能登の町並みとフィルムのぬくもりが紡ぐ、静かな感動の物語
映画『港のひかり』の初日舞台挨拶が11月14日に開催され、主演の舘ひろしをはじめ、眞栄田郷敦、尾上眞秀、藤井道人監督が登壇。50万人を超える鑑賞者から寄せられた感想をもとにトークが展開され、互いの印象や撮影の舞台裏が次々と語られた。
・舘ひろし、眞栄田郷敦、尾上眞秀が登壇した『港のひかり』初日舞台挨拶の写真をすべて見る
ついに公開初日を迎えた14日、公開を心待ちにしていたファンの姿で劇場が埋め尽くされる中、舞台挨拶には舘ひろし、眞栄田郷敦、尾上眞秀、そして藤井道人監督が登壇。上映後の熱気あふれる会場にキャスト陣と監督が姿を現すと、客席からは大きな拍手が湧き起こった。まずは登壇者からそれぞれ一言ずつ挨拶が送られ、いよいよイベントがスタートした。

ロケ地となった石川県・輪島市で開催されたジャパンプレミアをはじめ、公開前からさまざまな場所で試写会が行われてきた本作。現在、映画公式Xでは【コメントを投稿して感動を受け継ごう ― 心を照らす港のひかりキャンペーン】を実施中で、本日時点で50万人以上の鑑賞者から感想が届くなど、早くも多くの反響が寄せられている。
舞台挨拶では、鑑賞者から寄せられた感想をもとにトークを展開。まず読み上げられたのは、「古き良き日本映画でした。この令和の時代にこの作品が生まれたのが良いなと思いました」という声。木村大作キャメラマンが映し出した美しい能登の風景の数々は情緒にあふれ、どこか懐かしさも漂う。
冒頭では、キャスト陣に向けて、完成した本作を初めて目にしたときの印象について質問が投げかけられた。舘は「フィルムの映画がなくなっている中で、今回は木村大作キャメラマンのこだわりで35mmフィルムで撮影しているんですが、画の奥深さみたいなものを感じました」と語り、フィルムだからこそ表現できた情緒あふれる映像美に心を掴まれたという。
続く眞栄田は、「フィルムの良さももちろんですが、物語のテーマも“自己犠牲”。ザ・日本映画という感じだなと思ったんですが、僕ら世代も出させていただく中で、舘さんと監督、大作さんの年齢差もあったり、いろんな世代との融合や新しさもあって、見応えのある作品になっているなと思いました」と魅力を熱弁。
尾上は「昭和(っぽい)というのがよくわからないのですが…(笑)」とジェネレーションギャップを明かし会場の笑いを誘いながら、「大作さんにフィルムで撮ってもらえたということが、貴重なことなんだなと後々知って、すごく宝物というか…嬉しい気持ちです」と笑顔を見せた。

そして藤井監督も「僕自身もフィルムで撮るのは初めてで、今までやってきたこととは真逆でした」と初めて尽くしの撮影を振り返り、「何度も撮り直して練度をあげていくというのとは違い、1発で本番OKを調整しなきゃいけないので、これまでとは違う映画作りを楽しめましたし、俳優さんたちの感想を聞くとやって良かったなという安堵感もあります」と語り、胸を撫で下ろしていた。
次に読み上げられたのは、「舘ひろしさんが今回、渡哲也さんの姿に被って見えた」という感想。この感想を受け、MCから舘へ「自身の中で恩師のような存在を思い浮かべる場面があったか」と問われると、舘は「そういうふうに演じようと思っているわけではなかったんですが、渡さんと初めてお会いして40年ずっと一緒でしたから。どこかいつも渡さんを見ていたので、似てくるんでしょうね、やっぱり」としみじみ語った。
続けて「顔は似ていないと思いますが(笑)」と冗談を交えつつも、「(自分で見ても)雰囲気が似ているところはありました。ちょっとした佇まいとか、顔の角度とか」と自己分析した。
また、感想の中には、眞栄田演じる青年期・幸太について、「少年時代の幸太とおじさんを経て、青年になってからの2人の再会の場面は本当に涙を誘いました」という絶賛の声も。
少年期の幸太を演じる尾上からバトンを受け、約12年の時を経て大人になった幸太を好演した眞栄田は、演じるにあたり「おじさんと出会ったことで幸せに生きていたこととか、おじさんから教わった強さや優しさを心の中で思い続けている。それを見せられたらいいなと思いました」と意識した点を明かした。
さらに、尾上演じる少年期の幸太と三浦が何気ない時間を共に過ごすシーンについて触れる鑑賞者も多く、「おじさんと少年が輪島の朝市で買い物をしているシーンが幸せそうで心に残っています」といった感想も寄せられた。
MCから舘との共演について問われた尾上は、「舘さんはすごく優しい方で。撮影で船に乗るシーンがあったんですが、その日波が荒れていて…。僕が酔いそうになっていたんですが、舘さんにそれを伝えたら“波を楽しめばいいんだよ”と伝えてくれて。それで酔わなくなって、気を遣ってくださいました」と撮影時のエピソードを披露。

