第65回カンヌ国際映画祭パルムドールは老夫婦の危機を描いた『AMOUR』

5月27日(現地時間)、第65回カンヌ国際映画祭が閉幕し、最高賞のパルムドールを下馬評通り、ミヒャエル・ハネケ監督の『AMOUR(原題)』が受賞した。ハネケは2009年の『白いリボン』に続く2度目のパルム・ドール受賞。これはフランシス・フォード・コッポラ、今村昌平、ビレ・アウグスト、エミール・クストリッツァ、そしてダルデンヌ兄弟に続く快挙だ。

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妻の発病をきっかけに危機が生じる老夫婦を81歳のジャン・ルイ・トランティニャンと85歳のエマニュエル・リヴァというフランス映画界の名優2人が演じ、彼らの娘役でイザベル・ユペールが共演の『AMOUR』は、上映直後からパルムドール最有力候補と目されてきた。授賞式では客席総立ちでハネケ監督と主演2人をステージに迎えた。ハネケ監督は「彼らこそがこの映画の本質です」とトランティニャンとリヴァを讚え、監督に続いて主演俳優2人もスピーチ。会場は感動に包まれ、しばし拍手が鳴り止まなかった。

女優賞は、『AMOUR』と共にパルムドール賞受賞を有力視されていた『BEYOND THE HILL(英題)』のコスミーナ・ストラターンとクリスティーナ・フルテュール。ルーマニアの修道院を舞台に、姉妹のように育った孤児の女性2人の友情の物語は、2005年に起きた実話を元にしている。主演した2人は、共にこれが映画初出演。

男優賞は、トマス・ヴィンターベア監督の『THE HUNT(英題)』のマッツ・ミケルセン。離婚した40歳の男が小さな嘘をきっかけに幼児性愛者の疑いをかけられる『THE HUNT』は映画祭前半で上映され、その後カンヌを離れていた彼が再び27日のレッドカーペットに姿を現わした時点で予測された通りの結果となった。

監督賞は、メキシコの『POST TENEBRAS LUX(原題)』のカルロス・レイガダス。審査員特別グランプリはイタリアのマッテオ・ガローネ監督の『REALITY(原題)』。08年にイタリアの犯罪組織の闇を描いた『ゴモラ』で同賞を受賞した監督による、テレビのリアリティ番組を題材にしたブラックコメディ。審査員賞は本映画祭常連のケン・ローチ監督の新作『THE ANGEL’S SHARE(原題)』。ローチは06年、『麦の穂をゆらす風』でパルムドールを受賞している。

今年は脚本賞もパルムドール受賞経験者。女優賞も受賞した『BEYOND THE HILL(英題)』の監督でもあるクリスチャン・ムンジウだ。ムンジウは07年に『4ヶ月、3週と2日』でパルムドールを受賞している。新人監督賞に当たるカメラドール賞は「ある視点」部門に出品されたアメリカのベン・ゼイトリンの『BEASTS OF THE SOUTHERN WIND(原題)』に輝いた。

イランの巨匠、アッバス・キアロスタミ監督が日本を舞台に、奥野匡、高梨臨、加瀬亮を起用して撮った『ライク・サムワン・イン・ラブ 』は残念ながら無冠に終わった。

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