【美容×ビジネス】来場者1万人・満足度95.3%『Tokyo Beauty Week』仕掛け人が明かす、”ビューティーの東京”を10年かけて根付かせる展望
#Tokyo Beauty Week#アイスタイル#アットコスメ#ビジネス#インタビュー
“デジタル勝者”アイスタイルが、あえて”リアル”に懸ける理由
新しいビューティー体験を提供するというテーマを掲げ、2026年11月に開催されるTokyo Beauty Week。昨年、初めて開催され、美容ブランドをはじめとする約100のパートナーとの共創により、多くの生活者に新しい自分、そして新しいビューティーと出会う特別な体験を提供。メインの体験型イベント「Tokyo Beauty Studio」への来場者が1万人を超え、来場者満足度95.3%を記録するなど大好評だった。
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2025年11月に開催されたときのTokyo Beauty Weekの様子
主催は、美容プラットフォーム日本最大級のビューティー総合情報サイト、アットコスメを運営するアイスタイル。10年後も見据えているというこのイベントについて、Tokyo Beauty Weekの総合プロデューサーであり、株式会社アイスタイルの執行役員 CVCO 兼ビジョンクリエイティブ室 室長マーケティング室でChief Creative Officer 執行役員を務める大木秀晃氏に話を聞いた。
・[動画]【Tokyo Beauty Week】なぜ、デジタル強者がリアルイベントに挑むのか?
——多くの企業がDXを重視するようになってきている中で、デジタル領域に強みを持つ「デジタル勝者」とも言うべきアイスタイルが逆に「リアルイベント」に乗り出そうと思ったのは何故でしょうか?
大木:旗艦店となる期間限定店舗の@cosme TOKYOコスメ東京(原宿、2020年オープン)を見ていただくと分かるのですが、すごい熱気に包まれています。
情報に最短でたどり着けることがデジタルの強みである一方で、リアルの場合は、寄り道や遠回りの中で“偶然の出会い”“思いがけない発見”があります。そうした体験をデジタルで設計する試みもありますが、やはりそれが起こりやすいのはリアルな場所です。
もう1つ、美容や、Tokyo Beauty Weekで拡大しようとしているウェルネス健康といったテーマは、そもそもフィジカルな話なので、リアルと切り離せません。デジタルでは実現できない最大の部分がフィジカルなので、私たちにとっては必然的な流れだったと思っています。
——昨年の第一回目の開催は、出展者、参加者ともに満足度が高かったそうですが、どのあたりが評価されたと分析されていますか。

熱気溢れるTokyo Beauty Week(2025年11月)
大木:1つは、Tokyo Beauty Weekは「買うこと」を目的にしていないので、基本的に売り場はTokyo Beauty Weekのベニュー(会場)のひとつである@cosme TOKYOや店舗単位でパートナーになってくださっているブランドさんのお店各店舗のベニュー(会場)以外にはないんですね。新しい出会いを店舗以外の場所で体験できる機会は、生活者の目線からすると以外と少なかったですし、それが一堂に会するという機会もあまり作られていなかったのだと思います。
参加者の皆さんからは、ある意味フラットな関係の中で純粋に質問ができる、ブランドさんも売ることを目的としていないので「これはどういう良さがあるのか」「どんな人がつくっているのか」を、お互いフラットに伝えることができる、というお声をいただきました。
もう1つ、これはTokyo Beauty Weekを企画した根本でもあるのですが、美容業界が1つにまとまるタイミングは、意外と業界としてあまりないんですね。そこで、みんなで意識を1つの場に合わせるお祭りのようなタイミングをつくろうという趣旨に、多くのブランドさん、メーカーさんが共感・賛同して参加してくださいました。それによってブランドとの出会いの機会を生活者に提供できたことが、全体として受け入れていただけた要因かなと思っています。
——改善点もありましたか?
大木:準備期間も限られるなど初年度ならではのハードルもある中で、実質半年ほどで実現しなければいけない状況でした。基本的には街を回遊しながら自分にとっての「美」を見つけてもらうことをテーマにしているのですが、会場や参加できる場所は去年の時点ではまだ限られていました。それでも10か所以上の会場にご参加いただき、初年度としてはなんとか形をつくれた部分もありますが、2年目、3年目に向けては、街をもっと回遊できるようにしていく、といったところをアップデートして高めていきたいですね。
歩留まり80%超え! そして生まれた大胆キャッチコピー
——予想しなかった発見などもありましたか?
