2ページ/のっけから興奮しっぱなし!『バクマン。』の漫画愛と青春ドラマ

#元ネタ比較

『バクマン。』
(C)2015映画「バクマン。」製作委員会
『バクマン。』
(C)2015映画「バクマン。」製作委員会

“2ページ”
一点集中型テーマとバディムービーの面白さ

「週刊少年ジャンプ」で連載された、「DEATH NOTE」の大場つぐみ・原作&小畑健・作画による大ヒット漫画「バクマン。」が実写化。コンビ漫画家を目指す少年2人が「週刊少年ジャンプ」で1番人気を取ろうと挑戦する青春ドラマだ。

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物語の主人公はコンビ漫画家を目指す少年2人、文才のある原作担当の高木秋人・通称シュージンと、画才のある作画担当の真城最高・通称サイコーだ。クラスで目立つこともなく無為な日々を過ごしていた高校生のサイコーはクラスメイトのシュージンから一緒に組んで漫画家になろう!とぐいぐいと押し強く誘われる。密かにサイコーが思いを寄せているクラスメイトの美少女・亜豆(あずき)をモデルにイラストを描いたノートを、文才はあるが絵が下手なシュージンが見たからだ。勢いのままシュージンは、亜豆にも2人で漫画家になることを宣言し、声優になることを夢見る亜豆に漫画がヒットしてアニメ化されたらヒロイン役をつとめるように頼む。意外とあっさりと亜豆が快諾したものだから、サイコーは勢い余ってお互いの夢が叶ったら結婚してください!とプロポーズ!! この願いも亜豆は快諾し、かくてシュージンとサイコーは漫画家の頂点を目指す挑戦を開始するのである。

まったくもっていかにもな展開で、漫画かよ!と突っ込みたくなるような物語の始まりにワクワクしてしまう。しかし、ここで原作ファンならお気づきだろう、そう、シュージンとサイコーの出会いは映画版では高校なのだ。原作では2人は中学で出会い、学年1位の成績優秀なシュージンがサイコーの勉強を見ることを始め、受験や進路についてのドラマもある。でも、映画版では学校生活や家庭などは必要最小限という程度で、主題である漫画制作に一点集中型に絞られている。映画版では全20巻ある原作のうちの7巻あたりのエピソードまでとなり、原作の山あり谷ありの末のラストのあの大団円まではいかず、青臭い青春真っ只中のままクライマックスを迎えるのである。あのエピソードはないんだ! この登場人物も出てこないんだ! ともったいなくも思い、昨今の東宝の漫画原作実写映画のパターンである前後編2部作にはできなかったのかなぁと一瞬思った。ただ、この青春映画の疾走感は2部作だとここまでは味わえなかっただろう。やっと振り出しまできたという余韻を残したラストは爽やかな観後感であり、ここは思い切って削ぎ落として正解だ。

これも削ぎ落としたのかと思ったのは、漫画に関してもさらに絞られ、主人公2人だけで漫画を作り上げる路線にシフトされている点が一番大きい。アシスタントは出てこないし、漫画は編集者が作家を導いて作り出すと言っても過言でないほど、編集者の存在は大きい。けれど、映画版でも編集者はもちろん登場するが、あくまで2人のサポートというスタンスで、原作ほどがっつりと二人三脚、いや三人四脚で組んでやっていくというほどではない。

天才型ではない2人が「週刊少年ジャンプ」の“王道”では勝負に出られないんじゃないかと行き詰まったとき、編集者が“王道”ではなく“邪道”で行くよう指導するが、映画版ではあくまでシュージンが“邪道”を思いつく。このようにサイコーとシュージンの2人の力で暗中模索しながら漫画を生み出していくという流れがバディムービーとしての面白さもさらに高めることになっている。

そのため漫画家たちも人数は削られ、映画版では基本的に2人っきりで漫画を描くというスタイルで、漫画家たちはみんなで協力する仲間というよりはどちらかというとライバル的な存在として描かれる。逆に要所、要所で漫画家たちが集まるときは“トキワ荘”のような空気が新鮮に感じられて熱くなる。漫画家仲間で、ファンの間では主人公2人と争うほど人気が高く重要なキャラクターである新妻エイジも、映画版では漫画家仲間というよりは悪役っぽいライバルとなっている。もっとわかりやすい悪役であるミュージシャンの間界野昂次や七峰透は一切登場せず、悪役ライバルは新妻エイジが一手に引き受けた形だ。また、主人公2人が手がける作品数ももちろん、削られている。なんてったって原作では2人の初連載作品である「疑探偵TRAP」まで辿り着かないのだからして。といっても、2人の作品の傾向を示し、連載獲得バトルが盛り上がるように原作からチョイスした作品が登場するので安心してもらっていい。

しかしながら一番大胆にカットされたと思う登場人物とエピソードは、見吉香耶の存在だ。クラスメイトで亜豆の親友でシュージンの彼女で、漫画制作でもプライベートでも2人に大きく関わる世話焼き女房であり、もうひとりの亜城木夢叶と言ってもいい……そうだ、2人の名付け親でもある見吉が出てこないのだから、2人の“亜城木夢叶”というペンネームも出てこないのだった。この見吉の存在の全面カットは個人的にはちょっとガッカリした。現実感なくただかわいいだけのヒロインである亜豆に対して、美少女でもなくリアリティたっぷりで強引だけど憎めないイイやつキャラの見吉は、女子としては感情移入できるのに。少年漫画らしく見た目だけで亜豆に恋焦がれるサイコーのロマンチスト系恋愛より、強引に言い寄られて付き合っていくうちにいつの間にか本気で好きになってるシュージンのリアリスト系恋愛のほうが応援できるのに、ちと残念。

でも、ここも恋愛要素を増やすよりもあくまで漫画に絞って、青春バディムービーに仕上げた潔さは結果的に正解だろう。…“3ページ”に続く(文:入江奈々/ライター)

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『バクマン。』は10月3日より全国公開される。

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