小林薫『深夜食堂』海外人気に驚き「なぜ受け入れられているのか不思議」 日本外国特派員協会の記者会見に登場
顔の傷の謎は「明かされることはないんじゃないかな」
全世界シリーズ累計発行部数900万部突破、日本を代表する国民的「食」コミックとして知られる安倍夜郎の同名コミックを原作に、2009年小林薫主演でドラマ化された『深夜食堂』の新シリーズが放送決定。放送を前に、主演の小林薫が日本外国特派員協会(FCCJ)で行われた記者会見に登壇。7年ぶりに帰ってきた『深夜食堂』の撮影で感じたことや、海外でも愛されるシリーズの魅力について語った。
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全世界シリーズ累計発行部数900万部突破、日本を代表する国民的「食」コミックとして知られる安倍夜郎の同名コミックを原作に、2009年小林薫主演でドラマ化された『深夜食堂』。第一作目が深夜ドラマながら国外でも反響を呼ぶと、2011年に『深夜食堂2』、14年には『深夜食堂3』と人気シリーズ化。
16年からは、Netflixオリジナルドラマとして『深夜食堂4』『深夜食堂5』が制作され、世界190ヵ国でストリーミング配信中。さらに、『映画 深夜食堂』(15年)『映画 続・深夜食堂』(16年/両作ともに、松岡錠司監督)として二度の映画化。その人気は日本国内にとどまらず、中国・韓国ではリメイクもされ、世界中のファンを魅了してきた。そして今年26年10月、前作から7年ぶりにスタッフ・キャストが再集結し、ドラマ『深夜食堂』新シリーズが放送される。
まず、海外で人気が出た理由を聞かれると、「実感としてはあまりない」としつつ、「2009年にドラマの放送をしたとき、1~2話が出てすぐ、海外では海賊版で見られていると聞いて、とてもびっくりしました。その国の字幕が出ているものが出回っているようで、それは僕の経験ではなかったことなので、海外の方にもウケているんだなと驚きました」と当時を振り返った。
記者から、映画は台湾でも多くの観客を集め、その年の『名探偵コナン』を上回る人気だったと紹介されると、「風習とか食事に関しても異なると思うのですが、逆に海外の皆さんに聞きたく、日本の狭いところで、肩が触れ合いそうな場所で他人と食事するという感覚はあまり海外の方はお持ちではないと思うのですが、『深夜食堂』のドラマが海外でも受け入れられていて、不思議だなと思っています」と率直に語った。台湾のファンに向けては、「応援ありがとうございます。台湾の女優さんがゲスト出演される回もありますので、お楽しみにされてください」とメッセージを送った。
7年ぶりの新シリーズについては、「僕たち演者の間でも噂も出なかったので、突然再開すると聞いてうれしい驚きでした」と明かす。撮影の裏側にも触れ、「予算の都合もあって、スタジオをどこにするかが毎回大変なテーマなんです。映画スタジオを借りると高いので(笑)、倉庫をスタジオ代わりにしてセットをつくりあげているので、スタッフの方もたくさん探されたと思います。1月の末に撮影をスタートしたので、えらい現場が寒かったのを覚えています」と苦労を語りつつ、「ただ、僕らキャストもスタッフもブランクを感じさせない現場でして。あのセットの中に入ると時間を忘れて、和気藹々とやれましたし楽しかったです」と振り返った。

7年ぶりにマスターを演じるにあたっての思いを問われると、「今回に限らず、どこか奇跡のようなものに支えられている気がします」と切り出し、「最初に松岡監督に相談して、彼が映画のスタッフを連れてきてくれたんですね。今回集まったスタッフはいわゆる地上波の大きなテレビ局に属しているわけではないので、あまり見返りがなかったのにも関わらず引き受けていただけて、フードコーディネーターの飯島奈美さんも含めて、スタッフが素晴らしいなと思います。この予算ではかなわないような奇跡的なスタッフが集合したんだなと思っています。皆さんがつくりたい、こういうドラマがやりたいという方向が一致していて、これが奇跡に近いんじゃないかなと改めて思いました」と、本作への熱い想いとスタッフへの感謝を口にした。
