本木雅弘「向いていない…」 黒沢清監督が『黒牢城』撮影中の苦悩を明かす

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『黒牢城』
(C)米澤穂信/KADOKAWA (C)2026映画「黒牢城」製作委員会
『黒牢城』
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荒木村重と重なった主演のストイックな役作りとは

戦国ミステリー大作『黒牢城』の公開を記念し、6月19日に東京・丸の内ピカデリーで初日舞台挨拶が開催。主人公・荒木村重を演じた主演の本木雅弘をはじめ、敵対する軍師・黒田官兵衛役の菅田将暉、村重の妻・千代保役の吉高由里子、さらに青木崇高、宮舘涼太、柄本佑、オダギリジョー、黒沢清監督も顔をそろえ、作品への思いや撮影秘話を語った。

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・本木雅弘✕菅田将暉、至近距離で火花! 地下牢で繰り広げられる息詰まる心理戦に注目

約1000人の観客を熱狂の渦に巻き込んだカンヌ国際映画祭でのワールドプレミアから約1ヵ月。ついに本日より全国公開となった映画『黒牢城』の封切りを記念し、上映終了直後の熱気冷めやらぬ丸の内ピカデリーで初日舞台挨拶が開催された。

ステージには、主演の本木雅弘をはじめ、菅田将暉、吉高由里子、青木崇高、宮舘涼太、柄本佑、オダギリジョーら豪華キャスト陣と、メガホンを取った黒沢清監督が登壇。会場に集まった約600人の観客に加え、舞台挨拶の模様は全国300館以上の劇場でライブビューイング中継され、日本中のファンが見守る中、華々しく公開初日を迎えた。

本作は、密室と化した“黒牢城”を舞台に巻き起こる不可解な事件と、その先に待ち受ける衝撃の真相を描く戦国心理ミステリー大作。有岡城に籠城する荒木村重を演じた本木は、「ようやく映画が公開された。作品は新たな航海に漕ぎだす。そして私の“後悔”も始まる。公開されてもなお、自分の後悔が止まないという連鎖、連鎖です」とストイックに挨拶した。

『黒牢城』

これを受け、織田方の軍師・黒田官兵衛役の菅田は「カンヌにも行かせて頂き、やっと公開かという気持ちで。きっと僕も(自分の演技に)後悔はするんでしょうけれど、今はただただ楽しみです!」とコメント。

孤立無援の村重を支える妻・千代保役の吉高も、「今日を迎えられて本当に嬉しいです。ライブビューイングの方も見てますか~! こちらは元気です!」と呼びかけ、それぞれ公開初日の喜びを語った。

続いて、村重の腹心・荒木久左衛門役の青木は「初日を迎えて嬉しいです。僕は後悔ではなく“爽快”な気分でいかせて頂きます!」と、本木の挨拶にかけて軽妙にコメント。

若き家臣・乾助三郎役の宮舘も、「今日こうして初日を迎えられることを本当に嬉しく思ってます。こんな挨拶で“どうかい?”…失礼いたしました!」とダジャレを交えて会場の笑いを誘った。

撮影を振り返り、本木は「黒沢監督は的確で冷静でブレずに粛々と撮影を進める。いわゆる長回しという恐ろしい緊張を強いられる撮影方法があります。9ページくらいの膨大なセリフ量で。そこに苦労した」と明かし、「その辺はいかがですか、菅田さん」と話を振った。

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黒沢組への参加が2度目となる菅田は、「前回はなかったけれど、今回は長回しでOKを貰った時に自然とハイタッチしました。それが嬉しかった」と撮影時のエピソードを披露。本木も「現場全体が一体となって集中して、ある種ドキュメンタリーを切り取るような瞬間でもありました。それによって画面に張り詰めた感じが生まれたと思う」と手応えを語った。

一方、「撮影のエピソードで何かありませんか?」と本木から話を振られた柄本は、「山の上みたいなところの撮影では朝7時くらいに着いた時に、今日は無理なんじゃないかと思うくらい寒かった」と撮影秘話を紹介。すると本木が進行役さながらに話を引き取り、「天候に左右されるそんなハプニングも面白味の一つ」などと語り始めた。

これに柄本が「本木さんのトークの回しが上手い! 色々なバラエティ番組に出て番宣をしたからだ!」とツッコミを入れると、本木は「うるさくてゴメンね」と反省しつつも、すぐに「青木さんはどうですか?」と話を振り、会場は爆笑に包まれた。

さらに本木から「いかがですか、館様は」と指名された宮舘は、「合戦シーンのお昼休憩の時に、みんな甲冑を着たまま食事を頂いたんです。僕からしてみたらこれが絶景で。当時もこんな感じで皆さんは食べていらしたのかなと思いながらお弁当を頂けたのは凄く貴重な経験でした」と撮影を振り返った。

『黒牢城』

村重の密偵として暗躍する重臣・郡十右衛門役のオダギリは、「郡十右衛門という名前が覚えられなくて、今日朝やっと覚えた」とシュールなボケで会場を沸かせた。

また、自身の主演映画デビュー作が黒沢監督作品だったことにも触れ、「黒沢さんは心の師匠というか、先生のような関係を僕は勝手に持っているので、芝居を見られるのが一番緊張します。だからなるべく黒沢組には参加したくはないけれど、お声がけいただけることの喜びが上回ってしまって、最後にはやります!と言ってしまう。そんな自分が許せない…」と照れ笑いを浮かべた。

