風間太樹監督「誰かの葛藤に目を向ける時間に」
映画『モブ子の恋』の公開直前イベントが、5月25日に新宿ピカデリーにて開始された。イベントには、W主演を務める桜田ひよりと木戸大聖をはじめ、早瀬憩、唐田えりか、草川拓弥、荒木飛羽、そして風間太樹監督が登壇。撮影の舞台裏や作品への熱い想いを語り合った。
本作が初共演となる桜田ひよりと木戸大聖。撮影を経て気づいたお互いの「意外な一面」を聞かれると、“モブ子”こと田中信子を演じた桜田は、「会った時から印象は変わらずに、終始温かくて穏やかな優しいお兄さんのような存在でした。ハードなシーンの撮影や、信子を掴め切れずに何回か繰り返すところがあったのですが、その時も現場から離れず近くで見守っていてくださったので、包容力がある方だなと思いました。でも面白い一面も持っていて、急に私が一発芸を振ってもやってくださり、現場を楽しませてくれるんです。今日も披露したいことがあるみたいで…」と木戸へ無茶振り。

すると木戸は「違うんです! 違うんです!」と焦りながらも、「宣伝期間中、『モブ子の恋』のポーズを聞かれることがあるのですが、ポーズがないということが発覚して、今日考えました。せーの、“モ”!!」と、カタカナの“モ”を手で表現したオリジナルポーズを披露した。
さらに木戸は、「ひよりちゃんが『もっと手はこう!! “モ”に見えない!』と指導してくれるんです」と、ほほ笑ましいやり取りを明かし、会場を笑いに包んだ。
桜田も「試行錯誤した中での、完璧な“モ”が登場しました。数時間前に考えたとは思えないクオリティの高さでお送りしました!」と笑顔を見せ、まさかの“モブ子ポーズ”誕生に会場から温かな拍手が送られた。
一方、信子が働く「スーパートクマル」の同僚で、ピュアで思いやりに満ちた青年・入江博基を演じた木戸は、桜田の意外な一面について、「元々一人でいることが多いと聞いていたのですが、撮影中の様子を見て、『本当?』と聞きたくなるくらい、どのキャストさんやスタッフさんとも話されている印象ですし、撮影中も先ほどみたいに急に一発芸を振ってきたり(笑)、そういう一面をお持ちでした。とても話しやすさがあって、入江をやるにあたって助けられました。時間潰しでゲームをやっていて、ゲームに勝った景品として何が良いか聞くと『じゃあお手紙を』と言ってくださって、僕が手紙を書いてくると、ひよりちゃんもお手紙を僕に書いてくださっていたんです。お手紙も素敵な内容で、すごく優しさを持っている方だなと思いました」とコメント。作品同様、優しさにあふれた現場エピソードを披露した。
また、バイト仲間や友人、そして監督として、信子と入江の恋模様を間近で見守ってきた「スーパートクマル」のキャスト陣と風間太樹監督に、“イチオシの胸キュンシーン”について質問が飛ぶと、信子のバイト先の後輩で、天真爛漫な安部陽菜を演じた早瀬憩は、「まだ上映前なので詳細は言えないのですが、身体が触れ合うと言いますか…ほにゃららで胸キュンなシーンがたくさんあります(笑)。まだ言葉にできる状態じゃないので、ぜひ見ていただきたいです」とネタバレを避けつつアピール。

信子のバイト先の先輩で、時に厳しくも愛ある指導をする篠崎幸を演じた唐田えりかは、「落とし物のシーンがキュンです! 楽しみにしていただけると嬉しいです」とコメント。
さらに、信子のバイト仲間で入江の友人でもある金子優也役の草川拓弥は、「入江くんのメガネ姿ですね。すごいかっこいいなと思いながら見てました。撮影の合間にメガネを外す瞬間もあったので、メガネありも無しも1番近くで拝めたので、ありがとうございました」と“入江推し”全開のコメントで会場を盛り上げた。
それを受けた木戸は、「ありがとうございます。衣装合わせで特徴的なメガネを最初に掛けたらそれがピッタリで、そう言ってもらえて嬉しいです」と照れ笑い。
さらに、信子のバイト先の後輩で、信子が少し手を焼く大野陽を演じた荒木飛羽は、「現場に行ったら桜田さんと木戸さんが折り紙を折っていらして、なんて温かい現場なんだと感じて、そこにめっちゃキュンとしました」と、撮影現場の和やかな雰囲気を明かした。

