『スリラー』でスターダムの頂点へ! マイケルの輝きと闘い、世界に新たなエンタメを生み出した稀有な才能
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ムーンウォークを完全再現!『Michael/マイケル』
【映画を聴く】<後編> マイケル・ジャクソンのソロキャリアにおける最大の転機は、1978年の映画『ウィズ』の撮影中に起こる。黒人キャスト版『オズの魔法使』である本作でカカシ役を演じていたマイケルは、音楽監督を務めるクインシー・ジョーンズと意気投合。次のソロ・アルバムのプロデュースを依頼する。
・<前編> 実の甥が演じるマイケルはマイケルそのもの! 映画『Michael/マイケル』が描く“KING OF POP”の真の姿
1979年にリリースされた『オフ・ザ・ウォール』は、ディスコ・ブームに対するマイケルからの回答であり、人種や音楽カテゴリーの壁を破壊して2000万枚を売り上げる記念碑的作品となった。自らの表現の自由を手に入れ、開放感のうちに創作に没頭するこのときのマイケルの姿は、映画の中でも生き生きと描かれている。
そして1982年、ポピュラー音楽の歴史を塗り替える『スリラー』が誕生。全世界のセールスが7000万枚とも1億枚とも言われるこの「人類史上最も売れたアルバム」は、全米チャートで通算37週1位を記録し、収録曲9曲中7曲がトップ10入りするという圧倒的な記録を打ち立てた。1984年のグラミー賞では史上最多の8部門を制覇し、彼は名実ともに世界の頂点へと昇りつめる。
『Michael/マイケル』最大のハイライトはこの直後、1983年の「モータウン25周年記念コンサート」で「ムーンウォーク」を初披露し世界を熱狂させた「ビリー・ジーン」のパフォーマンスを完全再現したシーンである。マイケル役を演じた実の甥であるジャファー・ジャクソンは、マイケルの一挙手一投足を綿密に検証し、完全に自分のものとして昇華している。

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差別や偏向報道との戦い
『Michael/マイケル』では、彼を取り巻く業界の壁や偏向報道との闘いも描かれる。黒人アーティストのビデオを流そうとしなかったMTVの壁を打ち破った痛快なエピソードの裏で、タブロイド紙によって根も葉もないゴシップが拡散され、彼が世間から「奇人変人」のレッテルを貼られていく過程の恐ろしさ。大衆は彼のエンターテインメントに熱狂しながら、同時に彼のプライバシーを貪り食っていた。
そうした理不尽な世界の中で、マイケルにとってステージの上だけが唯一自由になれる場所であり、音楽を作ることだけが自らの魂を救済する手段であったことが、痛切なメッセージとして胸に迫る。
“KING OF POP”という称号の持つ意味とは
マイケルのキャリアを語る上で欠かせないのが音楽の視覚化、すなわち身体表現との完全なる融合である。彼のダンスは、幼い頃から敬愛していたジェームス・ブラウンのステップや、フレッド・アステアの華麗なミュージカル映画の動き、さらにはマルセル・マルソーのパントマイムといった先人たちの表現を吸収し、独自の形に昇華させたものだ。
マイケルは音楽を作る際、常に「どう映像で見せるか」「どう踊るか」を同時に構想していたという。それが結実したのが、物語性を持たせた「ショートフィルム(ミュージックビデオ)」の革命である。「ビート・イット」での集団ダンスや「スリラー」での特殊メイクを用いた映像表現は、単なるプロモーションビデオの枠を超え、音楽と映像が不可分となる新しいエンターテインメントの形を世界に決定づけた。その創作面・ビジネス面での裏側を詳らかにしてくれるのも『Michael/マイケル』の見どころのひとつだ。

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さらに、世界中を熱狂の渦に巻き込んだ「BAD ワールド・ツアー」における、1988年7月のロンドン・ウェンブリー・スタジアム公演も終盤で再現されている。ウェンブリー・スタジアムといえば、クイーンのフレディ・マーキュリーを主人公にした伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』の終盤で描かれた「ライヴエイド」の開催場所でもある。本作のスタッフには『ボヘミアン・ラプソディ』の製作を手がけたグレアム・キングも関わっており、いずれの作品でもクライマックスにウェンブリー・スタジアム公演が選ばれているのは偶然と分かっていても感慨深い。実際のライヴを動画サイトなどで見れば、このときのマイケルがいかに音楽として、パフォーマーとして研ぎ澄まされていたかが分かるはずだ。
マイケルに与えられた“KING OF POP”という称号は、1989年に親友のエリザベス・テイラーが彼に贈った「He’s the true King of Pop, Rock and Soul.」という言葉に由来している。それは“KING OF ROCK’N’ROLL”であるエルヴィス・プレスリー、“QUEEN OF SOUL”であるアレサ・フランクリン、“EMPEROR OF FUNK”であるジェームス・ブラウン……そのすべてを包括した称号と言っていいかもしれない。
“KING OF POP”たるマイケル・ジャクソンの音楽とパフォーマンスに正しく出会うため、できるだけ映像・音響設備の整った劇場で『Michael/マイケル』をお楽しみいただきたい。(文:伊藤隆剛/音楽&映画ライター)
・マイケルの軌跡が凝縮されたような4種のキャラクターポスターも! その他の写真を見る
『Michael/マイケル』は、2026年6月12日より全国公開中。
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