高齢者の手足を切断したら介護はラクに? 衝撃作『廃用身』が観客に突きつける倫理観

#中井友望#久坂部羊#六平直政#北村有起哉#吉田光希#廃用身#染谷将太

『廃用身』
(C)2025 N.R.E.
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キャスト陣は「賛否分かれる映画」と覚悟を語っ

映画『廃用身』の公開記念舞台挨拶が、5月16日にTOHOシネマズ日比谷で開催され、主演の染谷将太をはじめ、北村有起哉、六平直政、中井友望、原作者・久坂部羊、吉田光希監督が登壇した。

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公開前から大きな話題を集めていた本作。染谷将太らキャスト陣は、劇中で印象的なアイテムとして存在感を放つ“流木”を一人ずつ手にして登場した。上映前ということもあり、染谷は「劇中のとあるシーンで、とある形で出てくる流木なんです。でも皆さんまだ映画を見る前ですもんね。『何のこっちゃ』と思うかもしれませんが…」と、意味深に観客の期待を煽った。

“実写化不可能”とうたわれる作品は数多くあるが、本作もまた「本当に実写化できるのだろうか」という声が多く上がっていた作品。そんな中、無事に公開初日を迎えたことについて、染谷は「作品が公開されて皆様に見てもらえるというのがすごく嬉しい反面、共にすごく緊張する、そんな映画です」と心境を吐露。

『廃用身』

さらに、「いつも作品が公開されるとき、嬉しさと旅立っていく寂しさがあるのですが『廃用身』は何とも言葉にできないドキドキがあります。賛否両論が巻き起こりそうな…カラフルな感想が飛び交っていただけたら嬉しく思います」と語った。

吉田光希監督が原作と出会ったのは、大学生時代、今から20年以上前のこと。吉田監督「当時大学生のころに原作を読んで、この作品をいつか映画にできたらなと思っていました。でも当時は本当にただの夢物語でした」と話し始め、途中で言葉に詰まり涙を見せる。

その肩を北村有起哉が優しくさすると、吉田監督はさらに涙をこぼしながらも、「すみません」と顔を上げ、「本当に気持ちが込み上げてきて。こんなにたくさんの方に見守っていただけて、お披露目できるのは本当に嬉しく思っています」と感情をあふれさせた。

そんな吉田監督の熱意が詰まった本作について、原作者の久坂部羊は「横で監督にこんなにも感極まっていただいて」と温かなまなざしを向け、「書き手にとっては最高の読者です。こちらも感動しています」とコメント。

さらに、「私の小説は映画化のオファーはいくつかあって、監督が決まったり脚本ができたりしたこともあったんですけど、全部途中で潰れていくんですね。で、『廃用身』も映画化の話をいただいた時に、一番映像化しにくい作品と思っていたので『多分潰れるだろう』と思っていたんです」と率直な思いを明かしつつ、「でも監督とプロデューサーが丁寧に取り組んでいただき『ひょっとしたら本気なのか』と思ったんです」と当時を振り返った。

また、主人公・漆原を演じた染谷は、「漆原先生って本当に見る方によって感想が違う役。だからこそ、すごく大事にしていたことがある」と役作りについて言及。

ただ、「先入観を持ってしまわれると良くないので、それは明かさないですが、自分でもすごく勇気がいる役。僕らはお芝居をするのが仕事なのですが、本当にこの撮影期間中は、ひたすらAケア(※注:高齢者の廃用身を切断するケア法)を広めようとしていた時間だったっていう、すごく不思議な時間でした。もう本当に一生懸命Aケアを広めようとしていた日々だったなって、今思い返すと感じます」と真摯に語っていた。

Aケアに興味を持つ編集者・矢倉を演じた北村有起哉は、「役として、漆原先生の画期的な医療、哲学と言うと大げさかもしれませんけど、そこに少なからず共鳴したところがありまして」と役柄について説明。

