【映画界で輝く女性たち】悶々と悩むどん底を経て巡り会った“映画宣伝”という仕事

古森由香(こもり・ゆか)
松竹株式会社 映画宣伝部 宣伝企画室 チーフ宣伝プロデューサー
福岡県出身。シネ・リーブル博多(98年開館、00年閉館)に勤務、地方での映画宣伝に携わる。00年、映画会社ビターズ・エンド入社。宣伝、買付の業務に携わる。05年松竹入社、現在に至る。これまでの担当作品は、米アカデミー賞外国語映画賞受賞作「おくりびと」、「60歳のラブレター」、「武士の家計簿」、モントリオール世界映画祭審査員特別グランプリ受賞作「わが母の記」、「終戦のエンペラー」など。現在の担当作品は6月21日公開「超高速!参勤交代」、2015年公開「ソロモンの偽証」。
古森由香(こもり・ゆか)
松竹株式会社 映画宣伝部 宣伝企画室 チーフ宣伝プロデューサー
福岡県出身。シネ・リーブル博多(98年開館、00年閉館)に勤務、地方での映画宣伝に携わる。00年、映画会社ビターズ・エンド入社。宣伝、買付の業務に携わる。05年松竹入社、現在に至る。これまでの担当作品は、米アカデミー賞外国語映画賞受賞作「おくりびと」、「60歳のラブレター」、「武士の家計簿」、モントリオール世界映画祭審査員特別グランプリ受賞作「わが母の記」、「終戦のエンペラー」など。現在の担当作品は6月21日公開「超高速!参勤交代」、2015年公開「ソロモンの偽証」。
古森由香(こもり・ゆか)
松竹株式会社 映画宣伝部 宣伝企画室 チーフ宣伝プロデューサー
福岡県出身。シネ・リーブル博多(98年開館、00年閉館)に勤務、地方での映画宣伝に携わる。00年、映画会社ビターズ・エンド入社。宣伝、買付の業務に携わる。05年松竹入社、現在に至る。これまでの担当作品は、米アカデミー賞外国語映画賞受賞作「おくりびと」、「60歳のラブレター」、「武士の家計簿」、モントリオール世界映画祭審査員特別グランプリ受賞作「わが母の記」、「終戦のエンペラー」など。現在の担当作品は6月21日公開「超高速!参勤交代」、2015年公開「ソロモンの偽証」。
『おくりびと』
(C) 2008 映画「おくりびと」製作委員会
『超高速!参勤交代』
(C) 2014「超高速!参勤交代」製作委員会

「映画業界で働きたい!」と思っている人は少なくない。では、映画に関する仕事にはどんなものがあるのだろうか? 映画業界で輝く女性たちへのインタビューを通じ、夢を実現するための第一歩について考えてみる。

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第81回米国アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した『おくりびと』。プロのチェロ奏者から一転、遺体を棺におさめる納棺師となった主人公の成長を描いた作品で、地味なテーマながら64.8億円の興行収入を記録した作品だ。

この映画の宣伝をしていたのが、映画会社・松竹で宣伝プロデューサーをつとめる古森由香さんだ。結果的には2008年の興収で邦画部門の第3位となった本作だが、最初にこの映画の話を聞いたときには「そんな映画、誰が見るの?」と思ったと笑う。

「お葬式で遺体をきれいにする人の話で、タイトルの『おくりびと』も意味が分かりにくいし。設定を聞いて『誰もが面白そう!』となる映画ではありませんよね。でも、映画を見たら……たまりませんでした。人生を変えられる映画だと思ったし、誰もが同じように感じると思いました。だったら、見せる。タダでも見せる。そして口コミで広めてもらおうと思い、とにかく試写会にお金をかけることにしました」

公開してから半年ほど経ってからアカデミー賞を受賞したわけだが、その時点でかなりヒットしていた。「でも、あそこまでいくとは思っていませんでした」と古森さん。作品自体の良さと宣伝効果が相まってすでに満足できる成績を収めていたうえにアカデミー賞効果が重なり、あれほどのヒット作、話題作となったのだろう。

その後、『武士の家計簿』(10年)、『わが母の記』(12年)、『終戦のエンペラー』(13年)などを担当し、現在は6月に公開される『超高速!参勤交代』と来年公開の『ソロモンの偽証』の宣伝を担当している彼女に、“宣伝プロデューサー”という仕事について聞くと、「宣伝のターゲットやコンセプトを決め、全体のバランスを見る役どころ」と教えてくれた。

「その上で、まずは、ポスターやスチールメイキングなど作品の魅力を伝えるクリエイティブ素材をどうするかを考えます。ポスターは、その作品の世界観と合ったデザイナーさんを選出、共に話し合った上で作り上げていく。時代劇などは衣装を着ている必要があるので、撮影現場で撮影したりします。特番やDVD発売するときの特典などに入れるメイキング映像も、『こういう映像が欲しい』と最初に伝えておかないと、主張のない映像をただ撮っている……ということになりがちです。撮影現場にマスコミの方をお招きして取材していただいたりもします」

