芝居に限らず表現方法はさまざまあるので、主役に限らず演技の質を上げていきたいと思っています。本作で露木を演じて、表現方法の引き出しが1つ増えたことは大きな財産だと思います。

──最後に観客のみなさんへ一言メッセージをお願いします。

前原:何も構えず、想像と余白を楽しんでいただきたいです!

前原滉
前原滉
まえはら・こう

1992年11月20日生まれ、宮城県出身。連続テレビ小説『まんぷく』(18年)、大河ドラマ『おんな城主直虎』(17年)、『いだてん~東京オリムピック噺~』(19年)などの話題作をはじめ、近年ではドラマ『陸王』(17年)、『隣の家族は青く見える』(18年)、『あなたの番です』(19年)、『私たちはどうかしている』(20年)、『バベル九朔』(20年)に出演。出演映画は『あゝ、荒野』(17年)、『栞』(18年)、『うちの執事が言うことには』(19年)、『JKエレジー』(19年)、『シグナル100』(20年)、『とんかつDJアゲ太郎 』(20年)など、活躍の幅を広げている。