【この女優に注目】新生ダコタ・ファニング!女優へと脱皮した天才子役の繊細演技に注目

『17歳のエンディングノート』
(C) 2012 Blueprint Pictures (Now) Limited, BBC and The British Film Institute. All Rights Reserved. 
『17歳のエンディングノート』
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白血病に侵され、自分の人生が残り少ないと悟った17歳の少女が、死ぬまでにやりたいこと(To Do リスト)を書き出して、ひとつひとつ行っていく。

『17歳のエンディングノート』ダコタ・ファニング インタビュー

いかにもありそうといえばありそうな内容だ。名前も『17歳のエンディングノート』(原題は『NOW IS GOOD』)というベタさ。さらに、その主人公をダコタ・ファニングが演じると聞くとどうだろう。俄然興味が沸く人もいれば、「ダコタか、見なくてもいいかな」と反応は両極端に別れるのではないだろうか。

その理由は、彼女がこれまでに成し遂げてきたキャリアにある。5歳から芸能界で活躍してきたダコタ。01年の『I am Sam アイ・アム・サム』でショーン・ペンの娘役としてスクリーンに現れた幼いダコタは、見る者みなを魅了した。あまりに可愛らしく、あまりに演技に長けた少女。彼女が天才と呼ばれるのは必然だった。

しかし“天才”子役と呼ばれることは、必ずしもプラスになるとは限らない。ダコタにも、はなから、きっと成長するに従って消え去られていく存在なんだろうという冷めた反応が含まれていたはずだ。

その後も『マイ・ボディガード』(04年)、『宇宙戦争』(05年)などの話題作に多く出演してきたダコタ。しかしやはり最初のインパクトを超えることはできず、近年では第2作から参加した『トワイライト・サーガ』シリーズへの出演も、ダコタである必要があったのだろうかという疑問を覚えた。美しく成長した妹エル・ファニングの活躍(『SUPER 8/スーパーエイト』『幸せのキセキ』)もあり、ダコタの存在感が薄くなっていたのは認めざるをえない。

そこに来ての、本作だ。冒頭に、ありがちな物語とは書いたものの、ダコタが子役からの脱皮過程でハリウッド大作ではなく、イギリスのひとりの少女の物語を選んだことは正しい選択だった。

ここには、いわゆる子役らしい“演技”を見せつけるダコタはいない。4年という長い闘病生活から、投薬治療を止め、自らの死を受け入れるまでに至った17歳のテッサ。彼女は、残り少ない時間を、まだやっていない「SEX、ドラッグ、万引き」といったアブナイ、しかしながらティーンならば興味が沸いて当然ともいえる事柄に挑戦していく。

諦めきれずに治療法を探し続ける父や、事実を受け止めきれない母をよそに、死を見据えたテッサはあまりに大人びていて、ときに毒も吐く。外には極力出さずにいるとはいえ、心に葛藤を抱える少女を、ダコタは非常に抑えた芝居で見せていく。極限まで抑えられた繊細な演技に、これまでにないダコタを見る人は多いはずだ。そして物語はテッサの予期していなかった方向へと流れる。恋に落ちたのだ。

人生が短いことを知った上での恋ほど辛いものはない。そんなことはテッサも、相手のアダム(『戦火の馬』のジェレミー・アーヴィン)も承知だが、少年少女の恋を止めることなど、何にもできない。そしてこの恋が、テッサや周囲の人々に変化を与えていく。

やり残したことをどれだけできるか、ただそれだけの場だった世界。でも世界が美しいことにテッサは気づく。それは生への執着を生むことにも繋がるが、それこそが生きている証だともいえるだろう。そしてこの大きな変化さえも、ダコタはわずかな、本当にわずかな表現で魅せていく。

本作ではしばしば「ショートカットのダコタが見られる!」という宣伝文句が出ているが、見どころはそこではない。とはいえ、ショートカットにしたことで、ダコタ自身に与える影響は少なからずあったようだ。「ベリーショートにしたことで、自分の感じ方が変わった」と発言しており、またイギリスが舞台とあって、本編でのダコタはイギリスのアクセントで話す。このことも「まったく新しい喋り方になって、自分とは全然違う人間だと感じられるなんて、“初めて”のことだった」と語っている。

ダコタにして“初めて”の経験だったと言わしめた『17歳のエンディングノート』。子役子役した顔ではない、一女優としての繊細な演技を見せる(といいつつ、彼女はまだ19歳だが)新生ダコタ。彼女の女優としての活躍はまだ始まったばかりだ。(文:望月ふみ/ライター)

『17歳のエンディングノート』は4月27日公開より公開中。

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