大木:運営面で言うと、こうしたイベントの歩留まり――無料で体験できる予約制のイベントは、無料だと「行かなくてもいいか」となりがちで、歩留まり率を低く見積もっていたのですが、実際には予想を大きく上回る参加比率になり、80%以上の方が予約通りに来てくださいました。初日や2日目に来場された方が会場の様子をシェアしてくださったことで、「予約しておいてよかった」「絶対行こう」という流れが生まれ、歩留まりが上がっていったのだと思います。その辺りが運営面としてはまず驚きでした。

Tokyo Beauty Week(2025年11月)
今回は「ファッションのパリ、ビューティーの東京」という、ある意味大胆なコンセプトを掲げ、10年かけてこの「ビューティーの東京」というカルチャーをつくっていこうと呼びかけさせていただいています。メーカーさん、ブランドさんから「そういうことがやりたかった」「よくぞ言ってくれた」というありがたい言葉を数多くいただきました。そうした言葉にすごく励まされ、それもいい意味での驚きでした。
——今、「ファッションのパリ、ビューティーの東京」というキャッチコピーが出てきましたが、言われてみればまさにその通りだと感じました。なぜこのキャッチコピーにたどり着いたのか、込めた思いを伺えますか。
大木:明確な定義があるわけではないのですが、ファッションの都といえばパリ、というイメージはみんなの中にあると思います。では「ビューティーの都」はどこなんだろうと考えると、「ここ!」という共有イメージはそんなに明確にはないのではないか。ファッションが年に1、2回、パリコレのような形でまとまり盛り上がる機会があるように、ビューティーにもそういうものがあっていいのではないか、と考えました。自分たちがベースにしている街だということを差し引いても、客観的に見て東京のポテンシャルは大きいと思ったのが理由です。
僕は今40代ですが、東京では「ギャル」や「ヤマンバ」など、各年代でビューティーカルチャーを表す様々な用語がありました。1人の中でも10代の頃の美意識と20代、30代、40代とでは変遷があり、スタイルを変えていく。アットコスメが掲げる「プチプラからラグジュアリーまで」のように、価格帯やブランドを個人単位でミックスしたり編集したりすることは、今に始まったことというよりもともとベースとしてあったのではないかと思います。

街灯に飾られた旗がTokyo Beauty Weekの開幕を知らせる(2025年11月)
そう考えると、世界的にはヨーロッパなど昔からのブランドもありますし、最近ではお隣の韓国でもK-BeautyKビューティーが盛り上がっています。そうした中で、東京という場所でそれらがミックスされ、編集されていくというのは、この街に期待されていることなのではないか、と思い至りました。
——「10年かけて」というワードが出ましたが、10年後にこんな感じになっているといいな、という将来像はありますか。
大木:まず単純に、最初に掲げたビジョンとして、「ビューティー」と言われたときに想起される街として、東京が思い浮かぶ、というのを達成したいですね。
具体的には、Tokyo Beauty Weekはアイスタイルが単独で仕掛けるイベントではなく、みんなでつくっていくカルチャーのためのプラットフォームにしていきたいと思っています。10年後にはいろいろな人のものになり、多くの人がこのビューティーカルチャーを広げることに参加している状態にしたいと思います。
今回、エンタメ系の媒体に取材をいただけたのも嬉しくて、ビューティー業界の外の方々にもっと入ってきてほしいんです。エンタメやファッションのように(ビューティーと)相性が良い業界でも、実際にどう関わり、盛り上げていけるかということを考える機会は意外とありません。Tokyo Beauty Weekという場を活かして、異なる業界が出会ってコラボレーションしたり切磋琢磨したりする状態が、10年後の1つの理想だと思っています。
——Tokyo Beauty Weekの企画を見たときから、東京ガールズコレクションを念頭に置かれているのではと感じていました。今や若年層のファッション業界になくてはならない存在になった東京ガールズコレクションのように、ビューティー版の東京ガールズコレクションを目指していらっしゃるのでしょうか?
