大森南朋×松嶋菜々子

大森南朋と松嶋菜々子、夫婦役で共演した2人が撮影を振り返った

2011.01.22

『犬とあなたの物語いぬのえいが』大森南朋×松嶋菜々子インタビュー

撮影は日々楽しかった（大森南朋）
辛さにに立ち向かうことすら楽しくて（松嶋菜々子）

犬と人間とが紡ぎ出す、笑ったり、心が温まったりする幾つものエピソードが綴られた映画『犬とあなたの物語いぬのえいが』。このなかの一遍である『犬の名前』で夫婦役を演じているのが大森南朋と松嶋菜々子だ。
物語は、子どもの頃に愛犬を事故で失ったことから、犬を飼わないと決めている一郎（大森）のもとに、妻の美里（松嶋）の提案で1歳のラブラドールレトリバー・ラッキーがやってくるところから幕を開ける。最初こそ犬に戸惑った一郎だが、次第に心を通わせていく。だが、そんな矢先に一郎に異変が起こり始める。

長崎俊一監督がメガホンを取ったこの作品について、大森と松嶋に話を聞いた。

［動画］『犬とあなたの物語いぬのえいが』プレミア試写会舞台挨拶／大森南朋、松嶋菜々子、長崎俊一監督、JUJU
──演じた夫婦の距離感についてお聞きします。どのように2人の距離感を出そうと考えましたか？
大森：僕は結婚したことがないので想像なんですけど、夫婦って、あまりにも自然にいることが大切なんじゃないかと。松嶋さんもすごくそういう気配を出されていたので、自然と、カメラの前で夫婦然としていることができたような気がします。
松嶋：それぞれが自分を持ち、しっかりと自立していることが大切で、自立しているからこそ互いに相手を尊重できると思うんです。なので、台本には書かれていませんでしたが、私もそういう自然な関係が設定としてあると思って演じました。
──劇中で夫婦の関係に変化が生じます。その変化は意識して演じましたか？
大森：そうですね。病気になってしまうというのが大前提としてあったので、それによって、夫婦としての気持ちにブレが生じたり、距離感も変わっていくので、その辺はすごく細かく意識していました。
松嶋：病気をきっかけに、そばにいる大切な人が、急に思いも寄らない反応をするので衝撃も受けるし、迷いもする。この先の将来が不安になってくるんですよね。そういう気持ちの変化については、長崎監督と細かく話し合いながら演じました。そして、そこにいる犬が2人の間を取り持ち、また新しい家族が始まっていく。なので、夫婦が第2のスタートラインにつくという気持ちも重ねました。
──撮影現場では、2人でどんな話をされたのでしょう？
大森：演技の話はしていないです。僕は現場で、あまり共演者とお芝居の話をしないんです。俳優同士ってあまりしないですよね？
松嶋：しないですね。
大森：「犬を飼ってるんですか？」みたいな。そういう会話はしていたと思うんですけど。
松嶋：撮影に入ると、そのなか（劇中）で会話ができるので、あえて前段階で話し合っておかなくても済むんです。テストでお互いの反応を見て変えていったりできますし。そういうところで小さな会話をしているので、私も今まで共演者と役作りについて、あまり話したことがないですね。
──舞台挨拶で大森さんは「犬との共演は大変になるかと思っていたが、なかなかの手練れで。なぜ、そんなに哀しい目ができるんだと思った」と仰っていました。犬との共演で、ほかに印象に残っているシーンがありましたら教えてください。
大森：犬がもうちょっと後ろに下がらなければいけないときに、トレーナーさんから無理矢理後ろ下げさせられている姿とかが非常に可愛かったです。
──大森さんは犬を飼われた経験は？
大森：ないです。
──犬派かネコ派かで言うと？
大森：ネコ派になりますよね。ネコを飼っていたことがあるので。
──松嶋さんはいかがでしょう？
松嶋：顔を振らずに目だけでチロッと見ているしぐさがすごく可愛いですね。うちで飼っている犬も、怒られると耳を寝かせて、顔を動かさずにチロッと目だけで見るんです。それが堪らなく可愛いくて。
──2人が出演しているエピソード『犬の名前』では、大切なパートナーが病気になってしまいます。もし、大切な人が病気になったとしたら、ご自身はどんなことをしてあげられると思いますか？
大森：やっぱり、辛いと思います。何とかしてあげたい気持ちは絶対あると思うから、いいお医者さんを探したりと、全力で何かをすると思います。ただ、どうしようもないと言われたら、共に何とか生きていくしかないんでしょうね。
松嶋：最初に思うのは、何でもっと早く気づいてあげられなかったんだろうとか、もっと早く気づいてあげたら何か打つ手があったんじゃないかとか、そういう後悔だと思います。長崎監督から言われたのは「お母さんみたいにならないように」ということ。確かにそうだなと思ったので、可哀相というのではなく、（パートナーとして）変わりゆくあなたをこの先もずっと理解できるように努力していく──。そういうことかなと思っています。
──撮影で楽しかったことや苦しかったことがあれば教えてください。
大森：楽しかったことって何だろうな？　でも、日々楽しかったですよ。現場に行くと、あー、映画の撮影をしているなって感じがしましたし。苦しかったことは哀しいシーンの撮影ですね。何となく自分まで哀しい気持ちになってきたりするので。今回も途中で寂しい気持ちになったりしました。
松嶋：私は現場にいれることが本当に楽しかったです。シリアスなシーンを撮っていても、出番がないときはスタッフとお喋りもしていましたし（笑）。元々、長崎監督のファンだったこともあるんですけれど、すごく繊細なところを見てくださっていると感じたので、それがすごく嬉しかったです。
苦労したところ？　……あったかもしれませんが、そこに立ち向かうことすら楽しかったんです。NGを出されても、「こうかな、それともこうかな」って。試行錯誤すること自体大変なんですけど、すごく楽しいと思えていたので、辛かったと思うことも特になかったです。それに（撮影で）お借りしていたマンションでの撮影は夜10時までだったので、深夜に及ぶこともなかったですし（笑）。
大森：あんまりうるさくてもいけないですよね。近所迷惑になっちゃうので（笑）。
松嶋：朝も早過ぎず、夜もそんなに遅すぎず、楽しい現場でした。