すると桜田は、「童心に戻って折り紙をやろうと思って、私はスタンダードな鶴とかを折っていたのですが、木戸さんはクオリティが高い架空の恐竜を作ってました」と、撮影の合間のほっこりエピソードを披露し、会場を和ませていた。
胸キュンシーンの話題を受け、本作で特に印象的なシーンについて聞かれた風間監督は、「信子は人との距離感を躊躇したり、自分の心許ない感情を持っている人物で、そして周りの皆さんもどこか不器用で、自分と他者の距離感を測っているようなキャラクターが多いんです。その中で、信子と入江くんが重い荷物を運ぶシーンがありまして、2人の足取りが重なり合っていくことで、それまで見えなかった2人の気持ちが見えてくるシーンがあります。そういったささやかな一挙手一投足から気持ちが届いたら良いな、と思いながら撮った作品でもあるので、そこに注目していただけたら嬉しいです」とコメント。何気ない仕草や距離感の変化によって心の動きを映し出す、風間監督ならではの繊細な演出へのこだわりを語った。
続いて話題は、風間監督がクランクイン前にキャスト全員へ渡したという“プロフ帳”へ。本編では描かれないキャラクターのバックボーンや考え方が細かく記された資料だという。
桜田は、「監督とご一緒するのは3度目で、監督が作り出す空気感や役に対しての向き合い方にすごく自分が助けられていましたし、いただいたテキストも、信子の過去や考え方が細かく書かれていて、自分自身も役作りの上でたくさん助けられました」と振り返り、風間監督への厚い信頼をにじませた。
木戸も、「本編では描かれていない入江のバックボーンが書かれていて、僕自身の役作りに助けられました。監督が、この作品を見てくださる方にどんな風に届けたいかというメッセージ的な部分の中に、『沈黙が悪くない』という部分が書かれていました。喋っていない時に流れている居心地の良さがこの作品の中でたくさん出てきます。実際に現場でも、多くを喋らずとも一緒の空間にいるというだけで居心地が良かったので、スーパートクマルの皆さんといるだけで、自分が入江くんとしてその空間に混ざれている感覚がすごく助けられました」と語り、作品の核にもなっている“沈黙の心地良さ”について言及した。
その言葉を受けた風間監督は、「キャラクターの背景があるかないかで、気持ちの表出のさせ方は変わってくると思うんです。皆さんと共通言語を持ちたいという意味合いもあって、お渡しさせていただきました」と説明。役柄を深く理解した上で演じてもらうための工夫だったことを明かした。
早瀬も、「私自身、安部ちゃんのような天真爛漫で明るい役を演じてきたことがなかったので、役作りの仕方を探っていた時にプロフ帳をいただいて、その存在で一気に役の輪郭が掴めた感覚がしたんです。お守り代わりに台本の後ろに挟んでいました」と告白。キャラクターに向き合う上で欠かせない存在だったと語った。
唐田は、「本作の世界観と同じように、風間監督の空気感が穏やかで優しい方で、キャストの皆さんも1人ひとり優しい方ばかりで。その優しさが移ったのか、自然と口角が上がって微笑みが出て、ずっと優しい気持ちで現場にいることができました」とコメント。作品の空気感そのままの撮影現場だったことを明かした。