先日のジャパンプレミアには参加できず、今回ようやくイベント初登壇がかなった喜びを語るオダギリに対し、本木も「ようやくオダギリさんが“天岩戸(あまのいわと)”を開けてくださって。というのは冗談ですが、一緒に参加できたのが本当に嬉しい」と歓迎した。

最後に本木から「吉高さん、言い残したことはないですか!?」と振られた村重の妻・千代保役の吉高が、「この現場が大好きです!」と見事に締めくくると、会場からは温かい拍手が送られた。

続いて話題は、カンヌ国際映画祭でのワールドプレミアを皮切りに、海外メディアから“最高傑作”との称賛が相次ぐ本作についてへ。米国の著名業界誌『The Hollywood Reporter』の評論家は、「『黒牢城』は刀ではなく言葉で斬り合っている。従来のエンタメ時代劇とは異なり、言葉に重きを置いた密室劇のような重厚なスタイルだ。」と絶賛している。

このコメントにちなみ、「劇中やこれまでの人生において、まさに“言葉で斬られた”と感じるような、心に深く刺さった言葉は?」という質問が登壇者たちに投げかけられた。

『黒牢城』

本木は、撮影中に黒沢監督から聞いた「主人公をギリギリのところまで追いつめて突き落としてから解放する物語が好き」という言葉を挙げ、「全ての黒沢作品に通ずる凄い言葉だと思った」と感銘を受けた様子だった。

一方、菅田は黒沢監督から「ホラーが似合う」と言われたことが嬉しかったそうで、本木も「確かに! 読めないような恐ろしさが残る。静かな威圧感がある」と納得。「監督的にはどういう意味合いだったんですか?」と、再び司会役さながらにトークを回していた。

吉高は、「昔おばあちゃんに『あんたは橋の下で拾ってきた』と言われて、それが衝撃でみんなに『私は拾われたらしいよ!』と言いふらした。それを今度はおばあちゃんが商店街の人から聞いたみたいで、物凄く焦って『違う! 違う!』と。それが衝撃的でした」と振り返り、会場の笑いを誘った。

オダギリは、ベートーヴェンの名言である「苦悩を突き抜けて歓喜に至れ」を座右の銘にしていると紹介。青木は、本作で共演した渡辺いっけいから聞いた「この歳でお酒が飲めるようなった」という驚きの一言が印象に残っていると明かした。

そんな中、宮舘は「本木さんから『館様はカメレオン俳優』と仰っていただいて、そこで夢ができました。ぜひそうなれるように頑張ろうと。これから色々な作品に出会って、本木さんからいただいた言葉の意味を確かめながら」としみじみ語った。

そして最後に、「自分で道を切り拓いていく努力をさせていただこうかなと…」と力を込めたものの、「おめ、おめぇました!(思いました)」とまさかの言い間違い。

『黒牢城』

これに本木は、「バラエティ担当に思われているようで、こういう風に自然に立ち振る舞える身体能力も高い! カメレオンだから!」とフォローを試みるも、その隣で吉高は「おめぇました!?」とツボにはまってしまい、「もう転びまくってるじゃん!」と大笑い。会場も大きな笑いに包まれた。

一方、柄本は、かつて共演した石倉三郎からかけられたという「やりすぎず、逃げ道を作ることが粋だからな」という言葉を紹介した。

黒沢監督は、村重が威厳を示すシーンの撮影後に本木が漏らした「向いていない…」という言葉を挙げ、「本木さんは頑張ってやるけれど、やった後に『向いていない…』と正直に現場で言う。大スターってこういうことなんだと思いましたし、荒木村重ってそういう人だったんだろうとその瞬間に思った。撮影中は最初からずっと心に本木さんの言葉が残っていましたね」と振り返った。

これに本木は、「それにずっともがき苦しんだ二ヵ月だったのは確かにあります。黒沢監督の演出も全体的にとにかく決めつけないでくれという、人間の揺らぎがあってこその荒木村重らしさに繋がるということだったので、私も監督のそうした言葉に救われていました」と感謝を述べた。

最後に黒沢監督が登壇者を代表し、「戦国時代を描く作品は色々ありますが、誰が勝ったとか、誰が天下を取ったとかそういう話が多い。荒木村重はそういうところから抜け出した方。どっちが勝った負けたということをやめて、城を逃げ出した方。そんな村重に、僕は非常に心打たれました。現代にもこういう生き方は通じるのではないかと思っているので、この映画からぜひ興味をもっていただいて、この映画を元に彼について学ばれたり、今の時代をもう一度考え直したりしていただけると嬉しいです」とメッセージを送った。

監督が優しい眼差しで語りかけると、登壇者一同は大きくうなずき、会場はもちろん、ライブビューイングが行われた全国の劇場からも盛大な拍手が沸き起こった。

『黒牢城』は現在公開中。