新シリーズで“バージョンアップ”した点を聞かれると、「年齢がアップしました。7年分歳を取っていますので……(笑)」と笑いを誘い、「その歳をとった分、改めてみなさん愛すべき人だなという思いが強くなったと思います」と続けた。また、ファンの間で長年話題になっているマスターの顔の傷について、その理由が本作で明かされるのか?と問われると、「みなさんに明かしてしまったらつまらなくなるなと原作者の先生は思っているんじゃないかなと思います。なので、僕はあの傷の理由が明かされることはないんじゃないかなと思っております」と答えた。
「ホッとする場所がなくなっていく」 QR注文の時代に小林薫が思うこと
会見では、本作のテーマである「食」にまつわる質問も数多く飛んだ。各話に登場する料理の選び方については、「原作のコミックから監督が選んで、シナリオライターも含めて一緒に打ち合わせを重ねるようなのですが、僕はそこに参加していませんが、そういう過程を経て、各話の食べ物は決まっているみたいです」と説明。
本作のコピー「小腹も心も満たします」に、もうひとつ足すとしたら何を満たしたいかという質問には、「『小腹も心も満たします』に尽きるんだろうなと思います。常連客がよく集まるようなお店である過剰なサービスではなくて、引き算が効いているマスターでして、何かそれ以上満たすものを持っているかと言われるとない気がします」と、マスター像に重ねて答えた。
一番人気の料理を聞かれると、「お金がかかっているものは人気ですが(笑)、今回のシリーズでは皆さんいくらが出たりすると盛り上がってましたね(笑)」と明かし、自身が料理をするかについては、「奥さんと一緒につくったりはしますね。僕自身はお酒を嗜むので、おつまみは自分で作ったりします。上手かと言われると自信はないです(笑)」と笑いを誘った。

そして「小林さんにとって『食』とは?」という問いには、「食に対する考えは変わってきたなと思います。もう高級なものを求めたりというのは無くなりましたね。家族で皆で食卓でつまめるもの、食材とかで手に入りにくいもの、地方の特産が手に入ったら皆でそれを食べたいね、という気持ちが強くなりましたね」と、まるでマスターのような、温かみのある言葉で答えた。
前作からの7年の間には、コロナ禍もあった。『深夜食堂』で描かれるような、誰かと温かい食卓を囲むことが難しかった時期を経て、「食の体験」をどう感じているかを問われると、「コロナ禍には、カウンターのお店は1席ずつあけてくださいというような指示もあって。今回『深夜食堂』が再開するにあたって、コロナ禍で店を再開するというシーンがあって、アクリル板が立っていた景色が懐かしいねという人もいて、『こういう素材だった』とか色々なリアクションがありましたね。人って懐かしんだりするものだなと思っていました」と明かし、「『深夜食堂』のドラマの話だけではないですが、親しい人と外で会えなくなるというのは寂しいことだと思うので、事態が落ち着いて、ドラマが再開できたことはうれしいことだなと思いますね」と語った。
また、7年の間に社会の空気も変わるなか、本作がどのように受け入れられていくと思うかを問われると、「憩いの場というか、ホッとする場所が空間的になくなっていくなと思います。最近はお店に入ると、QRをかざして注文ができて、人を介さなくても注文できますよね。時代が進んでいくと致し方ないのかなと思います」と、時代の変化を受け止める。
一方で、「インバウンドの方々がゴールデン街に観光地として好んで行かれるということです。時代の趨勢と真逆のところにいくのは、人間の心理としてあるのかなと思います」とも。さらに、「『深夜食堂』は色々な人に支えられているという幸せを感じているので、見てくださる皆さんにも感じていただきたいなと思います。地方に行くと『私のお店が深夜食堂のモデルになっていませんか?』と言われることがあるんですが、取材したことはなくて(笑)。そういうお店が増えていっているとうれしいなと思いますね」と語った。
『深夜食堂』新シリーズは、2026年10月20日よりMBSほかにて順次放送。
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