草川も、「プロフ帳は金子くんを演じる上で大きなエネルギーになりました。風間監督の現場での佇まいに、『すごく助けていただいている』と思う瞬間がたくさんあったんです。カメラが回っていないところでも常に寄り添ってくださって、コミュニケーションを取ってくださる監督なので、全力で恩返ししたいという気持ちを持ちながら演じることができました。嬉しかったですし、幸せでした」としみじみと語った。
荒木も、「僕は現場に入る前に緊張しがちなタイプなのですが、衣装合わせの時に役の裏側までお話をさせていただいて、なおさら緊張してしまい(笑)。現場に入るまで少し不安だったんです。でも実際に現場へ行ったらすごく明るくて、本当にホッとしました。監督はお芝居には真摯に向き合ってくださいますし、それ以外の時はすごく優しく接してくださって、終始楽しい現場でした」と笑顔で振り返った。
キャスト陣が口をそろえて語ったのは、風間監督が作り上げた穏やかで優しい空気感。まさに作品の世界観そのものが現場にも流れていたことが伝わるトークとなった。
ここで、本作のタイトル『モブ子の恋』にちなみ、「今、自分は完全に背景と同化しているな」「モブ(脇役)っぽい行動をしてしまったな」と感じる瞬間についてトークを展開した。
桜田は、「お仕事の時は活発に見られがちなのですが、プライベートや気の張らない空間で、人数が増えれば増えるほど喋らなくなってしまう習性がありまして。みんなの会話を聞いていることや、その空間の壁になっているのが好きなんです。『壁になりたい』という気持ちで普段生活しています(笑)」と告白。主人公・信子と重なるような一面を明かし、会場の笑いを誘った。
木戸は、「例えば人前で転けそうになったり、ちょっと恥ずかしいことが起こった後の自分の表情がダサいなと思っています。『つまずいちゃいました!』と堂々と言えばいいのに、カッコつけてるんです(笑)。何も起こらなかった風を装ってしまうので、それが自分で『ダサいな』と思って。その瞬間はモブだなと感じます」と、共感を呼ぶエピソードを披露した。
さらに早瀬は、「まさに今かもしれないです。こういう輝かしい場所だったり、舞台挨拶でオーラのある俳優さんたちに並ばせてもらう時に、壁に同化していないか心配になります」と初々しく回答。
唐田は、「たくさん人がいて目線の位置に困ってしまう時、持っているお水の原材料を見つめたり、『私、何かしてますよ』風を装ってしまいます」と可愛らしいエピソードを披露した。
荒木は、「普段プライベートでははしゃいでうるさいタイプなのですが、撮影現場や先輩の前だと静かになってしまうんです。先輩たちが話しているのを『良いな〜』と遠くから見ている時にモブだなと思います」と語り、それぞれの“モブエピソード”に会場は終始和やかな空気に包まれた。

最後に風間監督は、「まずはラブストーリーとして楽しんでいただけたらと思いますが、その内側にある誰かの葛藤の部分にも目を向けて描ききった映画になっています。誰かにとっては目の前で大きな葛藤が起きているかもしれない。そういったものに自分の目を向ける時間にしてもらえたら嬉しいです」と、本作に込めた思いを語った。
木戸は、「『脇役だって、恋をする』というコピーがありますが、人と比べた時に『足りないな』『劣っているな』と思うことは誰しもあると思うんです。でもこの作品は、誰かにとって『あなたは存在しているんだよ』『あなたのことをちゃんと見ているんだよ』というメッセージを感じ取ってもらえる作品だと思います。生きていく中で決して脇役はいなくて、皆さんが主役であり、周りには支えてくれる人がたくさんいるということを、この作品は伝えてくれているんじゃないかなと思います。共感していただける部分もたくさんあると思うので、その目線で見ていただいて、感想を広めていただけたら嬉しいです」と、作品が持つ温かなメッセージを届けた。
そして最後に桜田は、「この作品の現場は穏やかで温かくて、人のぬくもりをすごく感じられる現場でした。登場人物に1人も悪い人が出てこないという不思議な映画になっています。その中でも、1人ひとりが持つ優しさの大きさや形、温かさなど質感が全く違っていて、いろいろな優しさが1つになった素晴らしい作品です。この場にいるメンバーだけではなく、技術スタッフさんなど裏方のチームの皆さんの思いも代表してこの場に立たせていただいているので、その思いをたっぷり受け取っていただきたいですし、皆さんもこの映画の世界に浸っていただけたら嬉しいです」と力強く呼びかけた。
客席からは大きな拍手が送られ、登壇者たちは笑顔で手を振りながら退場。作品同様、優しさと温もりに包まれた空気の中、公開直前イベントは幕を閉じた。
『モブ子の恋』は2026年6月5日より全国公開。
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