続けて「実際にこの映画を皆さんがご覧になってどう思われますか、っていうところとまさに重なる部分がある役。本当に賛否分かれるような映画だと思いますが、とにかく皆さんにフラットな状態で見ていただいて、それを見て何を感じてもらえたら」とメッセージを送った。

第1症例者として治療を受ける高齢者・岩上を演じた六平直政は、上映前の舞台あいさつということもあり、「ネタバレになっちゃうから言わない(笑)」と役柄の詳細には触れなかったものの、「全シーン大変だった。それはお客さんが見れば一目瞭然です」と断言した。

看護師・内野役の中井友望は、司会者から「憧れの染谷さんとの念願の共演でしたね」と振られると、「こんなところでバラされると思っていませんでした。ご本人にもお伝えしていなかったのに…」と驚きの表情。

「撮影しているときは感じなかったんですけれど、撮影が終わって寝る前とかに『あ、今日染谷さんと一緒にお芝居していたんだ』って思い返したりして、しみじみと感動していました」と振り返った。そんな中井の言葉に、染谷は「もう恐縮です」と照れ笑いを浮かべていた。

また、この日は“衝撃作”と呼ばれる本作にちなみ、「最近衝撃を受けたこと」についてのトークも展開。染谷は「本当にどうでもいいんですけど…」と前置きしつつ、「このところずっと何ヶ月も地方に撮影に行っていたんですね。最近も大阪にいたんですけれど、気づいたら3キロぐらい太っていましたね」と告白。「焼肉とか。どこのお店に行ってもハズレがない。ちょっと食べすぎましたね。気づいたら焼肉屋にいる(笑)。久々に家帰って体重計に乗ったら『え!』ってなって。これから減らしていきます」と語った。

『廃用身』

同じ質問に北村も「しょうがないことなのですが」と切り出し、「妻に頼まれてスーパーへ買い物に行きました。絹豆腐を木綿豆腐に間違えたり、無調整豆乳なのに調整豆乳を買ってきたり。あと、ハンドソープのリキッドタイプだと言われてるのに泡タイプを買ってきたり。どうしてもちょっと間違えてしまうんです。最近それをまとめて指摘されて…。自分が情けなくて衝撃を受けました」と苦笑した。

中井は、「今26歳になるんですけど、階段とかを登るだけで筋肉痛になってしまうんです。年齢的にちょっと早いかなと衝撃を受けました」とコメント。

久坂部羊は、「今準備している次の小説がほぼできあがって、一番信頼している編集者に見てもらったら『これ売れるかな』って言われたのが一番の衝撃でした」と話し、会場を笑わせた。

そんな中、吉田監督は、「僕はこの質問の答えを準備してきたのですが、何よりも最初の自分の挨拶に衝撃を受けました。自分の映画にこんなにたくさんの方が見に来てくださったというのを目の当たりにして…」と感慨深げに語った。

最後に六平は、「何と言ってもこの映画に衝撃を受けますよ。みんな僕を見たら泣いちゃうと思う」と語り、「とにかく装具を作ってくれた美術さんがすごい。CGを使っていないんです。本当に衝撃です」とスタッフの仕事ぶりを称賛した。

『廃用身』

締めくくりに、染谷は「本当に自分は見たこともないような映画だなと思いました。たくさんの倫理観も問われますし、医療もそうですし、介護もそうですし、人としてもそうですし。もはや映画としての倫理観も問われます。たくさん思うことがある映画だと思います。その思うことがあったら是非口に出していっていただいて、この衝撃を少しでも多くの方に広めていただけたら嬉しいです」と作品への思いを語った。

吉田監督も、「気持ちよく見れない部分もたくさんあると思うのですが、これを作れて良かったと心から思える映画になりました。見終わったとき、この映画好きだった、嫌いだった、そんな気持ちも全部この映画の一部になっていくと思っています。皆さんが何か議論を交わせるような映画を作りたいなと思っていました。ぜひ最後までご覧になってください」と呼びかけていた。

『廃用身』は現在公開中。