23年の興収1位は『スラダン』。今年もアニメ映画が強かった

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【TIS】本ポスター
『THE FIRST SLAM DUNK』
【興収レポート】2023年は、相変わらずアニメ映画が強い1年だったと言える。また、テレビドラマの映画化も2作がトップ10入り。洋画では、全米俳優組合のストにより来日プロモーションが中止された作品もあり、影響は少なくなかった。

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アニメ映画の上位3作が興収100億円超え

23年の年間興行収入トップ10のランキングを見ると、ひと際目立つのがアニメ映画だ。1位『THE FIRST SLAM DUNK』、2位『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』、3位『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』、4位『君たちはどう生きるか』とトップ4を占め、3作が100億円超えとなった。
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は『アナと雪の女王2』を上回り洋画アニメ歴代興収2位、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』はこれまでシリーズ最高興収だった『ハロウィンの花 嫁』(22年、97・8億円)を40億円以上上回る記録を達成した。
『スラダン』(THE FIRST SLAM DUNK)は原作者の井上雄彦が脚本・監督を手掛け、『マリオ』はマリオの生みの親であり任天堂の代表取締役フェローの宮本茂氏が製作に名を連ねる。『スラダン』『マリオ』とも原作の世界観を生かした映画化が観客の心をつかんだといえそうだ。
宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』は、前作『風立ちぬ』(13年)から10年ぶりの新作。公開4日間の興収は『千と千尋の神隠し』を上回ったが、最終的には興収87億円。大ヒットと呼べる興行成績だが、これまでの宮崎監督作と比べると物足りなさが残る。『もののけ姫』(97年)以降、興収100億円超えを連発して年間興収ランキング1位を続けてきたが、『君たちはどう生きるか』で初めて年間1位ではなくなった。スタジオジブリは日本テレビの子会社となる。今後、新作映画が作られるのか、気になるところだ。
シリーズ物のアニメ作品では『ドラえもん のび太と空の理想郷』(10位)も好調。『ドラえもん』シリーズは、19年公開『のび太の月面探査記』が50.2億円、20年『のび太の新恐竜』が33.5億円、22年『のび太の宇宙小戦争2021』が26.9億円と、シリーズはコロナ禍で興収を落としてきたが、『のび太と空の理想郷』は43億円で、V字回復を成し遂げた。

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邦画実写で最大のヒット作は5位『キングダム 運命の炎』。人気マンガを実写映画化したシリーズ3作目で、2作目『キングダム2 遥かなる大地へ』(22年、51・6億円)を上回り、1作目『キングダム』(19年、57.3億円)に迫る興収をあげた。シリーズ映画は回を重ねるごとに観客が飽きて興収を落としていく作品が多いなか、安定した人気を誇る。
映画ランキングに入った邦画実写ではテレビドラマの映画化も目立ち、『ミステリと言う勿れ』(7位)、『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』(9位)と2本がランキングに入った。
洋画実写で最大のヒット作は6位『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(54億円)。『ゴースト・プロトコル』(11年、53・8億円)、『ローグ・ネイション』(15年、51.4億円)、『フォールアウト』(18年、47.2億円)とシリーズ過去3作の興収を上回った。
本国アメリカでは年間興収ランキングトップ10圏外なので、日本での『ミッション~』人気を示した。全米俳優組合のストの影響で、予定されていたトム・クルーズの来日が中止された。来日があれば、話題性を喚起してさらに興収を伸ばしたかもしれない。

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ランキング以外のトピックとして注目したいのが、世界3大映画祭で日本人が躍動したこと。ベルリン国際映画祭では『すずめの戸締り』がコンペティション部門に選出。カンヌ国際映画祭では是枝裕和監督『怪物』の脚本家・坂元裕二が脚本賞、ヴィム・ヴェンダース監督『PERFECT DAYS』の役所広司が男優賞を受賞。ヴェネチア国際映画祭では濱口竜介監督『悪は存在しない』が銀獅子賞を受賞した。濱口はベルリン、カンヌに続き、世界3大映画祭全てで受賞したことになる。 (文:相良智弘/フリーライター)
[2023年公開作ランキング]
1位『THE FIRST SLAM DUNK』157億円
2位『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』140億円
3位『名探偵コナン 黒鉄の魚影』138億円
4位『君たちはどう生きるか』87億円
5位『キングダム 運命の炎』56億円
6位『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』54億円
7位『ミステリと言う勿れ』48億円
8位『ゴジラー0.1』46億円
9位『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室』45億円
10位『ドラえもん のび太と空の理想郷』43億円
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』43億円
※『ゴジラー0.1』の興収は12月24日時点
(ムビコレ調べ)

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