大木:そういう思いもあります。僕自身、東京ガールズコレクションには何度も足を運んでいますし、成長してきたプロセスも勉強させてもらっているので、非常に影響を受けたイベントです。あとは、VogueさんがやられていたFASHION’S NIGHT OUTですね。もともとニューヨークで始まったもので、東京でも表参道・青山エリアで開催されていますが、あれも当時体験させてもらって、すごくいい取り組みだと思っていました。そうしたイベントのつくり方や生い立ち、いわばミックスカルチャー的なところの良さは、いろいろ参考にさせていただいています。
——少し話が変わりますが、御社といえばアットコスメのイメージが強いです。アットコスメとの連動、データ活用といった側面はあるのでしょうか。
大木:イエスとノー、両方あります。アットコスメという強いブランドがある中で新しいことにトライすると、その強さが良く働く部分と足を引っ張る部分の両方が出てくると分析しています。仮に今回の取り組みが「@cosmeアットコスメ Beauty Week」という名前だったら、印象はだいぶ変わったと思います。馴染みがあることでスピード感や巻き込む力は当然ありますが、一方で新しいことをつくる際の身軽さが弱くなると感じ、あえてアットコスメという名前を前面に持ってきませんでした。
1番強い思いは、先ほど申し上げた「皆でつくっていきたい」ということ。アットコスメもプラットフォームですが、異業種や行政も巻き込んだもっと広いプラットフォームにしたいので、Tokyo Beauty Weekではアットコスメも1メディアとして参画する位置づけにし、より多くの方が参加できるプラットフォームを目指しています。
データ連携については主語を分けていて、アットコスメがTokyo Beauty Weekを活かすことも、逆にTokyo Beauty Weekがアットコスメのデータを活かすことも考えられますが、それぞれあくまで独立したプラットフォームとして人格を分けて取り組んでいけたらと思っています。
K-Beauty全盛時代に、“J-Beauty”の魅力をどう伝えるべきか
——現在、ブランドパートナーを募集中とのことですが、パートナーの選定基準はどのあたりに置いていらっしゃるのでしょうか。
大木:繰り返しになりますが、私たちはTokyo Beauty Weekをパートナーの皆さんと一緒につくり、育てていきたいと思っています。ブランドさんはもちろん、会場となるベニューパートナー、クリエイターパートナー、さらに来場してくださる方々も、ある意味賛同していただいている仲間です。まずはこの思いに共感・賛同いただけることが大事だと思っていますので、こちらから厳しく選定するというより、熱量の高い方々にどんどん出会っていきたいというのが純粋な思いです。
また、こういうイベントのつくり方はどうしても「型」をつくっていく話なので、どんどん固くなってしまう傾向がつきまといます。型がないとみんなが乗りづらい一方、硬くなりすぎるとつまらなくなる。その矛盾を想定した上で、「もっとこうやりたい」「こんなことできませんか」といった声をなるべく許容し、応えていけるバランスを取りたいと思っています。
——パートナー企業側のメリットは、新しいことにチャレンジできる点が大きいのでしょうか。
大木:各メーカーさん、ブランドさんによって、今何をやりたいか、あるいは何が課題かはそれぞれ違うと思います。今回のTokyo Beauty Weekは開催期間が限られていて、場所やエリアもある程度固まっているので、だからこそできることや、1社だけ、1ブランドだけではできないことがたくさんあると思います。そうした、仲間と一緒だからこそ実現できることがベースにあるのかなと思います。
——ブランドパートナーだけでなく、参加するインフルエンサーの方々にも、大木さんたちから働きかけているのでしょうか。
大木:去年は「Tokyo Beauty Studio東京ビューティースタジオ」という名前をメインの会場につけ、診断を受けながらいろいろなブランドと出会ってもらう体験をつくりました。「自分にとってのWhat’s Youra Beauty?」というキークエスチョンで、自分の新しい側面を見つけてもらい、最後にメイクアップと、写真を撮影してもらえるフォトブースを用意していました。当日当時はイガリシノブさんら著名メイクアップアーティストにも接客人に体験設計していただき、そうした方と接したときの皆さんの顔の輝きが印象的でした。写真撮影も、日本のイベントでは恥ずかしがる方が多い印象がありましたが、かなりの参加率で、こうしたビューティーを一緒につくってくれる方との接点は、参加者にとってもすごく価値があるのだと分かりました。
今年に関しては、そういったビューティークリエイターの方々がハブとなるような、オフ会のようなイベントもいくつか実現できればと思っています。
——かつて日本の化粧品は海外でも大人気でしたが、最近は韓国コスメなどに押されている感じもあります。その時代の変化を、大木さんはどう感じていますか?
