二階堂ふみ&吉田羊がトロント国際映画祭へ!『わたしの知らない子どもたち』に大きな反響
#わたしの知らない子どもたち#二階堂ふみ#吉田羊#小八重葵美#西川美和
⻄川美和監督は子役たちと重ねた長い準備期間を明かす
映画『わたしの知らない子どもたち』が、第51回トロント国際映画祭(TIFF)唯一のコンペティション部門となる「プラットフォーム部門」に正式出品され、日本映画として初めて同部門のオープニング上映作品に選出された。現地時間9月10日のオープニング上映には、⻄川美和監督と小八重葵美が登壇。翌11日の上映には吉田羊、受賞結果発表を目前に控えた19日には二階堂ふみも登壇した。
・吉田羊、二階堂ふみらが登壇!『わたしの知らない子どもたち』トロント国際映画祭上映の様子
・『わたしの知らない子どもたち』西川美和監督×小八重葵美インタビュー

トロント国際映画祭(TIFF)は、カナダで毎年9月に開催される北米最大規模の映画祭。観客の投票によって決まる「観客賞」(ピープルズ・チョイス・アワード)が設けられており、歴代受賞作がその後の米アカデミー賞でも注目を集めてきたことから、賞レースの行方を占う重要な映画祭として、世界の映画業界や主要メディアから注目されている。
本作が出品された「プラットフォーム部門」は、2015年に新設されたTIFF唯一のコンペティション部門で、同部門の作品も「観客賞」の対象となる。さらに、本年度からは、同部門の最高賞「プラットフォーム・アワード」受賞作品に、米アカデミー賞国際長編映画賞の応募資格が付与されることとなり、同部門への注目度は一層高まっている。
現地時間9月10日に行われたオープニング上映には、『永い言い訳』(16年)以来10年ぶりに現地を訪れた西川監督と、本作が初主演となる小八重葵美が登壇。上映後、観客からは「本当に心に響く映画です。過去を描いた作品でありながら、物語全体が今の時代にも非常に通じるものだと思います」「子どもたちの存在は強く心に響きます。表情や感情がカメラを突き抜けてくるような力があります」という声が寄せられた。
さらに、海外メディアからも本作を評価する声が相次いだ。
「『Children Untold』は、重厚でありながらも優しさを湛えた作品で、見る者の心の奥深くに入り込んでくる力を持っている」(NEXT BEST PICTURE/Anna Miller)
「笠松則通による心を揺さぶる撮影と、原摩利彦による豊かな音楽は称賛に値する。アンサンブル・キャスト全員の演技も素晴らしく、とりわけ子どもたちの演技が際立っている」(THE CONTENDING/Frank J. Avella)
「小八重葵美演じる琴子は、最近見た子役の演技の中でも屈指の素晴らしさを見せている」(ASIAN MOVIE PULSE/Panos Kotzathanasis)
「西川は、メランコリーや不条理さ、さらには独特の悲しみに満ちたユーモアの感覚を、より大きく取り入れている」(DMOVIES/victorfraga)
「『Children Untold』は、時にかなり身近に感じられる作品でありながら、紛れもなく力強い映画だ」(GAVIN LOVES MOVIES/Gavin Harriss)
作品のクオリティや主演・小八重の演技などが海外メディアから評価され、トロント国際映画祭での反響にも注目が集まっている。
翌11日の上映後のQ&Aには、西川監督とともに、劇中で親を亡くした子どもたちの保護施設の館長・鷹間乃生を演じた吉田羊がサプライズで登壇。本映画祭を通して主演・小八重の演技や存在感が評価される中、西川監督が「(小八重)葵美ちゃんはオーディションで、透明感のあるキラキラした瞳に引き込まれて、この子しかいないと感じました」と語ると、シリアスからコメディまで幅広い役柄を演じてきた吉田も深くうなずき、監督の言葉に共感を示した。
また、本作でも存在感を放つ役所広司について、西川監督は「前作の『すばらしき世界』(20年)で主演だった役所さんは、本作の制作についても気にかけて度々ご連絡くださいました。切り札として役所さんに漁師の山井甚平という役を演じていただきました」と、前作から続く役所との交流について語った。
撮影で難しかったことを聞かれた西川監督は、「子どもたちは日本の法律で20時までしか撮影できず、さらに夏の真っ暗になる時間が19時半という撮影状況でした。孤児たちは夜中も活動しているような役ではあるので、デイ・フォー・ナイト(日中に撮影した映像を夜間のシーンに見せる撮影・編集方法)での撮影など工夫していました。また、役柄的に子どもたちが精神的に傷つかないようにという部分もケアしながら撮影していました」と、子どもたちを中心に据えた作品ならではの撮影の難しさを明かした。
続いて、本作への出演について聞かれた吉田は「西川監督といえば日本で活動するすべての俳優が一度は監督の作品に出たいと感じるくらい、素晴らしい監督の一人です。そんな監督から今回のお話をいただいて、飛び上がるほど喜び、二つ返事で何としてでもスケジュールをこじ開けて、この作品に参加させていただきました」と、監督へのリスペクトと出演への喜びを語った。
さらに自身の役について、戦後に私財をなげうって戦争孤児の救済に取り組んだ石綿貞代さんを参考にしたことを明かし、「友好的で子どもに対しても愛情がある“優しいみんなのお母さん”というようなイメージで演じていましたが、監督からは『もう少し怖い感じで演じてください』という指示を受け、監督は本作で子どもたちから見たこの時代の大人たちや、大人への恐怖心というものも植え付けた戦争を描きたいのだなと解釈して演じさせていただきました」と、監督が描こうとするテーマを踏まえた役作りについて語った。
