『メイジーの瞳』オナタ・アプリール、スコット・マクギー&デヴィッド・シーゲル監督 インタビュー

血縁を超えた新たな家族のあり方を見せてくれた3人

#オナタ・アプリール#スコット・マクギー&デヴィッド・シーゲル

「メイジーだったらどうかな」と考えながら演じた(オナタ)

自分のことに忙しくてケンカばかりのパパとママ。ニューヨークに暮らす6歳の少女メイジーは、自分勝手な両親よりも、いつもそばにいて温かく見守ってくれる母の再婚相手リンカーンとベビーシッターのマーゴとの暮らしに安らぎを見出し……。

健気な少女の眼差しを通じて欠点だらけの人間の愛おしさを描いた『メイジーの瞳』は、これまでにない新たな家族の姿を見せてくれる作品でもある。

物語の核となる少女メイジーを演じたのはオナタ・アプリール。子役らしからぬ自然体の演技で見る者を魅了する彼女と、スコット・マクギー&デヴィッド・シーゲル監督に話を聞いた。

オナタ・アプリール

──オナタちゃんの、微妙な心の揺れをさりげなく演じる演技力が素晴らしかったのですが、どんなことを考えながら演技していたのですか?

オナタ:いつも、「彼女(メイジー)だったらどうかな」と考えながら演じていました。

──4歳の頃からお母さんに演技のレッスンをうけていたそうですが、どんなことを教えてもらったのですか? また、お母さんは優しいコーチでしたか? それとも厳しいコーチでしたか?

オナタ:う〜ん……。お母さんに教えてもらったのは、私がその人の立場だったらどう考えるかということと、気持ちを集中させることです。それから、お母さんは優しいコーチでした(笑)。

──おばあさんが日本人だそうですね。今回はおばあさんとお母さんと一緒に初来日したそうですが、日本のことを何か知っていましたか?

オナタ:ほとんど知らなかったけれど、おばあちゃんが鎌倉に住んでいたことは知っています。

──とても素晴らしい演技だったので、このまま女優を続けていってほしいと思いましたが、どうですか?

オナタ:演技はずっと続けていきたいです。

オナタは好奇心にあふれていて、クリエイティブな経験を楽しんでくれた(シーゲル)
──このことについて監督にもお聞きしたいと思います。様々な意味でプライベートを守りながら俳優業を続けるのは大変な時代だと思いますが、演技を続けたいというオナタちゃんの願いについてどう感じますか?
オナタ・アプリール(左)とデビッド・シーゲル監督(右)

シーゲル:今、彼女はとても普通の生活を営めていると思います。だから大丈夫じゃないかな。僕は彼女と一緒にクリエイティブな経験をしました。オナタは好奇心にあふれていて、そのクリエイティブな経験を楽しんでくれたと思います。映画作りは大変な作業と言われ、それを楽しめる心が必要。彼女なら大丈夫じゃないかな。

マクギー:彼女はとても賢いし、守ってくれるお母さんがいるから、僕も大丈夫だと思いますよ。

──本作は新しい形の家族を描いた作品だと思いましたが、実は19世紀に書かれたヘンリー・ジェイムズの小説が原作なんですよね。古くて新しいテーマなのかもしれませんが、監督をしながら家族について思いを巡らせたりしましたか?

マクギー:実は脚本を読むまで原作を読んだことはありませんでした。モダンな物語だと思いましたが、映画に比べると原作は悲観的で、メイジーはシニカルな少女に成長していきます。映画は、原作より楽観的に家族のあり方を描いていると思います。

左からデビッド・シーゲル監督、オナタ・アプリール、スコット・マクギー監督

シーゲル:僕たちが脚本を書いたわけではないので、個人的な思い入れはあまりないんです。ただ、普遍性のあるテーマだなと思いましたね。

マクギー:ある意味、古典的な家族とは違う家族を描いていますが、メイジーは自分を愛してくれる人を探し、自身自身で判断して、新たな“家族”を作っていく。そういった部分がとても気に入りました。

──マクギー監督は大学で日本映画史を学んだそうですが、日本は今回が初めてですか?

マクギー:(日本語で)2年間、日本に住んでいました。最初は高校時代に留学で、1年間滋賀県に。それから大学卒業後にもう1年間英語の先生をしていました。そのときも、滋賀県に住んでいました。

──日本語がお上手なので驚きました。

マクギー:(はにかんで首を横に振りながら)もうほとんど忘れてしまっています……。

(text&photo 編集部)

オナタ・アプリール
オナタ・アプリール
Onata Aprile

2005年、アメリカ、ペンシルバニア州生まれ。4歳の頃から、母親であり演技のコーチでもあるヴァレンタイン・アプリールがオナタのために作ったウェブ用の映像作品「Hello Petula!」で演技をするようになる。その後、テレビシリーズ『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』(10年)、短編映画『Choose』(11年/未)と『Twist』(11年/未)、『The History of Future Folk』(12年/未)、シエナ・ミラー主演、ニック・カサヴェテス監督の『Yellow』(12年/未)などに出演する。最新作は、『Almost Family』(13年/未)。子役を超えた“女優”として、将来が最も期待される1人である。

スコット・マクギー&デヴィッド・シーゲル
スコット・マクギー&デヴィッド・シーゲル
Scott McGehee&David Siegel

マクギーは、アメリカ、カリフォルニア州で生まれ育ち、コロンビア大学で学士号を取得。カリフォルニア大学バークレー校で映画理論と日本映画史を学ぶ。シーゲルは、ニューヨーク州で生まれ、カリフォルニア大学バークレー校で文学士号を、ロードアイランド造形大学で美術学修士号を取得する。90年に初めて2人で短編映画の製作を始めて以来、チームとして常に一緒に活動している。93年、長編映画デビュー作『Suture』(未)がサンダンス映画祭で絶賛され、インディペンデント・スピリット賞新人作品賞にノミネートされ、注目される。続いて、主演のティルダ・スウィントンが、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされた『ディープ・エンド』(01年/未)、リチャード・ギア、ジュリエット・ビノシュ共演の『綴り字のシーズン』(05年)、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット主演の『ハーフ・デイズ』(09年)を監督する。瑞々しい才能が世界各国の映画祭で高く評価され、今最も期待されている監督チームである。

スコット・マクギー&デヴィッド・シーゲル
メイジーの瞳
2014年1月31日よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国順次公開
[製作]ダニエラ・タップリン・ランドバーグ、リーヴァ・マーカー
[監督]スコット・マクギー、デヴィッド・シーゲル
[原作]ヘンリー・ジェイムズ
[出演]ジュリアン・ムーア、アレクサンダー・スカルスガルド、オナタ・アプリール、ジョアンナ・ヴァンダーハム、スティーブ・クーガン
[原題]WHAT MAISIE KNEW
[DATA]2013年/アメリカ/ギャガ/99分

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