『急に具合が悪くなる』興収2億円突破 濱口竜介監督が“触れる”演出の狙いを明かす

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『急に具合が悪くなる』
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『急に具合が悪くなる』
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ロケ地・京都凱旋Q&Aで演技論や制作秘話をたっぷり披露

映画『急に具合が悪くなる』が、6月19日の公開から22日間で興行収入2億円を突破。このヒットを記念し、ロケ地・京都で濱口竜介監督による凱旋Q&Aイベントが開催。MOVIX京都、T・ジョイ京都の2劇場で上映後に登壇した濱口監督は、観客から寄せられた熱量あふれる質問に応じ、作品への思いを語った。

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Q&Aでは多くの観客が挙手し、質問者のほとんどが複数回鑑賞している熱心なファンだった。それぞれが作品への思いを丁寧に語りながら、独自の視点で監督に質問を投げかける場面が続いた。「おもしろかった」という感想には、濱口監督も「本当に嬉しいです」と笑顔でうなずいた。

また、ロケ地・京都ならではの撮影エピソードを問われると、たまたま日本へ新婚旅行に訪れていたフランス人カップルに、ヴィルジニー・エフィラが声をかけられた出来事や、日本には台風があるため撮影予備日が必要だと現地スタッフを説得しきれず、撮影延長によってスタッフの一部が一度帰国せざるを得なかったことなど、日仏合作ならではの舞台裏を振り返った。さらに、台風一過の山頂シーンでは霧が立ち込め、「あの景色を撮ることができてよかった」と当時を回顧した。

『急に具合が悪くなる』

「難解なのに心地よい。さまざまな要素が詰め込まれた中で、監督が大事にしているものは?」との質問に対し、濱口監督は、「すべてに共通しているのは、演じている人の存在。この人たちが、言葉を口にするにせよ、触るにせよ、おそらく“演じる人間(演者本人)”としても、“キャラクター(演じている登場人物)”としても何かを感じる。それがカメラにも映ると素朴に信じているんです」と語った。

続けて、「な俳優同士を撮ることができれば、その間に生じていることも記録することができる、それが観客にも届くんじゃないか、と思っています。その『何かを感じた』結果をずっと見ているのがこの映画なのではないでしょうか」と説明した。

さらに、「俳優たちが(映画内で)感じた、『明らかではないけど、内面で起きていること』は、観客とどこかつながる。じっと見ていると、スクリーンを超えて観客にも届くことが何かあるんじゃないかと思うんです」と持論を展開。

「ヴィルジニー・エフィラさんと岡本多緒さんだけではなく、長塚京三さんや黒崎煌代さん、フランスの俳優たちの身体に起きていることが、(観客の皆さんにも)届くと信じてに作っていました」と、作品に込めた思いを明かした。

言葉による表現と身体的な表現のバランスや関係性については、「(この映画は)基本的には非常に知的な女性二人の会話が展開されて、言葉を通じてお互いを発見し合っていきます。ただ、言葉では解決できない領域が存在する」と語った。

さらに「状況を整理したり、人に指示を与えたり、感情を伝えたりするような場面で、言葉はある程度有効だと思います。でも、(物語の)後半になってくると、言葉の量がガクッと少なくなり、その分何か別の方法……おそらく言葉を自由に使えないような人たちも含めて、コミュニケーションする方法があるんじゃないか、ということを、この映画の中では探っています」と説明。

また、「“触れる”ことは直接的ですよね。ただ、映画を見ているだけでは、“触れ合う”ことは当人同士にとってはものすごく強烈な体験なんですけど、観客には十分には届かない」と指摘し、「では、お互いに“触れ合う”ことの強烈な感覚をどうやったら伝わるか、を考えた時に、(ダンサー・振付家の)砂連尾理さんの演目を見たときに感じたことを思い出したんです。砂連尾さんに『あの表現をやらせてもらえませんか』と相談して、本作にはワークショップ指導・演技指導という形で入っていただきました」と振り返った。

その上で、「そうすることで“触る”ことも、私自身にも起きたように、強烈に観客にまで届けられるんじゃないかと思っていました」と語った。

『急に具合が悪くなる』

介護施設のスタッフや入居者を含め、物語の後半に進むにつれて、登場人物同士の視線が交わる場面から幸福感が高まっていくように感じる——。そんな印象について質問されると、濱口監督は、「“ちゃんと聞いてほしい”という話はよくしていました」と切り出した。

「実際に介護施設を借りて撮影していたんですけれども、その介護施設のスタッフや、実際に入居している方にエキストラとして参加していただいています。そういう方たちに、カメラが向いてないことも多々ありますが、それでもちゃんと見ていてほしい、とお伝えしました。例えば(長塚京三さん演じる吾朗の一人舞台の後の)Q&Aの場面も、観客がステージをちゃんと見ていてくれれば、ステージ上で演技をしている人たちの力や緊張感になります」と説明した。

さらに、「逆に、聞いている側(観客席)を撮るときは、当然ステージ側は映らないけれども、そういう時もステージ側(の演者たち)にもちゃんと演じてほしい。そうしないと、観客側のリアクションを引き出すことができない。視線の先に何かが行われていれば、その感情を演じなくてもいい、感じていることをただそのままにしていればいい、という状況が作られているとは思います。それを最終的には編集で編み上げていきました」と演出意図を明かした。

原作との出会いから映画化までの道のりについては、「松田広子プロデューサーから原作を受け取ったのが2020年末、制作期間だけでも5年ぐらいはかかっているのですが、もっとも支えになっていたのは、原作そのものです。原作を最初に読んだ時に、心が溢れる、こんな本、こんな関係性が存在するのか、と思い、それをなんとか映画に移し替えようとした、ということがまず第一です」と振り返った。

続けて、「そして松田プロデューサーが、時間をかけることを許してくれたことはすごく大きいと思います。一緒に、原作者の磯野さんや、宮野さんのご遺族に取材をしたり、ある程度方向性が決まってからは、日本でもフランスでも介護施設を取材をしたり、どこにたどり着くかわからないままやっていました」と制作過程を回顧。

最後に、「特に商業映画の企画は大体着地点があってやっていることが多いと思うんですけれども、プレッシャーをかけずにやっていただきました。松田さんに感謝しています」と、プロデューサーへの感謝を語った。

『急に具合が悪くなる』は現在公開中。