綾野剛×柴咲コウ、バチバチの演技対決！ 三池崇史監督が「2人とも狂ってる」と絶賛した“奇妙な家庭訪問”

現代社会に存在する闇を耐え難い緊張感と底知れぬ絶望感で映像化した問題作

20年前、日本で初めて教師による児童への虐めが認定された体罰事件——その真相に迫った福田ますみのルポルタージュを映画化した衝撃作『でっちあげ　～殺人教師と呼ばれた男』。本作より、綾野剛と柴咲コウによるバチバチの演技合戦をとらえた本編映像「世にも奇妙な家庭訪問」編を紹介する。

・全員あやしい！緊張感あり過ぎなキャラクター映像を解禁『でっちあげ ～殺人教師と呼ばれた男』

2003年、小学校教諭・薮下誠一（綾野剛）は、保護者・氷室律子（柴咲コウ）に児童・氷室拓翔への体罰で告発された。体罰とはものの言いようで、その内容は聞くに耐えない虐めだった。

これを嗅ぎつけた週刊春報の記者・鳴海三千彦（亀梨和也）が“実名報道”に踏み切る。過激な言葉で飾られた記事は、瞬く間に世の中を震撼させ、薮下はマスコミの標的となった。誹謗中傷、裏切り、停職、壊れていく日常。次から次へと底なしの絶望が薮下をすり潰していく。

一方、律子を擁護する声は多く、550人もの大弁護団が結成され、前代未聞の民事訴訟へと発展。誰もが律子側の勝利を切望し、確信していたのだが、法廷で薮下の口から語られたのは、「すべて事実無根のでっちあげ」だという完全否認だった。

主人公の薮下誠一を演じるのは綾野剛。共演には柴咲コウ、亀梨和也、木村文乃、光石研、北村一輝、小林薫ら豪華キャストが肩を並べる。監督を務めるのは、『悪の教典』（12年）『初恋』（20年）『怪物の木こり』（23年）など映画での活躍はもちろんのこと、2025年にはTVドラマ『新・暴れん坊将軍』でも監督を務めた三池崇史。

今回紹介するのは、殺人教師の疑惑を向けられることとなる薮下誠一（綾野）と、そのいじめの対象とされる児童・氷室拓翔の母・氷室律子（柴咲）、2人が対峙することとなる世にも奇妙な家庭訪問の本編映像だ。

映像は、左右に2分割された画面から始まる。土砂降りのなか、傘も差さずに氷室家のある高級マンションのエントランスへと歩いていく薮下の後ろ姿が映し出される。冒頭では、左右の映像にわずかな違いしか見られない、ごくありふれたシーンのようだが、その後に続く【氷室律子の供述】と【薮下誠一の供述】によって、状況は一変する。

【氷室律子の供述】律子の目に映る薮下は、横柄で傲慢な人物として描かれる。彼女に迎えられ、扉が開いた瞬間から「正直気分悪いです」と、夜遅くに行われた家庭訪問への不満を口にする。靴下がびしょ濡れにもかかわらず、勧められたスリッパを履くことなく、そのまま部屋に上がり込む。そして穏やかな口調ながらも、児童である拓翔への憎悪すらにじむような言動を見せ、突然机を叩いて律子を困惑させるその様子は、まさに危険人物そのものだ。

【薮下誠一の供述】一転して、雨に濡れ恐縮しきりの薮下。そして彼を無表情で迎え入れる律子。薮下の目に映る律子の振る舞いは、一般的な家庭のものとはかけ離れ、どこか異様な雰囲気をまとっている。じっと彼を見つめる視線、冷蔵庫を激しく閉める仕草など、律子の言動には圧の強さがにじむ。彼女は、自らが小学生まで過ごしたというアメリカの教育について、延々と語り続ける。

「“アー、ブゥ、クゥッ、ドゥ（※ABCDの発音）”って言い始めた時、空気が一気に凍るんです。このシーン、全体が凍りつくんですよ」と綾野が撮影を振り返るように、能面のような表情で「アー、ブゥ、クゥッ、ドゥ」と語り出す律子に合わせ、薮下も同じように繰り返す。その姿は、もはや何かに支配されているかのようだ。律子は、どこか薮下を試すかのように振る舞い、冷たく奇妙な人物として映る。

綾野はこの2パターンの同じシーンの撮影について「テストの時にとてつもない緊張と高揚が連鎖した。柴咲さんから出ている律子さんのムードを受け取れたので、あの薮下が生まれてきました」と語る。

また、「すごく自由にやらせてもらった」「2人の世界に入っている」とも語っており、同じシチュエーションで【狂気をまとった人物】と【それに困惑する人物】を静かに演じた。あまりにも強烈でヒリヒリするような演技を見せた綾野と柴咲は、三池監督から撮影直後に「2人とも狂ってる」という最大級の絶賛を得た。告発するものとされるもの、それぞれの供述を基にした、あまりにも奇妙な家庭訪問。あなたならどちらを信じるだろうか。

あわせて、同シーンの薮下と律子、そして薄暗いダイニングテーブルで”最初の対峙”をする両者の計3点の場面写真も解禁となる。

『でっちあげ　～殺人教師と呼ばれた男』は2025年6月27日より全国公開。