最後に吉田は「Please spread this film to all(この映画をみんなに広めてください)」と流ちょうな英語で呼び掛けた。西川監督も「私が本作を作ったときの目標の一つとして、子どもや若い人たちに見てほしいという思いがあります。戦争が暮らしにどのような影響を及ぼすのか、子どもたちを傷つけるのか、ということを世界中の人たちが知る機会になればと思っています」と作品に込めた思いを語り、会場は温かい拍手に包まれた。

19日には西川監督に加え、ドラマ『SHOGUN 将軍』の撮影を終えたばかりの二階堂ふみも登壇。上映後、大きな拍手で迎えられた西川監督は、「とても感激しています。これだけ大きなスクリーンで沢山の現地の方に見ていただけて、反応がとても気になっていましたが、上映後のお客さんの目にも涙が浮かんでいたり、とても温かい感想もいただけました」と現地での手応えを語った。
二階堂も「皆様の反応を見ながら非常にこみ上げてくるものがあり、今も世界中で戦争が起きている中で、戦争孤児たちに思いを寄せる時間になっていたのではと思います」と、観客の反応を受けた思いを明かした。
琴子の元教師であり、戦後の混乱の中で希望を失いながら生きる曽根を演じた二階堂は、「私の祖母が沖縄戦を経験していたということもあり、第二次世界大戦、太平洋戦争で起こったことについては非常に多くのことを学ばせていただく機会がありました。その中でも戦後の女性がどのように生きていたか、ということにあまり触れられていないケースも多かったので、資料や当時を知る方たちの証言などを元に演じさせていただきました」と、役作りについて明かした。
現地の観客からの質問タイムも設けられ、キャスティングのプロセスについて聞かれた西川監督は、「子どもたちは本当に大変でした。主演の琴子役はピアノを弾かなければならないのですが、みんな最初からショパンやドビュッシーを弾けるわけではないので、撮影の1年以上前からオーディションを始めました。主演の小八重葵美ちゃんは内側にパッションと負けず嫌いな性格を持っていて、みなぎる自信がある子で、彼女のキラキラ光る瞳を見たときに満場一致で決定しました」と振り返った。
さらに「現在の日本の子どもたちは過去の戦争について学んだり、当時の方の証言を直接聞いたりする経験も少なくなっていて、まずは若いスタッフと一緒に優しい勉強から始めました。演じる子どもたちがどのような境遇なのか、親や家を失くすということはどのような気持ちなのかということを、週末ごとに集まりながら時間をかけて蓄積していきました、とても貴重で長い時間でした」と、戦争を知らない子どもたちと丁寧に学びの時間を重ねながら制作した背景を語った。
一方、長い時間をかけた子どもたちのキャスティングとは異なり、大人のキャスティングについては「安心して任せられる俳優がいいなと思い、二階堂ふみさんに決めました」と、二階堂への信頼を明かした。
続いて、撮影を通じた小八重をはじめとする5人の子役たちの変化について、西川監督は「主人公の琴子は都市の爆撃を避けるために地方に疎開をしますが、そもそも彼らは“当時子どもたちが疎開をしていた”ということについて、知らない状態から始まりました。幼い子どもが戦争の過去や歴史に向き合うことは、精神的なショックがある可能性がありますし、楽しい時間とは言えなかったと思います。それでも劇中で琴子を含めて仲間となる5人の子役たちは、一緒に長い時間をかけながら少しずつ学習し、当時の子どもたちの境遇を想像したりする中で、戦争というものは今後起きてほしくないし、自分が演じたような子どもたちが世界で増えてほしくない、という感想を持ってくれていたと思います」と語った。
二階堂も「撮影中で子どもたちと直接会う機会は多くはありませんでしたが、撮影前のリハーサルでお会いした時から、撮影を重ねるごとに皆の顔つきや表情が変わっていきました。演じるということで当時の子どもたちの経験を追体験して学んでいるようにも感じました」と、子役たちの変化について振り返った。
また、撮影期間と子どもたちへの精神的なサポートについて聞かれると、西川監督は「撮影自体は3ヵ月強ほど。大人のキャストと違い、子どもたちは予期せぬこともあると懸念していたので、日本の映画撮影にしてはかなりゆったりとしたスケジュールを組んでいました」と説明。さらに、「インティマシーコーディネーターからもアドバイスをもらい、週に1回ほど定期的にカウンセリングを受けながら撮影を進めていきました」と、戦争をテーマに扱う作品だからこそ、子どもたちへのケアも慎重に行っていたことを明かした。
続けて、「子どもたちと映画を作るということはとてもチャレンジングでした。とても柔らかくて純粋な心が壊れてしまわないようにケアをしていかなければいけない。そして、そういう配慮が日本はわりと遅れていると思います。私もそういったことにも気づけたとても良い機会だったと思います。一方で、彼らはとても仲良くなって、チームとして毎日撮影を乗り切っていました。そういう意味で現場は楽しく、遊び場に来るような雰囲気でやってくれていました」と、撮影現場での子どもたちの様子についても語った。
最後に西川監督は、「この映画を作るにはいろんなハードルがありました。重たいテーマですし、子どもたちが乗り切れるだろうかと心配しながら作っていましたが、トロントの皆さんが温かく見てくださったということを、キャストやスタッフ全てのメンバーに報告できるのを楽しみにしています」と語り、会場を埋めた現地の観客から惜しみない拍手と歓声が送られる中、トロントでの公式上映を締めくくった。
『わたしの知らない子どもたち』は2026年10月16日より全国公開。
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