尾上からの言葉に、舘は「ありがとうございます(笑)」と照れ笑いを浮かべながら、「(尾上が)自分で酔いそうと思い込んでいたので、“遊んじゃえ”って。ジェットコースターに乗ったような気持ちで楽しめばいいんじゃないかと伝えたんです」と補足した。
さらに感想の中には、「少年期の幸太の“目”は光を感知していないように感じ、三浦の“目”は善悪を露わにしているなど、“目”で物語ることが多い作品であったように思いました」という鋭い考察もあった。
この感想に対し監督は、「今日はお越しいただいたお三方を見ていただいてもわかるように、素晴らしい目を持った俳優さんとご一緒することが叶いました。舘さん演じる三浦が幸太を見る目と、三浦が極道にいた時の目というものを演じ分けることも自然にやってのけてくださいましたが、目というのはキャスティング時点で大事にしていました」と、“目の表現”を重視していたことを明かした。
続けて「少年期の幸太を演じる眞秀は本作が映画初出演でしたが、目の見えない少年を演じるために一緒に学校を通ったり体験をしたり、訓練をたくさんしてくれて。それがフィルムの中で写ってくれていたらいいなと思っていました」と語り、作品への深い思いを覗かせた。
次に「舘さんの演技がすごかった。佇まいや仕草が素晴らしい!」という感想が読み上げられると、トークはキャスト陣の“好きなキャラクター”の話題へ。
舘は「僕はやっぱり、郷敦くんがよかったなと。これからのスターになっていく人ではないかなと。僕の推しです」と愛情たっぷりにコメント。

さらに「それとやっぱり、(八代役を演じた)斎藤工くんですね。眉毛を剃って、あの役に挑んでくれた。俳優が自分の体に傷をつけるということは、すごく勇気がいること。それをしてでもこの作品に向かってくれたあの気持ちが嬉しいですよね」と感謝を述べた。
眞栄田は、「舘さん、眞秀くんはもちろんですが…石崎役を演じられた(椎名)桔平さんですね」と椎名の名を挙げ、「急に歌い出すところだったり…本当に良い意味で気持ち悪くて。怖いし不気味で…急に歌い出すシーンは、今後のお芝居で真似したいなと」とリスペクトを語る。
尾上も「僕は舘さんです」と迷わずコメントし、「声がすごく温かくて、ホッとさせてくれる声ですごく好きです」と微笑むと、舘も「ありがとう」と優しい眼差しを向けた。
終盤で読み上げられたのは、「孤独だった少年のために、おじさんがついた優しい嘘に胸が締め付けられた」という感想。三浦が幸太のためについた“優しい嘘”に心動かされたという声も多い。舞台では、キャスト陣が“誰かのためを想ってついた嘘”の話題に挑むことに。
難問に頭を悩ませるキャスト陣。舘は「難しいなぁ…」とつぶやきつつ、「僕はアイスクリームが好きなので、1日に2個か3個くらい食べていたら奥さんからダメだと。内緒で食べていたら“あなた食べてるでしょ”って…、“食べてない”って嘘をついたことはあります(笑)」と微笑ましいエピソードを披露し、会場を沸かせた。
尾上も「僕もお母さんから“今日薬飲んだ?”と聞かれて、“飲んだよ”って答えるんですけど、たまに飲んでない時があります(笑)」と続き、“自分のための嘘”トークが連発する展開に。
一方、眞栄田は「僕は正直嘘がつけないので、あまり(こういったエピソードは)ないんですが…」と前置きしつつ、「こういう正解がない世界にいると、“良かったよ”とか“かっこよかったよ”って言ってくださることが多いんですが、それを疑ってしまう自分がいて…。それは嫌だなと思うことはあるんですよね。今回はこの作品で本当の意見を聞かせていただきたいなと思っています」と真摯に語った。
そんな中、舘は「僕は嘘でもいいから褒めて欲しい! 私は褒められて伸びるタイプなので(笑)」とアピールし、再び笑いを誘った。
“誰かのための嘘”に関する回答が出ないまま、ついに藤井監督へバトンが渡る。監督は「舘さんは現場ですごく気を遣ってくださって。フィルム撮影など僕も慣れないことも多い中、舘さんが“大丈夫? 楽しんでる?”って何回も聞いてくださって救われたんです」と振り返り、「その度に“楽しいです!”って返していたんですが、本当は楽しくない時もありました(笑)」とまさかの暴露で会場を大いに沸かせた。

締めくくりには、舘が観客へメッセージ。「本日はお忙しい中お越しいただきありがとうございました。本当に素晴らしい映画になったと思います。一度のみならず二度、三度と見ていただいて、この映画の素晴らしさをお友だち、ご家族にお伝えいただけたら嬉しいです」と語り、客席からは再び盛大な拍手が湧き起こる中、初日舞台挨拶は幕を閉じた。
『港のひかり』は全国公開中。
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