美しく、官能的で、そして強烈! 運命に翻弄される青春の輝き『美しい夏』

#イタリア映画#美しい夏

(C)2023 Kino Produzioni, 9.99 Films
(C)2023 Kino Produzioni, 9.99 Films

イタリア文学界の巨匠チェーザレ・パヴェーゼのストレーガ賞受賞作を映画化した『美しい夏』が公開される。国際的な注目を集める本作のキャラクタービジュアルが解禁となり、著名人たちからのコメントが到着した。

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戦争の影が迫る中、少女が新しい世界に出会った夏

第77回ロカルノ国際映画祭のピアッツァ・グランデ部門に出品され、国際的な注目を集める本作は、戦争の影が忍び寄る1938年のイタリア・トリノを舞台に、多感な少女が少しずつ大人になる姿を繊細に描く青春ドラマだ。

田舎からトリノに出てきた、16歳の少女ジーニア(イーレ・ヴィアネッロ)。友だちや恋、憧れとは無縁の環境でお針子として働く日々を送っていた彼女は、ある日、3つ歳上で、画家のモデルとして奔放に生きるアメーリア(ディーヴァ・カッセル)と運命的な出会いを果たす。

アメーリアに誘われるまま、芸術家たちの集う新たな世界への扉を開かれ、ジーニアは大人の階段を上り始める。

思春期真っただ中のジーニアと、既に自立した女性としてたくましく生きるアメーリアの2人が、互いの姿に自分の未来/過去を映しながら、徐々に惹かれ合っていくのだが……。

(C)2023 Kino Produzioni, 9.99 Films

主人公ジーニアを演じるイーレ・ヴィアネッロは、幼少期にアリーチェ・ロルヴァケル監督と出会い2011年に『天空のからだ』で主演に抜擢され、鮮烈なデビューを飾った。そののち、さまざまな話題作に出演し続けている。

ジーニアを写したキャラクタービジュアルには、自分の人生に何か楽しいことが起こらないかと甘い期待を抱きながら、電車の窓越しに街を見つめる表情や、制服に身を包み、お針子として任された仕事に真摯に向き合う健気な姿が切りとられている。

一方、ジーニアの運命を大きく変えるアメーリア役には、モニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセルの娘であり、ファッションモデルとしても活躍するディーヴァ・カッセルが抜擢された。

アメーリアびキャラクタービジュアルには、劇中の「絵のモデルよ/座ったり横たわったりして、ポーズをとるの」という台詞が添えられ、彼女の自立した佇まいと、生き方への誇りが映し出されている。

そんな少女たちの「美しい夏」を描いた本作。はやくも各界著名人から、絶賛のコメントが到着している。

■緒形龍(俳優・モデル)

儚さと美しさが繊細に織り込まれた美しい一作でした。Yile Yara Vianelloの目に宿る切なさと好奇心、そしてDeva Casselの圧倒的な美しさと凛とした気高さ。この二人が醸し出すケミストリーに、心が静かに満たされました。

■児玉美月(映画批評家)

「軽薄な男たちといるより、女同士の方がいい」と語り合う女たち。

本当は誰といたいのか、本当は誰に惹かれるのか──彼女たちは心の奥ではきっと知っている。

『美しい夏』は、華やかな刹那と黄昏の憂鬱で彩られていたあの季節の記憶を、ここに呼び起こしてゆく。

■関口英子(イタリア文学翻訳家)

自立した女性アメーリアに惹かれ、背伸びして大人の世界に飛び込んだジーニア。憧憬や羨望、憂いや戸惑い、恥じらいや不安といった揺れ動くやわらかな感情を映し出す彼女の澄んだ瞳とまっすぐな眼差しに、パヴェ―ゼが繊細な文章で紡いだ、二度と戻ることのない美しい夏の青春と傷痕がすべて凝縮されている。

■佐々木敦(批評家)

パヴェーゼの名作小説の切なくも鮮やかなアダプテーション。

誰もが自分の「美しい夏」を持っている。

この夏、多くの観客に「あの夏」と出会って欲しい。

■マッシ(ライター・エッセイスト)

美しく、官能的で、そして強烈。人間の心の最も深い部分も表現していて、最後まで視聴者の心を掴んで離さない。パヴェーゼの小説の古さを感じさせないほど、現代を生きる僕たちの胸にも響いてくる。

■水上文(文筆家)

恋に落ちる二人の女性——ラウラ・ルケッティは、女性の身体を消費させず、異性愛規範によって掻き消されかねないクィアな感情を逃さない。だからこの映像美に浸ることが出来るのだ。レンズが捉えるすべての瞬間が忘れ難い。

■山内マリコ(小説家)

憧憬のまなざしを向ける側、向けられる側。

彼女たちは異性ではなく同性こそ自分たちに必要なことを、最初から知っているみたいだ。

画面の隅々に青春のエッセンスがぎゅっと凝縮して、すべての瞬間がまばゆい。

■山崎まどか(コラムニスト)

二人の少女がお互いに寄せる想いが「美しい夏」そのもの。

ジーニアとアメーリアが自転車で走るシーンのときめきが、彼女たちが一緒にいられる季節がずっと続きますようにと祈るような気持ちだった。

残酷な男女の世界の現実や、戦争や、あらゆる悲しみにこの輝きがかき消されることがないように。

■和田忠彦(イタリア文学者/東京外国語大学名誉教授)

「あのころはいつもお祭りだった」——ひるがえって今は、と問えば、失ったものの正体や在処に思いが向かい、あらためてその喪失の歳月がよみがえってくる。中編小説『美しい夏』をひらくこの一文を、ラウラ・ルケッティはどう読んだのか。その答えが、繊細にして容赦ない手捌きでわたしたち観客に手渡される。

『美しい夏』は2025年8月1日より全国順次公開。