『たたら侍』青柳翔インタビュー

心に響いたベテラン女優からの一言とは?

#青柳翔

伍介はスーパーヒーローではない

いまやさまざまなジャンルの日本映画が世界中で受け入れられているが、昨年開催されたカナダ・モントリオール世界映画祭での最優秀芸術賞をはじめ、各国の映画祭で多数の受賞をはたした話題作といえば、EXILE HIRO初プロデュースの『たたら侍』。先日行われた台湾のプレミアでも、多くの現地ファンが駆けつける熱狂ぶりを見せたばかりだ。

本作は、“たたら吹き”という高度な鉄作りとともに生きてきた出雲の村を舞台に描かれた時代劇であり、その技術の継承者でもある伍介が主人公となっている。今回、主演を務めたのは、多彩な人材を輩出している劇団EXILEのなかでも、俳優としてだけでなく、歌手としても目覚ましい活躍で話題の青柳翔。英雄でも戦士でもないひとりの青年を演じ、葛藤する内面を表現する難しい役への挑戦となったが、本作で得たものや見どころについて、思いを語ってもらった。

──まずは、この作品に参加することになったいきさつから教えてください。

『たたら侍』
2017年5月20日より全国公開
(C)2017「たたら侍」製作委員会

青柳:前作『渾身 KON-SHIN』のプロモーションで錦織監督とご一緒させてもらったときに、「次は時代劇をやりたいね」というお話をお伺いしたのが最初で、「やりがいがあるだろうな」と思いました。そのときは、こんなにたくさんの方にご協力していただけるとは思っていなかったので、いまはすごくうれしい気持ちと責任も感じています。

──「たたら」というテーマについてはどう思いましたか?

青柳:ジブリの作品に出ていたという印象はあったんですけど、僕もそこまで知識がなかったので、監督からお話をお伺いして、そこで初めていろいろと知りました。なので、撮影に入る前にはドキュメンタリー映像を見たり、資料を見たり、あとは操業しているところを見学させてもらったりしながら勉強しましたね。

──脚本を読んでみて、どのように演じようと心がけましたか?

青柳:まず、伍介はスーパーヒーローではないんですよ。だからこそ、村を出たときの気持ちや挫折したときの気持ちを大切にしながら、最後に伍介が取る行動に向けて作っていかないといけないなと思ったので、監督やキャスト、スタッフとも相談して作っていきました。

自分をよく見せたいと思うから緊張する
青柳翔

──映画での時代劇は初めてでしたが、いかがでしたか?

青柳:舞台では2度だけ時代劇をやらせてもらったんですけど、まだ経験が少ないので、所作や言葉にこだわりすぎるよりも、伍介の気持ちの流れの方が重要なのかなと思って演じました。

──なかでも苦労したシーンは?

青柳:やっぱりラストは、難しいシーンでしたね。自分のせいで失敗したり、他人を傷つけたりしてしまった伍介の気持ちを表現するのが一番重要だと思ったので。

──豪華キャストのみなさんとの共演はいかがでしたか? 
『たたら侍』
(C)2017「たたら侍」製作委員会

青柳:同じ事務所のAKIRAさんや(小林)直己さんは、いつも食事でもご一緒させてもらっている仲なので、僕の背中を押してくれて、すごくやりやすかったです。あとは、錦織組によく出ている宮崎(美子)さんや甲本(雅裕)さんも、「伍介の好きなようにやっていいよ」と広い心で受け止めて下さったので、助けられました。それから、津川(雅彦)さんと奈良岡(朋子)さんたちのような大先輩にも支えて頂きながら、撮影できたと思っています。

──ベテランの方々からアドバイスをもらったことはありましたか?

青柳:奈良岡さんと食事をご一緒させていただいたときに、「緊張しないんですか?」と聞いたら、「緊張するのがおこがましい」と言われたことがすごく記憶に残っています。つまり、「自分を良く見せようとしたり、自分が出来る以上のことをしたりするから、緊張するのよ」というお話を聞いて、今でも心に残っています。

青柳翔

──今回は主演を務めるなかで、意識したことは?

青柳:監督はじめ、キャストとスタッフもチーム一丸となって撮影できていたので、自分もいいシーンにしたいという強い思いがありました。そういう部分を取り組み方で示せれば、みなさんにも助けて頂けるのかなと思っていたので、そこは心がけました。

──現場で印象に残っていることはありますか?

青柳:撮影中は、島根県の方々がたくさん協力してくださいましたが、寒かったこともあり、少しでも温かいものをということで、シジミ汁を作ってくれたり、出雲そばを差し入れしてくれたりしたのは印象に残っていますね。

良い人の役が多いので、悪役もやってみたい
『たたら侍』
(C)2017「たたら侍」製作委員会

──ロケ地に入ったときの気持ちは?

青柳:スタッフさんや地元の方々がすごく丁寧にオープンセットを作ってくださったのですが、僕は何もない状況からその場所を見ていたので、出来上がったのを見たときはうれしかったです。おかげで役に入りやすい環境にもなって、とても感謝しています。

──本作は海外の映画祭でも大きな反響があったようですが、現地で実際にその様子に触れてみてどうでしたか?

青柳:日本の美しい景色であったり、こだわって撮った映像美であったり、人を思いやる気持ちを評価してくださってうれしく思いました。

『たたら侍』
(C)2017「たたら侍」製作委員会

──「たたら」というテーマを含め、日本独自のストーリーですが、海外の方々にも受け入れられた魅力はどこにあると思いますか?

青柳:伍介は、挫折して失敗しながらも一歩踏み出すという役だったので、そういうところがいいと言ってもらえました。あとは、みなさんが映画をすごく真剣に見てくれていて、日本の風景やたたら吹きにも興味を持っていただけたこともよかったなと思います。

──現在は、俳優としてだけでなく、歌手としても活動されていますが、俳優としての経験が歌にも活かされていると感じることはありますか? 

青柳:いまはまだ活かせるところがあるかどうかを模索していているところですね。これから活動していくにあたって、歌手としても、俳優としてもいい形でバランスが取れたらいいなとは思っています。

──今後、やってみたいことがあれば教えてください。

青柳:お芝居も歌も、まだまだ何も成せていないので、色んな監督さんと作品をやってみたいなと改めて思いました。僕は良い人の役が多いので、悪役もやってみたいですね。

──それでは最後に、この作品を通して観客に伝えたいメッセージをお願いします。

青柳:日本の美しい景色、日本の伝統などをこだわって作ってきたところなので見どころですが、あとは「憎しみの連鎖を断ち切る」という言葉が映画のなかで伝えられるメッセージになっていると思いますので、楽しみにして頂けたらなと思っています。チームみんなでひとつひとつ丁寧に撮らせてもらった作品なので、ぜひ劇場でご覧ください。

(text:志村昌美/photo:中村好伸)

青柳翔
青柳翔
あおやぎ・しょう

1985年4月12日生まれ、北海道出身。舞台「あたっくNo.1」(09年)で俳優デビューし、その後、劇団EXILEのメンバーとなる。映画『今日、恋をはじめます』(12年)では第22回日本映画評論家大賞新人賞を受賞。主な出演作品は、映画『極道大戦争』(15年)、『HiGH&LOW THE MOVIE』(16年)、ドラマ『ファーストクラス』(14年)、『ワイルド・ヒーローズ』(15年)など。錦織良成監督とは、主演作『渾身 KON-SHIN』(13年)に続き、本作で2度目のタッグを組むこととなった。映画・ドラマ・舞台だけでなく、2016年には歌手デビューもはたし、6月7日にセカンドシングル「そんなんじゃない」をリリース。