松たか子「こんなすばらしい仕事は近年ない」沢田研二らとの共演語る

#土を喰らう十二ヵ月#松たか子#沢田研二#中江裕司#土井善晴

『土を喰らう十二ヵ月』の初日記念舞台あいさつの様子
『土を喰らう十二ヵ月』の初日記念舞台あいさつの様子

女優の松たか子が11月11日、都内で実施された沢田研二主演映画『土を喰らう十二ヵ月』の初日舞台あいさつに料理研究家の土井善晴、中江裕司監督が登壇。本作に関するトークで会場を盛り上げた。

・ジュリーの凄さとは? 沢田研二、主演映画の公開で振り返るポップスターとしての魅力

松たか子、初めて見た沢田研二は「『8時だヨ! 全員集合』のコントをされている姿」

本作は、原案の水上勉の料理エッセイをもとに、中江裕司監督が独自に物語を創作。長野の山荘で暮らす作家ツトムが、畑で自ら育てた野菜を料理し、季節の移ろいを感じながら原稿に向き合う日々を描く。

ステージには、劇中に登場する「ツトムの台所」を再現した特大パネルが設置され、不在の沢田もパネルで参加する形となった。中江監督は「女性のお客様がたくさん来られていますね。ツトムの身勝手さに呆れられたのでは…主演の沢田研二さんや、原案の水上さんへは苦情は入れないでください! すべて私の妄想です(笑)」とユーモアたっぷりな一言挨拶でスタート。

土井は「なんで私がここにいるんですか? えらい所に連れて来られました。お料理は私が作ったのではなく大自然が作ったんですね。お料理をする人は地球という自然と人間界の間にいる人です。お料理する人がこういう場に来させてもらって大事な役割ゆうのがこの映画をみても感じてもらえると思います」と話した。

脚本を書き始めたのは約4年前。四季を撮るために日本映画としては異例の1年半におよんだ撮影を経て、ついに観客の元へ届けられたことについて中江監督は「夢のようです」と胸の内を吐露。松は出演のオファーをもらって「中江監督、沢田さんとご一緒できるなんて光栄でした。さらに土井さんのおいしいお料理まで食べられる…。こんなすばらしい仕事は近年ない」と撮影の日々を振り返った。

劇中、沢田と共に料理をする松が「あいよ!」と相槌で応える掛け合いのシーンに話が及ぶと、中江監督は「亡くなったツトムの妻・八重子とこんな風に過ごしていたんじゃないかと思って演じていたと現場で松さんがおっしゃっていて、まさかそこまで考えていたとは。そうかもしれないですよね」と水を向けると、松は「そうでしたっけ…? でも『あいよ』の数がどんどん増えていきましたよね(笑)」と会場の笑いを誘った。

劇中にはほうれん草の胡麻和え、たけのこの煮物、胡麻豆腐など、目も心も満たしてくれる旬の野菜で作る料理の数々が登場する。初めて映画の料理監修として携わった土井は「料理はその場が作るもの、浮かび上がってくるものなんです。ただそこに在るものをただ湯がくだけ、ただ焼くだけ。当たり前のことをしています。何もしないことを最善とするのが和食なので、映画の撮影でもきちんとそういうものを共有することができたんじゃないでしょうか」と解説した。

気持ちのよい食べっぷりが印象的な、ツトムと真知子がたけのこを食すシーンについて土井は「意識してできるものじゃないですね、生活感、反射的にでるものです」と演技か本気は分からないと絶賛。松は「たけのこ、すごい熱かったんですよ」と笑いながら応える一幕も。

中江監督は「土井さんは1回だけしか料理を作らないんです。沢田さんもほぼ1回。テイクはほとんど撮らないので、覚悟を決めてやりました」と明かした。

中江監督は沢田の印象について「役を自分に引き寄せるタイプなんです。沢田さんなのか、ツトムなのか分からなくなりましたね。沢田さんを撮っていれば、おのずとツトムを撮っていることになるのでドキュメンタリーのようでもありました」という。さらに、ふと休憩時間に沢田の鼻歌を聞き、劇中に取り入れたというエピソードも告白した。

松は「わたしの初めての沢田さんは、『8時だヨ! 全員集合』のコントをされている姿で、こんなに格好良い人がこんな面白いことをしている…となんて人だと思いました。わたしの甥っ子(市川染五郎)も好きらしくて、この作品で共演できて自慢できます(笑)。私は白馬でのツトムさんとしか会っていないので、わたしの妄想だったのかな…? 沢田さんは面白いことをさりげなく見せられる、そんなテクニックのお芝居を近くでみさせて頂きました」と話した。

土井は「撮影中はずっとツトムでしたね。ツトムしか会ってないなぁと。でも私が撮影現場を後にするときに追いかけて車のドアをたたいてる人がいて、『ありがとうございました』と深々と頭を下げて下さいました。その時、初めて沢田研二に会ったんだと思います」と各々に述懐。

最後に松は「とてもユニークな映画だと思います。(劇中のように)山で生活をしている方は普段の暮らし、そうでない方々も当たり前のことは何かと見終わった後にジワジワくる、そんな映画だと思います。この作品をながく愛していただけると嬉しいです」と舞台挨拶を締めくくった。

INTERVIEW