大木:いわゆるJ-BeautyJビューティーということだと思うのですが、成分や技術力の高さというのが、は、生活者の皆さんや世界から見た日本のビューティーの強みの一つだと思っています。そうした魅力を、より分かりやすく世界に伝えていくことも大切だと考えています。生活者の皆さんや世界から見た今の評価なのかなと思います。そういった部分をもっと伝えやすく、伝わっていくようにする、という良いところを伸ばしていくのも1つだと思います。
あとは、日本にはご当地コスメがたくさんあると思うんです。その地域の素材や特性を生かしたようなものが、もっと日本の中でも知られていいと思いますし、「日本にはこんなに多様なコスメがあるのか」ということが世界に発見されたら面白いだろうな、と個人的には思っています。東京とは言っていますが、日本各地全体の魅力、面白さも紹介していける場になるといいなと思っています。
「とはいえ今はK-BeautyKビューティーの方が勢いがありますよね」と言われることもありますが、だからこそKビューティーK-Beautyにも参加してほしいんです。業界内の集まりも実施しようと思っていて、海外の方にも来ていただき情報交換や切磋琢磨ができる場を、リアルな機会だからこそつくれると思っています。
美に性別も年齢も関係ない。0歳児からシニアまでの新たな価値観
——最近の若者は、男性も美容意識がとても高いです。「Tokyo Beauty Week メンズ」のようなものができたりもするのかな、なんて妄想が広がるのですが……。
大木:そこは既に逆にもう標準になってきているかなと思っていて、もちろん商品やニーズによって違いはありますが、むしろ「男性向け」「女性向け」と明確に分けるというよりも、一人ひとりの価値観やライフスタイルに合わせて選ぶことが、より自然になってきたように分けて語る方が違和感があるように感じます。また、オールジェンダー、ジェンダーレスというのがもうベースとしてあります。ジェンダーだけでなく年齢もそうで、例えば0歳児の赤ちゃんにも保湿が必要ですし、年齢を重ねても、それぞれのライフステージに応じてビューティーとの関わりがあります。も保湿クリームを塗りますし、ご年配の方もそれぞれの年代に合わせて色々なものを使われています。
フィジカルな部分と、心や気持ちの部分はある程度連動していますよね。髪を少し切ったらスッキリする、気持ちがリフレッシュされる、そう考えると、「ビューティー」というのは一見狭く感じるかもしれませんが、私たちが目指しているのは、「What’s youra Beauty?」という言葉のように、美意識といった精神面も含めた、自分らしさや気持ち良さ、居心地の良さ、健やかさといったことです。
女性の方だけでなく、自分にとっての自分らしさ、もはやビューティーや美というよりも、自分が居心地よく健やかにいるとはどういうことなんだろうと考える機会、というくらい広く捉えています。
——最後の質問です。楽しそうでクリエイティブというエモーショナルな部分は感じるのですが、企業として行う以上、ビジネスとしての成果目標や指標はどのあたりに置いていらっしゃるのでしょうか。
大木:「10年続けていく」というのは意思でもありますが、ビジネス面でもサステナブルに自走していける仕組みをつくらないと、結局続かなくなってしまいます。構造的な無理があるものは、おそらくカルチャーにもなっていかない。カルチャーになるということは、人やアイディア、共感など、さまざまなものが集まりながら、さらに大きく広がっていくということです。雪だるま式にお金も含めていろいろなものが集まり、大きくなっていくということです。まずはアイスタイルが投資して火種をつくっていますが、皆さんのビジネス面を含めたサポートができる仕組みを並行してつくっていかなければいけないと思っています。
少し話が逸(そ)れますが、お金の教育は最近日本の学校などでも取り入れられるようになりました。僕らの世代は資産運用などを学校で習わず、むしろタブー視されていました。ビューティーについて考えることは自分を知ることでもあり、早い段階からその知識や機会を持つことのその大切さは、お金の教育に少し似ていると思っています。
お金の知識と同じように、ティーンの教育の中で自分らしさを知る機会をもっと持ってほしい。早い段階で「自分にはこれが似合う」「これは似合わない」ということが分かれば、自分自身を肯定したり、相手の価値観を尊重したりすることにもつながる自己肯定感も高まり相手へのリスペクトも育まれると思うんです。「大学デビュー」や「社会人デビュー」という言葉がなくなるといいなと思っていて、もちろん校則などのルールを守った上でですが、そうした教育や知る機会がティーンの中にもっとあれば、もっと生きやすく、楽しくなるんじゃないかと思います。
話が広がりましたが、それくらい社会の仕組みとして取り組んでもいいテーマだと思っています。民間だけの取り組みに終わらせず、行政など世の中の仕組みとしてこのテーマを捉えてもらえるよう働きかけていきたいですし、そうした取り組みが広がればそうなれば市場も大きくなり、民間やメーカーさんにも機会が広がっていくはずです。大義と仕組み、その結果としてサステナブルに成長していける状態をつくる、この三位一体でやっていかなければいけないと思っています。
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