HYDE、あいみょん、橋本絵莉子、安部勇磨…適材適所の作家を起用!

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【映画を聴く】『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』前編

『音タコ』こと『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』は、“声帯ドーピング”によって驚異的に大きな歌声を得たカリスマ・シンガーのシン(阿部サダヲ)と、声が小さすぎるストリートミュージシャンのふうか(吉岡里帆)の出会いから繰り広げられる、ハイテンション・ロック・コメディ。原案・脚本・監督は、『時効警察』シリーズや『俺俺』『転々』などで知られる三木聡で、主題歌や劇中曲を豪華アーティストが手がけていることも話題だ。

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あからさまにマリリン・マンソンを想起させるシンが率いるバンド、EX MACHiNAのレパートリー「人類滅亡の歓び」の作曲はHYDE(作詞は元SUPERCARのいしわたり淳治)、後述する「体の芯からまだ燃えているんだ」はシンガー・ソングライターのあいみょん、「まだ死にたくない」「ゆめのな」は元チャットモンチーの橋本絵莉子、ふうかの在籍する“君のいる風景”というバンドのオリジナル曲「夏風邪が治らなくて」はnever young beachの安部勇磨といった具合に、幅広い世代から適材適所の作家陣が起用されている。

特に、ダークでヘヴィーながら一度聴いたら忘れられないキャッチーなサビがHYDEらしい「人類滅亡の歓び」は、自身も“破壊”の名でグループ魂のヴォーカルを務める阿部サダヲのハイトーン・ヴォイスが乗ることで見る者に強烈な印象を残す。三木監督は自身の脚本を一言一句変えさせないシビアな演出で知られるが、この曲では作詞のいしわたり淳治と綿密な意見交換がなされたのだろう。無軌道で破天荒なシンというキャラクターを明確に示しつつ、ゴシックメタル的な世界観をデフォルメした形で聴かせる楽曲に仕上がっている。

ほかにも本作では、田中哲司の演じるシンの事務所社長の風貌がレッド・ツェッペリンの名物マネージャーとして知られるピーター・グラント風だったり、松尾スズキの演じるふうかの親戚の“ザッパおじさん”が名前の通りフランク・ザッパ風だったりと、分かりやすくロック的な記号が多く散りばめられており、映画としてのエンタメ性をグッと持ち上げている(後編へ続く…)。

後編「ディストピアからユートピアへの鮮やかな転調、その爽快感を体験して!」