その時、必要なのが“調整力”だという。現場スタッフは映画本編を撮影することに集中しているため、その最中にポスター撮影やマスコミ取材などをすると、現場スタッフの集中力を妨げる可能性もある。

宣伝プロデューサーというと、なんだか華やかでスマートなイメージが浮かぶが、意外に地味な現場仕事が多いようだ。

映画宣伝に携わって14年目という古森さん。映画の良さを伝える今の仕事を心から楽しんでいるようだが、意外にも、新卒時の希望職種は別のものだったという。

福岡県内で生まれ育ち、学生時代も福岡で過ごした古森さんが学生時代に夢見ていたのは“キュレーター”。美術館やギャラリーなどで展覧会などを企画したりする仕事だ。

「すでにあるものを違う角度から見るとすごく新鮮で面白く見えたりするので、そういう仕事がしたかったんです。今の映画宣伝の仕事も、実は同じなんですよね」

いわゆる就職活動は行わず、最前線で活躍するキュレーターに直接会いに行きアドバイスを求めたり直接売り込みをしたりしてキュレーターの道を模索したが、うまくはいかなかった。なかなか就職先が見つからないストレスのなかで出会い、就いたのは、意外にも“受付嬢”の仕事だった。

「福岡の官民複合の商業施設で働くことになったんです。受付嬢といえば華やかなスーツ姿。スーツ、ストッキングが大の苦手で(笑)その仕事自体に興味はもてなかったのですが、(就職活動に)疲れ果ててしまって……」

案の定、仕事にはのめり込めなかった。その後、何度か転職したものの思うような仕事に出会えず、ストレスから鬱状態となり家で悶々とする日々。だがある日、当時の恋人から「悩んでいても何も解決しないよ」と言われ、ハッとしたという。

「そうだよな、と。悩んで、『どうせ自分はダメだ』とか思っていても何も進まないんですよね。で、『こういうことがやりたい、だったらこれが足りない』と建設的に考えてみるようにしたんです」

そんな時期、京都でチェコの映像作家ヤン・シュヴァンクマイエルの上映会を見たことが、古森さんの転機となった。

「その上映会がすごく面白かったんです。主宰の方に『ぜひ福岡でも!』とお願いしたら、『自分でやればいいじゃん』とあっさり言われて。目から鱗でした」

その後、ショートフィルムを選び、自分なりの見せ方でプログラムを組みプロモーションをした。そうしたら「結構、お客さんが入っちゃったんです(笑)」。

友だちも巻き込んで自主上映活動に精を出し、映画館での職も見つけたが、東京の配給会社から届く素材で映画を宣伝するという仕事に次第に物足りなさを覚え、東京へ行くことを考えるようになっていった。上京を計画中に、運良くインディペンデント系作品の配給を手がける会社ビターズ・エンドから宣伝の仕事の誘いを受け、東京へ。当時28歳だった。

初めて本格的に取り組んだ宣伝という仕事。簡単な説明の後に、即戦力としていきなり作品を任されたそうだが、古森さんは「楽しくて、『これだ!』と思った」。休日もないような多忙な日々を、水を得た魚のように生き生きと働いたという。しかし、次第に規模の大きいハリウッドメジャーのような映画の宣伝も手がけてみたくなり、大手映画会社の松竹に転職。今に至る。

この仕事は、好きな作品だけを宣伝できるわけではない。「中にはどうしようもない作品もあるのでは?」と水を向けると、古森さんは「大いにありますね」と笑いつつも、「とにかく、良いところを見つけようと頑張ります」とキッパリ。「それに、(どうしようもない作品でも)愛着が湧くんです」とも話す。

20代で悩みに悩み抜いた末、熱中できる仕事にめぐり逢えた古森さん。華やかなイメージから映画宣伝という仕事に憧れる人も多いだろうが、そんな人々へのアドバイスを聞いたところ、「映画の仕事をしたいのか、宣伝の仕事をしたいのか、映画の会社に入りたいのかをハッキリさせたほうがいいですね。映画宣伝の仕事がしたいのなら、たくさんあると思いますよ。やりたいことを仕事にするために必要なのは“信念”でしょうか。信念さえあれば、何でもできると思うんです」。

最後に古森さんに、映画宣伝という仕事の難しさをたずねると、「良い作品で、出演俳優さんが、インタビューやイベント出演なども受けてくれて、目一杯、宣伝ができた!と思っても上手く行かないこともあります。面白さを伝えられなかったと責任を感じることは多いですね。実家に帰って話しをしたときに、親から『だって、あの映画、宣伝に特徴なかったじゃない』と言われたり(笑)」。

映画以外の楽しみが山のようにある今、1800円を払って劇場に足を運ばせることはかなり大変なのだ。古森さんは、「見に行くだけの価値を提供できるのかという意識をもたないといけませんよね」とつぶやいてから、だからこそ映画宣伝の力が必要なのだと語った。「今後は、良い映画であることを伝えるための宣伝の力が、ますます重要になると思います」。

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